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タイソンと11月に戦うYouTuber

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:REX/アフロ)

 58歳のマイク・タイソンと11月15日に2分×8ラウンドで戦う予定となっているYouTuber、ジェイク・ポールが、マイク・ベリーから3度のダウンを奪って6回TKO勝ちを収めた。 

 ベリーは「ベア・ナックル・ファイティング・チャンピオンシップ」のチャンピオンという触れ込みだった。ポールにとって難敵だと騒いでいたメディアもあるが、今回はYouTuberの完勝だった。

写真:REX/アフロ

 ポールは、第1ラウンドの開始から1分も経たないうちに右をぶち込み、試合を優位に運んだ。ファーストラウンドで、試合は決まったも同然だった。2ラウンドにポールは2度目のダウンを奪う。

 その後もポールは様々なパンチを繰り出し、ジャブでリングをコントロールした。ペリーの足はグラついており、第5ラウンド終了後にドクターとレフェリーは試合を止めるか否かの判断を強いられた。

 何とか次のラウンドに向かったが、ペリーが3度目のダウンを喫した折、試合が終了した。ノックアウトは第6ラウンド1分12秒であった。

写真:REX/アフロ

 ……と、戦況を記しているものの、同ファイトはプロボクシングとはとても呼べない茶番だった。ポールは多少ボクシングのトレーニングを積んでいるようだが、ベア・ナックル・ファイティング・チャンピオンはまったくのド素人。ディフェンスの技術、及び意識が低いので、危険な興行にしか見えなかった。

写真:REX/アフロ

 先日もアナハイムでUFCのスターがボクシングルールで戦ったが、この手の興行は、見ていて辛いものがある。ボクシングという競技の醍醐味を忘れた、単なる喧嘩マッチである。

写真:REX/アフロ

 日米ともに、こうした殴り合いをイベントとして収入を得ている人間がいる事実に、疑問を感じざるを得ない。ジェイク・ポールはYouTuberとしては成功者だが、ボクサーとしての実力はない。それでも、彼の映像を見て狂喜乱舞するファンがいる。

写真:REX/アフロ

 マイク・タイソンがポールに嫌悪感を覚えるのは至極当然であり、真っ当な感受性だ。自分を追い込み、血の汗を流して掴んだリングでの栄光を、こんな男に汚されてたまるか、という思いだろう。

 それでも58歳の元統一ヘビー級チャンプがリングに上がるのは、危ないと感じる。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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