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先手を取ったレイカーズの背番号9、レイジョン・ロンドの存在感

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
NBAファイナル第1戦では24分51秒出場した(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NBAファイナル第1戦は、ロスアンジェルス・レイカーズが116-98でマイアミ・ヒートを下した。

 36分24秒プレーし、リーダーとしてレイカーズを牽引した"KING"レブロン・ジェームズ、そしてファイナル初出場ながら、34得点9リバウンド5アシストと気を吐いたアンソニー・デイビスの活躍が話題となっているが、24分51秒出場したレイジョン・ロンドも、シックスマンとしてベテランの味を見せた。

 2008年にNBAチャンピオンとなったロンドがファイナルに出るのは、2010年以来のこと。プレイオフ出場は2018年以来だ。

 若く見えるが、ロンドも早34歳。キャリア充分のベテランだ。https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20180501-00084680/

 先週の木曜日、13歳となった娘のバースディを祝った際、ロンドは父として、故郷、ケンタッキー州ルイビルで警官に射殺された女性救急救命士、ブリアンナ・テイラーさんについて説いた。

 今年3月13日、テイラーさんと恋人が就寝するなか、突然、地元警察がテイラーさん宅のドアを蹴破り、8発の銃弾を浴びせる。ほどなく、テイラーさんは死亡。26歳の若さだった。

 警官たちが追っていた容疑者は既に身柄を拘束されており、現場に駆け付けた部隊は、誤った住所をターゲットの住居と信じ切っていた。テイラーさんの死は、紛れもない「誤認殺人」であった。

 

 古里で無下に命を奪われた同じアフリカンアメリカンについて、ロンドは言った。

 「非常に心が痛む。テイラーさんは潔白だったんだ…。それなのに、もう彼女は戻って来ない。やるせないよね。

 多くを語り聞かさなくても、13歳の娘はこの件を良く理解している。その点は褒めてやりたい。いずれは、じっくり話さなきゃと思っているけれどな」

 ロンドの娘の誕生日の前日、テイラーさんを射殺した警官が不起訴になったと報じられる。そのニュースを耳にしたロンドは語った。

 「ここ数日、感情のコントロールが難しい。何とか平静を保っているよ。現実を受け止めるのが、本当に困難だ。何と言っても、故郷の出来事だし、自分には娘がいる。俺たちは、テイラーさんと一緒の黒い肌を持っている。我々がアメリカ大陸に来た頃から、黒人女性なんて価値が無いとされている。苦しいし、フラストレーションを覚える。辛いね……。

 ただ、FBIも捜査しているようだし、いずれ現状を覆す結果が出ることを祈る」

 そして、ロンドは「ファイナルでは、強く、激しく戦う」と話した。

 ファイナル第1戦。スタメンの座は譲ったが、チームで5番目に長くプレーし、7得点3リバウンド4アシストをマークした。

 2度目のNBA王者に向かって歩を進めるロンド。その熟した働きに注目だ。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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