世界チャンピオンを苦しめた同胞監督
22本のシュートを放ったアルゼンチンに対し、チリは僅か3本。コパ・アメリカでの連覇を目指し、さらにはカタールW杯で世界チャンピオンとなったその座を守りたいアルビセレステだが、圧倒的にフィールドを支配しながらも、なかなかゴールを奪えなかった。
88分、15分前に投入されたアルゼンチンの背番号22、ラウタロ・マルティネスが右コーナーキックからのこぼれ球を突きさして均衡を破り、勝利を掴んだ。
世界王者を大いに苦しめたチリを率いるリカルド・ガレカ監督も、アルゼンチン人である。1958年2月10日にブエノスアイレス州タピアレスで生まれたガレカはボカジュニアーズの下部組織で育ち、78年にトップチームに引き上げられてプロデビュー。81年にはA代表入りも果たし、20試合に出場。5ゴールを挙げた。
代表選手としても、84年まで在籍したボカでも、あのディエゴ・マラドーナと共にピッチに立っている。その後、最大のライバル、リバー・プレートに移籍。コロンビアを経て、94年までアルゼンチンのトップリーグでプレーした。
引退から2年後より指導者としてキャリアを積み、ペルー代表監督としてロシアW杯出場を決める。本大会でも同国40年ぶりの白星を挙げた。2019年のコパ・アメリカでは、ダークホースだったペルーを決勝進出まで導いた。そして、今年の1月末からチリ代表で指揮を執る。
今回、メッシにボールが渡ると、3名の選手がアルゼンチン代表背番号10を取り囲んで激しいプレッシャーをかけた。敗れはしたが、チリが世界王者を苦しめたのは、アルゼンチンを熟知する指揮官の采配が当たったからだ。41歳のGK、クラウディオ・ブラーボの落ち着き払ったプレーも、ガレカの起用法によって自信をつけたからではなかったか。
本コーナーで頻繁にコメントを頂戴している日本在住のアルゼンチン人コーチ、セルヒオ・エスクデロは言う。
「ペルー代表監督だった時も、ガレカが戦う気持ちを植え付けました。それで、選手一人一人がプロフェッショナルになったのです。祖国を相手にしても、どうすれば一番苦しむかを理解した戦い方でしたね。
ラウタロ・マルティネスのシュートも良かったし、粘り強いアルゼンチンの勝利に胸が熱くなりました。7番のMF、ロドリゴ・デ・パウルの運動量にも頭が下がります。が、チリが勝つチャンスもあったと思います。それはやはり、ガレカの手腕だと僕は感じます。本当に激戦で、サッカーの素晴らしさを感じるゲームでしたね」
熱いコパ・アメリカ。次の闘いも楽しみだ。