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長野県の山奥に伝わる「浦島太郎」伝説!開けてはいけない”玉手箱”を”どうして”ココで開けたのか?

旅人間はらぺこライター

はらぺこライターの旅人間です。今回は日本昔話で知られる「浦島太郎」のゆかりの地について紹介しましょう。

浦島太郎は日本各地に伝説がある。例えば…神奈川、愛知、京都、香川、長崎、鹿児島、沖縄など。それと長野県にも…。そこで「ん!」と思うのは海のない長野県に「なんで浦島太郎が?」ってこと。

諸説様々あるが、実は竜宮城から戻った太郎は諸国を旅し、その旅路の中で木曽路の風情に魅せられ留まったようだ。そして、玉手箱を開けた場所が長野県木曽郡上松町にある「寝覚の床」だとか。そんな民話の地を訪れてみた。

木曽路から「寝覚の床」へ

寝覚の床は、国道19号沿いにある。中央アルプス国定公園に含まれており、古くから木曽路を行く旅人たちが足を止めた国の名勝の一つ。

木曽路と言えば、「木曾路はすべて山の中である」の書き出しで始まる島崎藤村の小説『夜明け前』は有名で知られるが、数々の小説の舞台にもなっている。

はるか昔から幾人もの旅人が踏みしめた地なのだ。

エメラルドグリーン色をした美しい木曽川、そして切り立った岩盤。ここでは縦横の割れ目(方状節理)や甌穴(ポットホール)が見られる。

そんな岩盤の上に「浦島堂」がある。

寝覚の床に伝わる「浦島太郎伝説」とは?

ここは浦島太郎の伝説が残っている地。そして「寝覚めの床」は浦島太郎が目覚めた場所、竜宮城に行ったという夢が覚めたトコロ。つまり、ここで玉手箱を開けて老人の姿になった場所だという。

長野県木曽郡上松町の観光サイトでは以下のように書かれている。

【寝覚の床の浦島太郎伝説】
竜宮城の夢のような日々から現実に帰った太郎は、竜宮城にいたひとときが300年であったこと、周りに自分のことを覚えているものがいないことに驚き、やがて諸国漫遊の旅路に出ます。
寝覚の床の風景を気に入った太郎は、魚釣りをしたり、竜宮城の巻物を参考に仙薬を作って地元の住民に分け与えたりしながら暮らしていました。
ふとある時、竜宮城から玉手箱を持ち帰ったことを思い出します。決して開いてはならないと忠告されていましたが、太郎は玉手箱を開いてしまいました。すると中から紫色の煙が立ち上り、太郎はたちまち300歳の翁の姿に…。
太郎は嘆き悲しみ、やがて寝覚の地から姿を消してしまいました。そして寝覚の床には人知れず弁財天の像が残されており、これを祀って建立されたのが、臨川寺といわれています。
<引用:上松町観光サイト(外部リンク)

この伝承によると、竜宮城から帰った太郎は、諸国漫遊の旅に出て、寝覚の床の風景を気に入ってこの地に長く滞在していたようだ。

現地で教えてもらった話だが、江戸時代に沢庵和尚が「浦島太郎が腰かけて釣りをした岩がある」と日記に記し、それが話の発端だという説もあるそうな。

しかし、なぜ乙姫は玉手箱を渡したのか?

浦島太郎の物語について不思議に感じることがある。それは乙姫がなぜ玉手箱を太郎に渡したのか?ってことだ。

助けた亀の恩返しで竜宮城へ。そこで夢のような時間を過ごす。故郷に残した親が心配になって帰郷を決断。その時に乙姫から「絶対に開けてはいけない」と手渡されたのが玉手箱だった。

「これは玉手箱といって、中には、人間の一番大事な宝がこめてございます。これをお別れの印に差し上げますから、お持ち帰りくださいまし。
ですが、あなたがもう一度、竜宮へ帰ってきたいとおぼしめすなら、どんなことがあっても、決してこの箱を開けてごらんになってはいけません」と、くれぐれも念をおして、玉手箱をお渡しになりました。
浦島は、「ええ、ええ、けっしてあけません」といって、玉手箱を小脇にかかえたまま、竜宮の門を出ますと、乙姫さまは、また大勢の腰元を連れて、門の外までお見送りになりました。
<引用:浦島太郎(外部リンク)

しかし、太郎は約束を破って玉手箱を開けてしまった…。そして老人になり、物語の中で浦島太郎は「玉手箱=人間の寿命」と語っている。

浦島は、うっかり乙姫さまにいわれたことは忘れて、箱の蓋をとりました。するとむらさき色の雲が、なかからむくむく立ちのぼって、それが顔にかかったかとおもうと、すうっと消えて行って箱のなかにはなんにものこっていませんでした。
その代かわり、いつのまにか顔じゅうしわになって、手も足もちぢかまって、きれいなみぎわの水にうつった影を見ると、髪もひげも、まっ白な、かわいいおじいさんになっていました。
 浦島はからになった箱はこのなかをのぞいて、「なるほど、乙姫さまが、人間の一番大事な宝を入れておくとおっしゃったあれは、人間の寿命だったのだな」と、残念そうにつぶやきました。
<引用:浦島太郎(外部リンク)

伝承によってストーリーは異なり、中には太郎が鶴になって飛び立ち亀になった乙姫と再会したというハッピーエンドもあるらしい。

しかし、一般的には「玉手箱を開けて老人になる話」が主流。

この結末は少し残酷なように感じる。「絶対に開けてはいけない」という約束を破ったのが悪かったのか?仮にそうだとしても恩返しの結果がこれではモヤモヤしてしまう。どうも違和感が残る。

玉手箱の正体は?

民話の面白いトコロは、ただの昔話ではなく何かメッセージのようなモノが別にあるのでは?と感じる点だ。

ただの考えすぎで、実は何もないのかもしれないが…。

結論を先に言えば、「玉手箱の正体」の答えは分からなかった。ただ、色々と調べていると色々な仮説があったので、私の解釈を通し紹介しよう。

特に興味深かった説は亀は船、竜宮城は侵略したどこかの国、玉手箱は戦利品、煙は忘却だと…。浦島太郎は玉手箱を開けて夢から覚めた、夢の世界から現実に戻った。つまり忘却、侵略した事実を闇に葬ったと。

浦島太郎伝説とは、どこか侵略した国の話だと。こうなると、長野県の「寝覚の床」とは関係なくなるだろうけど。事実は分からない。

他にも、「玉手箱は乙姫が太郎に再び会うための御守りだった」と。一般的に神社などの御守りは開けてはいけないもの。それと似ている。

竜宮城で過ごす時間と、現実の時間には時空の歪みがある。そのまま返してしまうと太郎が死んでしまう。だから太郎の命を守る為に乙姫が手渡した御守りが玉手箱だと言うのだ。中身を見たり知ったりすると効力が無くなる。

…それを手渡した理由は、乙姫の恋愛感情で、また戻って来て欲しかったからではないか!という。

確かに、物語の中でも「あなたがもう一度、竜宮へ帰ってきたいとおぼしめすなら」と乙姫が語っている。だとすれば、やはり約束を破った戒めなのだろうか。どこか「ツルの恩返し」と似ている気もする…。

…で、なぜ太郎は玉手箱を開けたのか?

これも何故かは分からない。ただ、美しい景観を見ていると竜宮城で過ごした楽しい時間が恋しくなったのではないだろうか。海のない長野県、木曽の山奥、青く澄んだ川の流れを見て海と竜宮城を思い出したのかもしれない。

そこで「開けてはいけない」と言われていたが、玉手箱を開けることで”竜宮城に帰れるヒント”があると思ったのかもしれない。これも全て仮説だ。

この物語に関しては、今後も色々と各地の情報を収集していきたい。

寝覚の床には「亀の形をした大岩」がある!

さて、「浦島堂」までは歩いて行ける。ただし、途中からは整備された遊歩道ではないので、大きな岩の上を歩かないと行けない。もし行くならサンダルなどは止めた方が良い。

無理して「浦島堂」まで行かずとも、「亀岩」「床岩」と呼ばれている大きな岩までは行きやすいのでおすすめだ。浦島太郎がココに留まった気持ちが分かるかも。それほど美しい景観がみられる。

ちなみに、上の写真を良く見ると…「亀」に見えませんか?

偶然なのか?必然なのか?浦島太郎伝説の地に亀の背中に乗ったかのような岩がある。意外とこの「亀岩」が伝説の発端だったりして…なんて思ったりも。

昔話は色々な視点で見られるし、様々な仮説が存在する。

とは言え、今から100年以上も前から、その地で伝わっている物語。これらは大切に残していくべきであり、その土地の景観を大切にしたい。

ここは本当に素敵な場所。ほら、このベンチなんて特等席だ。

今回は浦島太郎の伝説が残る長野県にある「寝覚の床」を紹介しました。今後も定期的に、なるべく親しみやすく日本各地に残る民話を紹介したいと考えてます。

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寝覚の床
住所:長野県木曽郡上松町上松1704
上松町観光サイト(外部リンク)
地図(外部リンク)

はらぺこライター

旅行好きのライター。各地に伝わる伝説や民話、古くから地元で大切にされているモノを親しみやすく紹介したい|地元で人気の食堂やレトロな喫茶店巡り|”思わずクスッと笑ってしまうような”珍スポット探し|目標は個性的でヘンテコな旅本の出版|フォローして頂けたら嬉しいです。

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