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少子高齢化で減るとみられた日本の就業者数が増えていく!?

土居丈朗慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)
「労働力需給の推計」の更新版が公開(写真:イメージマート)

日本の就業者数は、少子高齢化が進むことで、今後減ることが見込まれている。

しかし、この度発表された将来推計によると、経済成長率が高めに維持できれば、日本の就業者数は、2030年にかけてむしろ増加し、2040年は2022年と概ね同水準となるという。

就業者数は、2022年に6724万人だったが、この推計結果では2040年には6734万人となるという。今回公表される前までの将来推計では、最も多いと推計されたシナリオでも2040年の就業者数は6024万人と推計されていた。

2040年の就業者数は、今回の推計では、前回(5年前)の推計より約700万人も多い。今の埼玉県の全人口に匹敵する人数である。

なぜ就業者数の将来推計をするのか

将来推計を発表したのは、独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)である。3月11日に、「2023年度版 労働力需給の推計(速報)」(PDFファイル)として公表した。

そもそも、どうしてこのような推計を今発表する必要があったのか。それは、年金の財政検証を行うためである。

年金の財政検証は、拙稿「【超速報】年金の財政検証、結果はどうなった」(Yahoo!ニュース)で詳述されているが、公的年金の将来の財政状況を確認するために、5年に1度行われる。2024年はその年に当たる。

公的年金は、就業者が年金保険料を払い、高齢者が年金給付を受け取る。だから、公的年金の将来の財政状況を見極めるには、年金保険料を払う就業者が将来何人いるかを見極めなければならない。

だから、年金の財政検証のためには、就業者数の将来推計が必要なのである。

冒頭で紹介した就業者数の将来推計も、2024年の年央にも公表される予定の年金の財政検証に用いるために推計されたものである。もちろん、その将来推計は、年金の財政検証以外にも広く利用されるものとなる。

そして、5年前にも就業者数の将来推計が行われており、同じJILPTが「2018年度 労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計― 」を発表しており、拙稿「【超速報】年金の財政検証、結果はどうなった」(Yahoo!ニュース)で詳述したように、2019年8月に公表された年金の財政検証に用いられていた。

今後の日本の就業者数はどうなるか

3月11日に公表された「2023年度版 労働力需給の推計(速報)」(PDFファイル)では、2040年までの就業者数を、3つのシナリオに基づいて推計している。

その中で、内閣府「中長期の経済財政に関する試算」(2024年1月)での成長実現ケース(2030年度前後の名目成長率が3%強)のように経済成長して、労働参加が積極的に進むことを想定した「成長実現・労働参加進展シナリオ」では、就業者数は、2022年に6724万人だったが、2025年に6810万人、2030年に6858万人と増え続けるという。その後、2035年に6827万人、2040年に6734万人と、減少に転じるが、それでも2040年の就業者数は、2022年よりも多いと推計されている。

5年前の「労働力需給の推計」である「2018年度 労働力需給の推計―労働力需給モデル(2018年度版)による将来推計― 」において、同じ名前の「成長実現・労働参加進展シナリオ」では、就業者数は2025年に6490万人、2030年に6366万人、2035年に6209万人、2040年に6024万人と、2020年代以降減り続けると推計されていた。

今後の就業者は、5年前の推計では減り続けると見込まれていたのに、今回では2030年までは増え続けて2040年は直近と同水準となるという推計結果となったのは、なぜなのか。それは、

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慶應義塾大学経済学部教授・東京財団政策研究所研究主幹(客員)

1970年生。大阪大学経済学部卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。博士(経済学)。慶應義塾大学准教授等を経て2009年4月から現職。主著に『地方債改革の経済学』日本経済新聞出版社(日経・経済図書文化賞とサントリー学芸賞受賞)、『平成の経済政策はどう決められたか』中央公論新社、『入門財政学(第2版)』日本評論社、『入門公共経済学(第2版)』日本評論社。行政改革推進会議議員、全世代型社会保障構築会議構成員、政府税制調査会委員、国税審議会委員(会長代理)、財政制度等審議会委員(部会長代理)、産業構造審議会臨時委員、経済財政諮問会議経済・財政一体改革推進会議WG委員なども兼務。

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