【京都市右京区】嵐山にて扇子がテーマの展覧会はじまる!涼だけでなく、風雅ももたらすその魅力を再発見
嵯峨嵐山文華館にて扇子をテーマにした展覧会が始まる
2023年7月14日より、嵯峨嵐山文華館にて扇子をテーマにした展覧会「ふぁん・ファン・FUN ~扇子いいね」が始まりました。
「センスいいね」だなんて、クスッとさせてくれる企画展名。
蒸し暑い夏にぴったりのテーマですが、作品を鑑賞すると、ただ涼をとるだけではなく、所作の美しさを醸し出したり、広告メディアやサイン色紙としての役割も果たしていたりなど、扇子の魅力を再発見できる展覧会でした。
それでは内覧会にて一足先に鑑賞させていただいた際のハイライトをお届けします。
神事や祭礼など日本文化と関わりの深い扇子
「扇」と聞いてまずイメージされる扇子は、8世紀初頭に中国より伝来したとされる団扇(うちわ)がモデルです。
やがて平安時代に改良され、扇子へと姿を変えました。
扇子は、ただ涼を取るだけでなく、邪気を払う道具として神事や祭礼でも重宝されてきました。
ちょうど京都では祇園祭の季節ですが、山鉾巡行でも音頭取は扇子を使って指揮をとりますよね。
写真は、足利尊氏が嵯峨嵐山文華館の目の前を流れる大堰川に落ちた扇が舞い漂う様子を見て楽しんだという逸話を元に描かれたものです。
現代でも、ここ嵐山で5月に行われる三船祭にて、この尊氏の逸話にちなんだ「扇流し」が行われており、色とりどりの扇子約100本が流れるその様は、この作品同様に美しいです。
扇子は小さなキャンパスでもあった
扇子は小さなキャンパスでもあり、その形を活かしてデザイン性のある絵柄が描かれてきました。
そして本展の目玉とも言えるのがこちら。
鮮やかな金地に48枚もの扇面が貼られた屏風です。
芳中は琳派の絵師だったため、琳派の特徴の一つである「たらしこみ」と呼ばれるぼんやりとした滲みで描かれています。
芳中の代名詞ともいえる愛らしい子犬や千鳥も描かれているので、全体を鑑賞した後は、1枚ずつじっくりご覧になってみてください。
個人的には、解説に添えられたキャッチコピーも今時でクスッと笑えました。
広告としての役割も果たした扇子
扇子は次第に企業広告としての役割も果たすようになります。
写真は「宝酒造」と現在の「株式会社マンダム」の前身となった「大崎組商会」のものが展示されています。
現代でも、夏になると企業広告が掲載された団扇が街角で配られたりしますよね。
職人技が光る京扇子の製作工程
京扇子の製作工程も知ることができるのですが、個人的には「折加工」と「中附け」という工程が興味深かったです。
京扇子の老舗「白竹堂」の製作工程映像と合わせて、職人技に触れてみてください。
扇子は所作の美しさや風雅をもたらす重要アイテムだった
2階の展示室へ上がると、そこには扇子を持った美人画がずらりと飾られており、女性の「優雅さ」「可愛らしさ」「しとやかさ」などが伝わってきます。
扇子を持つことで自然と手元の所作が美しくなり、扇子で口元などを少し隠している姿は可憐そのもの。
扇子は女子力アップには欠かせないアイテムだったんですね。
こちらの作品は団扇を持つ右側の女性だけでなく、左側の女性にも注目を。
末広がりの形から吉祥文様でもある扇柄の着物を着ています。
金泥で描かれた線香花火の様子もとても繊細で、日本の夏の風雅を感じられます。
初公開の「京都画壇名家団扇十二幅対」
こちらは当時人気を博した京都の画家たちが手がけた団扇絵を軸装に仕立てたものです。
それぞれ個性が光るので、お気に入りを探してみてくださいね。
サイン色紙としての役割も果たす扇子
最後はサイン色紙としての役割も果たす扇子をご紹介。
藤井聡太さんや羽生善治さんといった将棋界を代表する棋士の揮毫や、忌野清志郎さんや奥田民生さんといったミュージシャンによる揮毫も展示されています。
清志郎さんや民生さんのを観ると、伝統的な扇子もこんなに自由にポップに使っていいんだなと思わせてくれます。
ここ数年は首から下げるハンズフリーファンが広がりつつありますが、この夏は扇子を持ち歩こうと思わせてくれる、扇子の魅力再発見の展示会でした。
ふぁん・ファン・FUN ~扇子いいね
会期:2023年7月14日(金)〜10月9日(月・祝)
嵯峨嵐山文華館
住所:京都市右京区嵯峨天龍寺芒ノ馬場町11
開館時間:10:00〜17:00(最終入館16:30)
その他、展覧会の詳細は嵯峨嵐山文華館の公式HP(外部サイト)をご確認ください。