コロナショックに負けないエントリーシート(趣味・特技・学業欄編)~コスパのいい就活2021卒#5
◆意外と出ていないエントリーシートのコツ
仕事柄、就活関連本は全部、読んでいます。
意外と出ていないのがエントリーシート本です。
いや、出てはいるのですが。
志望動機重視など内容が古すぎる、説明が不十分、項目に偏りあり…。
数少ない例外として、刊行時に読売新聞人事部採用担当デスクだった原田康久さんの『すべらない就活』シリーズ(2009年~2012年)は名作でした。
ただ、こちらは2012年刊行の『勝てるエントリーシート 負けない面接テクニック- すべらない就活2014年度版』で刊行終了となりました。
一般書店ではまず見かけず、Amazonの中古では入手できます。
古いとは言え、参考になる部分があるので、就活生の方がどこかで見かけたら入手することをお勧めします。
他にないなら自分が書こう、と、何回か、エントリーシート本の企画を出版社に持ち込みました。が、結果は連戦連敗(ぶつぶつ)。
と、愚痴っていても、現在の就活生には何の参考にもならないので、以下、エントリーシートのコツをまとめました。
コロナショックで就活の動きは停滞気味です。
が、そんなときだからこそ、リクナビのオープンESやJOBRASS(ジョブラス/アイデム)やofferbox(オファーボックス/iplug)、あさがくナビ(学情)などの逆求人型サイトが注目されています。
採用担当者は直接会わなくても、学生の自己PRや趣味・特技などが分かります。逆求人型サイトだと、学生の情報を読んだうえで説明会・選考参加へのオファーを出します。直接会わなくても、学生のことがわかる、ということで今後、利用は増えていくでしょう。
◆並列の場合、分量は半々?それとも変える?
今回は趣味・特技と学業・ゼミについて解説していきます。
まずは、趣味・特技欄から。
趣味・特技欄は、オープンESだと「趣味・特技」とまとめられています。付言すると学業ネタは「学業、ゼミ、研究室などで取り組んだ内容」となっています。
これと似たところでは、設問の中で複数の内容を指定されることもあります。
こちらは企業独自のエントリーシートでよく見かけます。
「あなたの長所と短所を答えなさい」
「学生時代に頑張ったこととそこから得られたことについて書きなさい」
などなど。
並列パターンと複数パターン、似ていますが、大きな違いは指示の有無です。
並列パターンは、並んでいるだけです。
例えば、リクナビ・オープンESだと趣味・特技欄は、120字を超えるかどうかというところ。そのため、無理に趣味と特技、両方を書く必要はありません。
「学業、ゼミ、研究室などで取り組んだ内容」も同じです。
ときどき、「学業とゼミと研究室で取り組んだ内容、3点、それぞれ書いた方がいいですか?」と聞いてくる学生がいます。
もし、3点も回答する必要があるのであれば、全部合わせて250字程度の欄になっているわけがありません。
仕様として、文系・理系問わず、利用できるようにするために、ひとまとめにしているだけです。学業だけでもいいし、ゼミ活動でも可。理系学生なら研究室ネタが書きやすいはず。
一方、複数パターンだと、設問の指示が複数、答えることになっています。そのため、「長所と短所を答えなさい」であれば、並列パターンのように、長所だけを書いて短所を答えないエントリーシートはアウト。設問の指示を無視した、として大きく減点されます。
なお、並列パターン、複数パターンとも、文字数・分量は指示していないものが大半です。指示がない、ということは学生次第。そのため、学生が書きやすいようにカスタマイズしていって問題ありません。
例えば「長所と短所」なら、大半の学生が長所を回答しやすい、と感じるはず。
であれば、その長所ネタを7~8割くらいにして、短所ネタは1~2割程度、ちょっと書く、という程度でも問題ありません。
ときどき、無理に半々にしている学生もいます。
それで落ちる、とは言いませんが、書きにくいのであれば、やめた方がいいでしょう。
◆趣味・特技は補欠扱い
趣味・特技欄は毎年、どう書けばいいのか、という質問をよく受けます。
それだけ、きちんとまとめているエントリーシート本が少ないのでしょう。
付言すると、エントリーシート本の中には「志望企業に関連する内容にしましょう」との解説を掲載する本もあります。
あの、私はディズニーランドとは全く無関係なのにディズニーファンの採用担当者とか、その企業の業務内容と全く無関係の社会人、山のように知っているのですが。
そりゃあまあ、志望企業関連の趣味・特技が本当にあるのであれば書いてもいいでしょう。
が、そうでなければ、志望企業とは無関係の趣味・特技を出した方がいいです。
ところで、この趣味・特技欄、学生が悩む割に企業からすれば、そこまで気にしません。
言うなれば「コスパの悪い」項目とも言えます。
企業からすれば、本流はあくまでも自己PRやガクチカです。
自己PRやガクチカがスポーツチームで言うところの、レギュラーであれば、趣味・特技は補欠程度の扱いに過ぎません。
昨年、旅行会社に内定した学生に話を聞いたところ、彼の特技は「国旗を書くこと」。
「面接で『その特技やってみてよ』と言われて、できないのもまずい。そこで、本当にできる特技である『国旗』を出しました」
日本とバングラデシュ以外に20か国近く、書けるそうで。
で、いざ、就活が始まると趣味(スポーツ観戦)は雑談で聞かれることはあっても、特技は全く聞かれなかったとのこと。
このエピソードをこの学生とは無関係だったメーカーの採用担当者に聴いていました。
「いや、だって、特技を聞いたら、その国旗君なら『国旗を書いて』という話になるわけでしょ?うまく書けても下手でも反応に困る。何より、変わった特技だから内定を出す、という話ではない」
別の採用担当者(同じくメーカー)も苦笑していました。
「話のとっかかりとして、面接で質問することはなくはない。それと、意外なPRポイントが隠れていそう、と思える学生にも質問はする。ただ、あくまでもメインは自己PRやガクチカ。思いつかないなら『読書』でも『スポーツ観戦』でもなんでもいい」
◆社会人にわかる話を
「読書」や「スポーツ観戦」など、あまりおおざっぱすぎると、それはそれでよく分かりません。
と言って、固有名詞を出せばいいか、と言えばそういう問題でもなく。
例えば、同じ読書でも、ライトノベル小説家やマイナージャンルの漫画家を挙げても、読み手は「誰?」となってしまいます。
エントリーシートの読み手は採用担当者であり、20代もいますし、30代もいる、50代だっています。
どの年代の採用担当者が読むか、学生は把握できるわけがありません。
という前提を考えると、固有名詞を出すなら「30代~50代でも分かる」が必須となります。
たとえば、小説家なら村上春樹や池井戸潤などは誰もが知っているでしょう。
スポーツチームも、野球やサッカーなら趣味ではなくても知っている人は多いはず。
そうした固有名詞を出すようにしてください。
「いや、そういう固有名詞だと、知らない人は知らない、ということになってしまう」
という学生もいるでしょう。
その場合は、「ライトノベル小説」「ライブ観戦」などイメージしやすい抽象表現にまとめるようにしてみてください。
◆学業・ゼミは所属学部と志望企業で変わる
学業欄は、大半の学生が学業・ゼミ・研究の概要を延々と書いています。
例)
私はゼミで「学生の就職意識と出版物の刊行状況」を研究しています。大学生はいつの時代でも就職を強く意識しています。この学生向けに就職ノウハウをまとめたマニュアルや適性検査対策本、業界・企業ガイドや読み物としての新書などが刊行されています。私はこの中でも就活関連の新書に注目しました。2008年刊行の光文社新書『就活のバカヤロー』がヒットし、翌年も文春新書『就活ってなんだ?』などがヒットします。その結果、2010年~2013年ごろまでどの新書からも就活ものが刊行されました。私はこの状況について研究しています。(245)
こんな感じで、研究(またはゼミ・学業)について、その概要を延々と書いているだけです。
文系・理系問わず、95%(石渡調べ)の学生は、学業欄をこうまとめています。
概要を書いたから、落ちるとは言いません。が、逆にプラス評価になることもまずないでしょう。
こうした概要ネタでまとめた方がいい学生は、所属学部と志望企業で判断できます。
具体的には、理工系、農学系、医療系、栄養系、美術系などの学部または大学院。
そして、その研究内容と関連ある企業や職種を志望する学生であれば、概要をメインに出した方がいいでしょう。
例えば、理工系から技術職・研究職を志望する場合は、研究概要がないと困る、という企業もあります。
一方、文系学部から総合職を志望する場合、あるいは理工系や専門学部から研究・学業とは接点のない企業・職種(総合職)を志望する場合はどうでしょうか?
採用担当者からすれば、研究概要を延々と書かれても、「ああ、そうなんだ」としか思えません。
企業からすれば、総合職採用であれば、大学や学部などは問いません。何を気にするのか、と言えば、「可能性・見込み」です。
頑張ってくれそう、うちの会社を儲けさせてくれそう、地味な作業をしてくれそう、一緒に働けそう、顧客に好かれそう、体力がありそう…。
別に、何でもいいです。何か一つでも見込みがあれば、次の選考に進めよう(内定を出そう)と考えることができます。
学業欄に話を戻すと、研究概要を書いても、見込みは特に見えてきません。
では、どう書けばいいのか、と言えば、ヒューマンスキルやスタンスです。もっと言えば「経過」。これを学業欄に書いていくと、実質的にガクチカ・自己PR欄を自ら一つ、増やしてアピールできることになります。
◆「見込み」を見せる学業欄の書き方
では、どう書けばいいのか、先ほどの例を変えていきましょう。
改造例)
私はゼミで「学生の就職意識と出版物の刊行状況」を研究しています。具体的には、就活関連の新書について、調査しました。まず、刊行状況を調査。さらに販売状況について大学生協や書店に聞き取り調査をしました。そのうえで10冊を抽出し、その内容をまとめました。それから出版社・著者に調査を依頼。承諾してくれた5社の編集者と3人の著者を訪問、インタビューをしたのです。この調査・インタビューから、就職状況の変化と出版状況の関連性を明らかにすることができました。この内容を卒業論文にするため、さらに研究を進めています。(250)
ちなみに、この例、私が過去に添削した例から適当に変えました。本当にこういう研究している学生がいましたら、ご連絡を。
先ほどの概要まとめと異なり、どんな調査をしたのか、その経過が明らかです。しかも、「大学生協・書店に聞き取り調査」「5社の編集者と3人の著者にインタビュー」という内容から、採用担当者はどう考えるでしょうか?
多くは「この学生は社会人にもどんどん話を聞けるのだな」と見込めることができます。
このパターンは、個人研究で聞き取り調査・インタビューを想定しています。
大学でそんなことしていない、という学生でも大丈夫です。
文献調査や実験がメインであれば、その経過を書いていけば大丈夫です。
グループで研究した、ということであれば、うまくいったにせよ、いかなかったにせよ、その経過を書いていきましょう。
そうすれば、他の学生よりも、読ませるエントリーシートにすることができます。
◆就活関連記事一覧
2021年卒向けの就活記事は以下のものになります。
コロナショックを就活生が乗り切る対策5点~コスパのいい就活2021卒#4(2020年2月29日公開)
自虐ネタの就活生はウソつきよりも負ける理由~コスパのいい就活2021卒#3(2020年2月28日公開)
就活生がウソまみれでたどる末路~コスパのいい就活2021卒#2(2020年2月23日公開)
「今の時期、何をすればいい?」と聞く就活生に真面目に長く答える~コスパのいい就活2021卒#1(2020年1月28日公開記事)
就活生のエントリーシートがしょぼすぎる!~「即戦力」の誤解で選考落ち地獄も(2019年2月27日公開記事)
※著者・石渡嶺司への就活相談・テーマ依頼・エントリーシート添削などを受け付けています(いずれも無料)。ご希望の方はPCメール(namio@eurus.dti.ne.jp)か、Twitterまでどうぞ。
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