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日本代表ジェイミー・ジョセフヘッドコーチメンバー会見レビュー。【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
6月のツアーは2勝1敗。(写真:アフロ)

 日本ラグビー協会は10月1日、今秋のツアーに挑む日本代表メンバー35人を発表した。来年のワールドカップ日本大会に向けた貴重な強化の場に際し、2016年秋に就任のジェイミー・ジョセフヘッドコーチが会見した。詳報はこちら

 チームは国内トップリーグ期間中の14~24日に宮崎合宿、26日に世界選抜との強化試合(大阪・東大阪市花園ラグビー場)をそれぞれおこない、11月3日に世界ランク1位のオールブラックスことニュージーランド代表と(東京・味の素スタジアム)、18日に同4位でエディー・ジョーンズ前日本代表ヘッドコーチ率いるイングランド代表と(ロンドン・トゥイッケナムスタジアム)、24日には同19位でワールドカップの初戦の相手でもあるロシア代表と対戦する。

 メンバーは下記。

・左プロップ

稲垣啓太(パナソニック/186/116/22)●▲★

三上正貴(東芝/178/111/33)★

山本幸輝(ヤマハ/181/118/5)■

・右プロップ

浅原拓真(東芝/179/113/12)●▲

具智元(ホンダ/183/122/5)●▲

ヴァル アサエリ愛(パナソニック/187/115/3)▲

山下裕史(神戸製鋼/183/118/49)■★

・フッカー

坂手淳史(パナソニック/180/104/10)●▲

庭井祐輔(キヤノン/174/95/6) ●▲

堀越康介(サントリー/175/100/1)■

・ロック

アニセ サムエラ(キヤノン/198/118/10)●

ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ/188/106/6)●▲

ヘル ウヴェ(ヤマハ/193/113/9)●▲

中島イシレリ(神戸製鋼/186/120/―)■

・フランカー

徳永祥尭(東芝/185/100/10)●▲

西川征克(サントリー/181/95/1)●▲

リーチ マイケル(東芝/190/110/56)●▲★

布巻峻介(パナソニック/178/98/6)●▲

・ナンバーエイト

ツイ ヘンドリック(サントリー/189/108/40)■★

姫野和樹(トヨタ自動車/187/108/6)●▲

・スクラムハーフ

茂野海人(トヨタ自動車/170/75/6)●▲■

田中史朗(パナソニック/166/72/67)●▲★

流大(サントリー/166/71/12)●▲

・スタンドオフ

田村優(キヤノン/181/92/51)●▲★

松田力也(パナソニック/181/92/13)●▲

・センター

ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ/188/101/3)●▲

中村亮土(サントリー/178/92/13)●▲

ラファエレ ティモシー(コカ・コーラ/186/98/11)●▲

梶村祐介(サントリー/180/93/―)■

・ウイング

福岡堅樹(パナソニック/175/83/27)●▲★

山田章仁(パナソニック/182/88/24)●▲★

レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダ/177/92/8)●▲

ヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車/184/99/―)■

・フルバック

野口竜司(パナソニック/177/83/13)●▲

松島幸太朗(サントリーサンゴリアス/178/88/30)●▲★

※=現時点では日本代表資格を持っていないがワールドカップ日本大会までに資格を取得する見込みのある選手

●=2018年6月の日本代表ツアーに参加した選手

▲=サンウルブズ2018年スコッドに加わった選手

■=8月以降新たにワールドカップトレーニングスコッドに追加された選手

★=2015年ワールドカップイングランド大会に出場した選手

■会見の様子

 ジョセフ、薫田真広・強化委員長、通訳の佐藤秀典さんが登壇した。

 薫田、ジョセフの順に声明を発し、質疑に応じた。会見中のジョセフはやや険しい表情。発言中にあちこちを見回す様子も目立った。「いつもニコニコしているのが本当の素顔のようだが、選手の前では厳しい顔つき。リーダー陣にはより要求が高くなる」がある選手のジョセフ評。ジョセフの来日当初の会見ではあったジョセフと薫田とのフォトセッションは実施されず。

■堀江翔太の怪我

 キャプテン経験のあるフッカーの堀江翔太は、疲労骨折のため選外。怪我の状況などを話したがらないジョセフはこの日の会見で「状態からいって、6か月ほど治療に時間がかかる」と説明。ところが会見後、日本ラグビー協会からこの発言が誤りである旨のメールが報道陣に一斉送信される。実際は復帰までそう時間がかからない可能性があるとのこと。関係者の1人は、「このことで堀江さんに色々な質問が集中してしまわないようになってくれれば」とトップアスリートの精神衛生を心配する。

■新人の抜擢

 サントリーで活躍する新人の梶村祐介、堀越康介が選出された。

 今回代表デビューを目指すセンターの梶村は、持ち前の突破力がトップリーグの外国人選手にも通用している。

 もっとも当の本人は「トップリーグでやる時はああいうセンター(外国人選手)が当たり前にいると思う。そういう人たちを相手にキャリー(ボールを持っての前進)ができたのは自信になりました」としながら、「まだ正直(代表に)いけるレベルではない」と謙虚だ。具体的には「外側にスペースがたくさんある時に(自分でボールを持って)ポイントを作って、相手が(もともとあった外側のスペースを埋めるべく)沸いてくるということがあった」と、プレーが続くなかでの状況判断について伸びしろがあると話す。

 昨季までは大学選手権9連覇中の帝京大学のフッカーとして強靭さを披露も、日本代表キャップは1のみ。ところがサントリーの沢木敬介監督に「1番(左プロップ)でのスクラムが強い。ラグビーセンスは抜群。将来、1番で日本代表になる」と左プロップへのコンバートを命じられると、レギュラー選手として持ち味を発揮。すると今回、堀越のもともとのポジションでもあり堀江の抜けた穴でもあるフッカーで選ばれた。

 サントリーの若手育成の妙、ジョセフが大学やトップリーグなどの国内の戦いをイージーと見なしていることなどが浮き彫りになった。関係者の過去の発言および当方現場取材によれば、ジョセフがトップリーグを直接視察し始めたのは開幕2日目にあたる9月1日とされる。

■山沢拓也は落選、トップリーグへの視線

 トップリーグで活躍するパナソニックのスタンドオフ、山沢拓也は選外だった。今季は周りからの声を聞き的確な指示を出す領域で成長も、ジョセフにそうは伝わらなかった。自慢のランニングスキルを発揮する試合を、ジョセフは「山沢は非常にいいパフォーマンスを、トップリーグ、で、見せていますが、トップリーグと(今度戦う)オールブラックスとではレベルの差があります」と話す。「10番(スタンドオフ)を育てるには時間がかかる」とも続ける。

 チームの勝敗を左右するスタンドオフのポジションには、現状ではレギュラー格の田村優、パナソニックではインサイドセンターとして適正ありとされる松田力也の2名のみが選出される。今後は故障者発生時に向けたリスクヘッジなどが求められる。

 

■立川理道が選外に

 キャプテン経験者でインサイドセンターの立川理道が「12番に求められるフィジカル、ディフェンスのキーエリアが不足している」との理由で落選。「彼は現状、(クボタやサンウルブズで)10番でプレーしていますが、私たちは彼を12番として見ています」との言葉もあった。防御の背後へ通すパスや危機管理能力といった無形の力は、この評価軸を覆すには至らず。ちなみにセンターで選出された梶村は、かねてから立川を「立川さんのように頭も使えて身体も張れる選手になりたい」「(代表入りしたら)ライバルと思ってもらえるように頑張りたい」と尊敬していた。

■フォワードの入れ替え

 身体をぶつけ合うフォワードのポジションには7名もの入れ替えがあった。「何名かは怪我で入らなかった選手で、怪我がなければ入っていたでしょう」とジョセフ。今年6月に入っていた選手のうち、石原慎太郎(左プロップ)、須藤元気(右プロップ)は故障離脱中。突進力と2015年ワールドカップイングランド大会での経験値が光る真壁伸弥(ロック)に代わり、代表未経験で普段はナンバーエイトの中島イシレリがロックで選出。これで計4名いるロックのうち2名が身長180センチ台となった。

 ジョセフが指導する空中戦のラインアウトは、今年6月こそやや安定化もアキレス腱と見なされている領域。兄弟チームのサンウルブズのラインアウトは、シーズン中にグラント・ハッティングやサム・ワイクスといった海外出身ロックが作戦立案に携わったことで息を吹き返していた。格上を撃破するには自軍ボールをふいにする機会を最小限に止めたいだけに、注目度は高まる。

 ツアー後は、ワールドカップトレーニングスコッドに入るピーター・ラピース・ラブスカフニ(フランカー)、ハッティング(ロック)の代表資格取得次第でフォワードのポジション争いがさらに激化しそう。

■ツアーに際して

 ニュージーランド代表などとのバトルを見据え、ジョセフは「手ごわいことは承知の上ですが、日本のセットピースをアタックしようと思っていると思います。ワールドカップでのアイルランド代表、スコッドランド代表も同じようにしてくると予想しています。我々はキックを駆使してチャンスを作る。ストラクチャーからもトライを取れますが、6月はアンストラクチャーからも8つのトライを取っていて、それが最も勝率の上がる戦い方だと思っています」と発言。スタイルを貫きたい旨を明かす一方で、行動目標や結果目標は言及しなかった。

 ジョセフは選手間でのリーダーシップの醸成に喜んでいる。勝利を希求して初めて得られる果実は、選手の献身によってもたらされるのだろうか。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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