コロナショックを就活生が乗り切る対策5点~コスパのいい就活2021卒#4
◆コロナショックで合説が続々と中止に
「まあ、後期試験が終わってから始めようか、と思います。まだ、売り手市場は続きますよね?」
1月上旬、岡山理科大学で開催された模擬就活イベントに私はゲスト格で参加していました。終了後の懇親会で就活生の一人が冒頭のようなことを述べたのです。
付言すると、同イベントに参加した学生は約40人。参加している時点で他の就活生よりも就活へのモチベーションは高かったと言えるでしょう。
その就活生をしても、まだのんびりムードが漂っていました。
それからたった50日の経過で就活は大きく変わっています。
リクナビ、マイナビ、キャリタスの3大ナビが合説を中止。
ブンナビ、ダイヤモンドナビも3月の合説(東京開催)を中止か延期を発表しました(2月28日現在)。
就活中に社会情勢や天災などで就活が大きく影響を受けることはあります。
2011年3月の東日本大震災や2008年秋のリーマンショックなどがその好例。
私の取材経験で言うと、東日本大震災のときはすでに広報解禁(前年の10月)があり、大半の企業は選考ないし実質的な選考に踏み切っていました。そのため、選考を延期する企業は続出しました。
ただ、当時は就職氷河期でもともと人数を絞っていたこともあり、大勢にはそこまで影響がなかったのです。
今回のコロナショックは、むしろ2008年のリーマンショックに似ています。
2006年から売り手市場に転じ、2008年夏ごろまでは売り手市場で学生にも楽勝ムードが漂っていました。それがリーマンショックの影響が出始めた秋以降、内定取り消し騒動が起こります。
さらに3年生の就活にも影響が出て、一気に就職氷河期に戻りました。
就活生の楽勝モードは胡散霧消したのです。
◆リーマンショックと類似も就活生は「?」
2008年のリーマンショックと今年2020年のコロナショック、類似点は多いのですが、違う点は時期・スケジュール観と就活生の意識です。
2008年のリーマンショックは広報解禁(10月1日)より前に起きており、就活生の危機意識は相当高まりました。
しかも、当時は9月以前のインターンシップはそこまで盛んでなく、10月より前に選考に踏み切る企業は少数でした。
その点、今年のコロナショックは広報解禁(3月1日)より前に起きた、という点では同じですがスケジュール観は大きく異なります。
インターンシップは1日インターンシップも含め開催している企業が多数を占めます。
そして、採用時期の分割化(言い方を変えれば通年採用)ですでに選考を始めている企業も多くあります。
それでいて、就活生の意識は大きく変わっていません。
「なんか、合説中止になったけど、どうなんだろう」という程度。
これは前年の就職状況も影響しています。
リーマンショックの2008年は売り手市場だったとはいえ、69.9%(文部科学省「学校基本調査」/卒業者に占める就職者の割合)で70%台を割っていました。言うなれば、売り手市場ではあっても「ほどほど」だったのです。
それから、2000年代半ばまでの就職氷河期の記憶が教職員にまだ残っていました。しかも、キャリア教育や就職・キャリア支援を年々強化していた時期でもあります。
その点、コロナショックの今年はどうでしょうか?昨年2019年卒の就職率は78.0%(前同)。70%台は2015年(72.6%)から続き、年々上昇していました。つまり、2008年の就職状況が「ほどほどの売り手市場」とするなら、2015年~2019年は「かなりの売り手市場」だったのです。
しかも2008年時点と異なり、キャリア教育や就職・キャリア支援について大学は打てる手はほぼ打っている、というのが実情です。
学生が就活に対してのんびり構えてしまうのも無理はありません。
◆対策その1:マイナビWEB合説やワンキャリア
とは言え、コロナショックで就活の状況が大きく変わったのは事実です。
そして、現在の就活生はこのコロナショックを乗り越えるしかありません。
本稿ではその手法として、「WEB合説・セミナー」「あさがく・就活カフェ」「ネットES」「WEB面接対策」「電話」の5点についてまとめました。
まずは1点目、ウエブ合説について。
すでに合説中止を発表しているマイナビですが、3月1日の10時~21時に「マイナビWEB就職EXPO」を開催します。
こちらはネット上による合同説明会であり、会場に行かなくても、自宅でもどこでも視聴できます。
生配信の予約はすでに終了し、録画配信については前日(つまり本日)の23時55分までとなっています。
マイナビはこのWEB合説を4月11日にも予定しており、他に企業単独のウエブセミナーも多数展開しています。
マイナビ以外ではワンキャリアが3月1日からYouTubeでの配信(毎日18時から)を決定。3月1日はJALとのこと。
企業単独のウエブセミナーも大手企業やIT企業を中心に増加するもの、と見られます。
こうしたウエブ合説・セミナーを活用するといいでしょう。
◆対策その2:あさがくは合説決行、就活カフェも
大半の合説は中止を発表していますが、大手就職情報会社だとあさがくナビ(株式会社学情)は2月29日現在、3月以降も実施を表明しています。
3月1日(日)東京・虎ノ門ヒルズ 9時30分~18時
3月1日(日)大阪・グランフロント大阪 9時30分~18時
3月2日(月)大阪・グランフロント大阪 9時30分~18時
東京・大阪の3月上旬開催の合同説明会で大手企業が参加するものは、今のところ、この3開催のみとなっています。
貴重な機会なので体調を整えたうえで参加できるようであれば参加するようにしましょう。
合同説明会以外だと、就活カフェは「知るカフェ」(全国の主要大学近辺など)「キャリぷら」(大阪、東京、札幌)は通常営業とのこと。
スポンサー企業も出入りしているようなので、こうした就活カフェも利用するといいでしょう。
◆対策その3:ネットESを完成させる~リクナビオープンES・ジョブラスなど
企業からすれば、ウエブセミナー・面接を導入していきたいところですが、
「申し込みが殺到していて、正直、捌き切れていない。3月導入が間に合わないところもある」(就職情報会社・営業担当)
というのが実情。
そうなると、学生の判断材料となるのがネットESです。
一番大きなところが、リクナビのオープンES。それから、逆求人型サイトのJOBRASS(ジョブラス/アイデム)、offerbox(オファーボックス/iplug)、あさがくナビ(学情)などでも、学生は自己PRやガクチカなどエントリーシートを完成させる必要があります。
企業はそのエントリーシート内容を読んだうえで説明会や選考にオファーを出します。
こうしたネットES、甘く見ている学生ほど完成させておらず、そもそもジョブラスやあさがくナビなどに登録していません。
こうした逆求人型サイトにはできるだけ早い時期に登録、ネットESも完成させるといいでしょう。
なお、この記事を千葉商科大学の学生がどれだけ読んでいるかは不明ですが、同大は「me R AI(みらい)」という学生専用の逆求人型サイトを2021年卒から始めました。いい取り組みなのですが、利用企業から「学生が想定したより登録をしていない」との報告が入っています。大学が結構な金額(石渡推定)をつぎ込んで開発した逆求人型サイトなのですから、さっさと登録するように。
※「me RAI(みらい)」千葉商科大学のPR動画。わざわざ動画まで作っていて、学外からの評価は高い(石渡含む)。なのに学生は…
◆対策その4:ウエブ面接対策で部屋は片づける
コロナショックで一気に利用が広まりそうなのがウエブ面接です。
もともと、企業、特に在京企業からすればオリンピックの影響で「交通網が混乱するリスク回避のために」とウエブ面接を導入する企業が増えていました。
そこに今回のコロナショックです。今後、日本の就活に広まっていくに違いありません。
このウエブ面接対策ですが、大半の学生は自室でしょう。
そうなると、その部屋が片付いているかどうか、画面越しに人間性が結構見えてしまいます。
画面越しに見える範囲はある程度は広い、という前提で見える範囲だけでもきれいにしておくことをお勧めします。
それから、実家暮らしなどであれば、家族に「この時間は面接だから」と釘を刺しておく必要もあります。
急な乱入者がいたから落ちるということはまずありません。
が、通常の面接だとない話で、家族の乱入から心が折れる、という事例も。
BBCパパのような、微笑ましいエピソードになればいいですが、そうならない就活生もいるようです。
※BBCパパの映像。これが2018年の映像賞を受賞するのだから人生わからない
◆対策その5:ダメ元電話も有効
合同説明会や企業単独のセミナーは中止が相次いでいます。
が、水面下では採用担当者やリクルーターによる個別面談や少人数のセミナー、選考は継続する企業が大半です。
「今後、政府が休業要請でも出してくれば、採用の動きもストップせざるを得ない。が、そうでなければ、当初のスケジュール通りに動く。そのためには個別面談や少人数セミナー、あるいは選考を進める」(専門商社)
そのため、企業の採用担当部署にダメ元で「話を聞きたい」など、ダメ元で電話するのもいいでしょう。
このダメ元電話、就職氷河期には踏み切る学生が一定数いて、しかも、そこから説明会・選考参加や内々定にまで至った例がいくらでもある、有効な手法です。
◆番外:大学はWEB対策を進めよう
ここまで5点、就活生向けの対策をまとめました。
ここからは就活生向けでもあり、大学キャリアセンター・就職課向けでもあります。
学内合同説明会やセミナーを各大学は続々と中止しています。
それについて異論があるわけではありません。
一方、中小規模の大学では、合同説明会・セミナーを開催するところもあります。
合同説明会やセミナーと言っても、大学によっては体育館・ホールなどをブースで仕切るのではなく、一企業に一教室を割り振る、という形式のところもあるからです。
体育館・ホールなどであれば感染リスクは高いと言えますが、教室単独であればそれほど高くはないのではないでしょうか?
いや、もちろん、それでも感染リスクはあります。
であれば、大学キャリアセンター・就職課の方にお願いしたいのがウエブ対策です。
具体的には「説明会の学内ネット配信」と「ウエブ面接ブースの設置」の2点です。
「説明会の学内ネット配信」は、採用担当者を大学に招くか、大学職員が企業に出向いて、そこで説明会を収録。
学内ネットで学生向けに流すのはどうでしょうか?
前者であれば、空き教室にプロジェクターなどを用意すれば事足ります。後者だと、企業の会議室等を提供してもらえばできるでしょう。
採用担当者からすれば、無人の教室や会議室で説明することに違和感を持つでしょうけど、それでも学生にアピールする機会、ということで応じる企業は多いはず。
2点目のウエブ面接対策は具体的には、大学キャリアセンター・就職課の中に、ウエブ面接用のブースを設置することです。
ブースと言っても、そんなに難しいものではありません。簡単な仕切りに吸音シート・壁を付ける程度。
工事が面倒であれば、極端な話、空き教室を提供するだけで事足ります。
前記のように、ウエブ面接は今後、日本の就活に広まっていきます。残念ながら日本の大学はその大半が対応に遅れているのが現状です。
と言って、自宅・自室だと学生のパーソナルな部分が必要以上に見えてしまうなどのリスクがあります。ただでさえ緊張する面接で、つまらない部分でつまづくのは大きな損失です。
本格的なブース設置は後回しにするとしても、簡易的なブースか空き教室の提供によってウエブ面接に対応する方策は必要です。このコロナショックを乗り切る支援策としても私は有効、と考える次第です。
◆就活関連記事一覧
2021年卒向けの就活記事は以下のものになります。
「コスパのいい就活」シリーズ第三弾。前回、「今どき、ウソはバレるって」という話をまとめました。
自虐ネタの就活生はウソつきよりも負ける理由~コスパのいい就活2021卒#3(2020年2月28日公開)
就活生がウソまみれでたどる末路~コスパのいい就活2021卒#2(2020年2月23日公開)
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就活生のエントリーシートがしょぼすぎる!~「即戦力」の誤解で選考落ち地獄も(2019年2月27日公開記事)
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