なぜバルサはV・ロッキの選手登録を行なったのか?レヴァンドフスキの不振とガビの離脱…頓挫したビジネス
新たな血が、注入されている。
バルセロナは今冬の移籍市場でビトール・ロッキが正式に加入した。この夏、移籍金固定額3100万ユーロ(約46億円)+ボーナス3000万ユーロ(約45億円)で獲得を決めていたブラジル人アタッカーが、期待を背負いスペインに到着している。
■選手登録の問題
ただ、バルセロナは課題を抱えていた。そう、選手登録の問題である。
V・ロッキは昨年12月27日にバルセロナに到着。バルセロナの新年一発目の試合、1月4日のリーガエスパニョーラ第19節ラス・パルマス戦に向けて、コンディション調整を行なっていた。
一方、バルセロナは先日、『リベロ』からの未払いが発覚した。『バルサ・ビジョン』の10%の売却で、『リベロ』から4000万ユーロ(約70億円)を受け取るはずだったバルセロナだが、約束の期限に支払いが済まされず、クラブは該当企業を訴える方向で動いている。
最終的には、ガビの負傷と長期離脱を受け、その穴埋めをする格好でV・ロッキの選手登録を完了させた。だが『リベロ』とのビジネスを含め、再び財政面での課題が露呈したのも事実だ。
■ゴール欠乏症の懸念
バルセロナがV・ロッキを獲得したのには理由がある。
「我々は決定力においてヨーロッパでワーストのチームのひとつだろう」とリーガエスパニョーラ第17節バレンシア戦後に語ったのはシャビ・エルナンデス監督だ。
「我々には、自信が欠けている。しかし、FWの選手たちだけの責任ではない。ラフィーニャ、ジョアン(・フェリックス)、フェラン(・トーレス)、彼らとディフェンダーの選手たちの責任は同じだ」
指揮官の言葉に偽りはなかった。バレンシア戦後の時点で、バルセロナの決定率は11.27%だった。ナポリ(9.96%)に次いで、欧州5大リーグで下から2番目の数字だった。
■不振に喘ぐレヴァンドフスキ
何より、気掛かりなのは、ロベルト・レヴァンドフスキである。
レヴァンドフスキ は今季、公式戦21試合で9得点をマークしている。1試合平均得点数は0.42得点だ。昨季、この時点で、レヴァンドフスキは17得点を挙げていた。ラ・リーガでピチチ(得点王)を獲得したが、今季、その勢いは削がれている。
なお、バイエルン・ミュンヘン時代、レヴァンドフスキのワーストの記録は、移籍一年目の公式戦25得点(2014−15シーズン)だった。そのシーズンを除けば、毎年、公式戦で40得点以上をマークしている。
ただ、シャビ監督が述べていた通り、レヴァンドフスキだけがバルセロナの得点力不足の原因ではない。 ラフィーニャ(3得点)、フェラン・トーレス(6得点)、ジョアン・フェリックス(6得点)といった選手が、レヴァンドフスキの不調をカバーできていないのだ。
つまり、バルセロナとしては、ゴールを奪える選手が必要だった。V・ロッキはアトレティ・パラナエンセで81試合に出場し、28得点11アシストを記録している。ブラジルA代表のキャップ数は1試合だが、18歳という年齢から、将来性を見込んでの補強になった。
■ブラジル人選手の系譜
V・ロッキはバルセロナのブラジル人選手の系譜を継ぐことになる。ロマーリオ(バルセロナ加入当時27歳)、ロナウド(19歳)、リバウド(27歳)、ロナウジーニョ(23歳)、ネイマール(21歳)と多くのブラジル人アタッカーがバルセロナでプレーしてきた。
V・ロッキは、この中で言えば、ロナウドに近いかもしれない。172cm、78Kgで、スピードとパワーに優れる。若くしてバルセロナに移籍し、野心に溢れてもいる。
バルセロナはV・ロッキを焦らずに育てていく考えだ。ただ、現時点で彼のプレースタイルに触れておく必要はあるだろう。
レヴァンドフスキがゴール前で構えているタイプなのに対して、ロッキはモビリティを重視するタイプだ。スペースに走り、ディフェンスラインの背後を積極的に狙う。そういう意味では、リオネル・メッシ、ネイマールと共に「MSN」を形成したルイス・スアレスのようなプレーヤーだと言えるかもしれない。
またV・ロッキは、サイドでもプレー可能だ。右ウィング、左ウィング、CF、どのポジションで起用されても対応できる。レヴァンドフスキに限らず、ジョアン・フェリックス、ラフィーニャ、フェランらを脅かす存在になる可能性がある。かくして、ポジション争いが激化し、チームに活力がもたらされる。
「素晴らしい補強だ。私にはまだ考える時間が足りない。しかし、ロッキのスペースランニング、ハードワーク、犠牲心、得点力というのは我々に多くを与えてくれるだろう」とはシャビ監督の言葉だ。
「だが我々は過大なプレッシャーを彼に与えてはいけない。ラミン(・ヤマル)やロッキのような若い選手に、重圧を課すのは良くない。一歩ずつ、前進するべきだ」
もちろん、V・ロッキが“救世主”になるといった考えを持ってはいけない。
そしてバルセロナの決定力不足というのは、構造的な問題である。補強で解決する、というのは、ひとつのアプローチ方法ではある。だが、バルセロナの決定力不足というのは、もっと根本的な課題に見えるのだ。