カネロ・アルバレスは、GGG(ゴロフキン)よりもリベンジを優先するか?
現在のボクシング界で最もカネになる選手として注目されるサウル・"カネロ"・アルバレス。
プロモート会社であるマッチルーム、DAZNからの放映権料、PPV及び入場券の売り上げなどを合わせ、5月7日の試合で彼は5300万ドルを得たとされる。
一方、カネロの挑戦を受けたWBAライトヘビー級チャンピオン、ディミトリー・ビボルの最低保証額は、ファイトマネーの200万ドルにPPVの売り上げなどをプラスして500万ドルに届くかどうか、と報じられた。
2019年11月2日にWBOライトヘビー級タイトルを獲得したカネロだが、ビボルとの体格の違いは明らかだった。ジャッジ3名がそれぞれ113-115で、4冠統一スーパーミドル級王者を敗者とした。
ビボルに勝利することを前提として、カネロは9月17日にGGGと3度目の対戦が内定していた。が、興行的な旨味を考えれば、ビボルとのリターンマッチを優先する可能性が高い。USA Today紙は、既に再戦に向けて両陣営が動き始めたと発信している。
とはいえ、カネロにとってビボルはリスクがあり過ぎる相手だ。米国大手TV局、CBSのブライアン・キャンベルは、今回の試合前からWBAライトヘビー級王者の防衛を予想していた。
キャンベルはサイズの違い、パンチ力の差を説いた。そして実際にゴングが鳴ると、ビボルが放った鋭いジャブと、速いコンビネーションで自身の見解に確信を持った。
下の表が、Compubox社が試合後に示した両者の手数とクリーンヒットの差である。試合内容もそう感じたが、スコア以上に開きが見て取れる。パウンド・フォー・パウンドBESTと呼ばれるカネロだが、実際のところ、175パウンドでは厳しかった。
客観的に見れば、カネロが175パウンドにとどまるのは得策ではない。過去にセルゲイ・コバレフを下しはしたが、ライトヘビー級がベストウエイトとはどうしても思えない。公表173センチの身長も、このクラスではかなり低い。
マッチルームとカネロの契約は2試合。当然のことながら、プロモーターは最も話題になり、売り上げが見込まれるファイトを組みたい。カネロのプライドを考慮しても、既に会場を押さえている9月17日はビボルvs.カネロ2が濃厚か。
複数階級を制したスター王者が、ウエイトの壁に弾き返されて完敗した。それでも再戦に向かうーーーという姿で思い起こされるのは<ニカラグアの貴公子>アレクシス・アルゲリョだ。
フェザーからライトまで3階級を制していたアルゲリョは、更に階級を上げ、WBAジュニアウエルター級チャンプ、アーロン・プライアーに挑む。誇り高きアルゲリョは、常にその階級で最強の王者に挑み、勝利することを自身に課していた。
1982年11月12日、アルゲリョはプライアーに14回KOで敗れる。10秒間に22発のコンビネーションを浴びたアルゲリョを、レフェリーが救った。140パウンドの壁は厚かった。
だが、「自分の体に流れる血の、最後の一滴まで振り絞って闘う」と、リターンマッチを切望。1983年9月9日に行われた第2戦では、10回に右アッパーを浴びてダウン。アルゲリョはキャンバスに座り込みながら、レフェリーのカウントを聞いた。
ニカラグアの貴公子は試合後に語った。「あのまま試合を続けていたら、私は殺されていたでしょう」。
カネロも「己の体に流れる血の、最後の一滴まで振り絞って」リベンジを目指すのか。カネロとの第2戦でベルトを失ったGGGも、雪辱を果たしたいところであろう。
いずれにしても、カネロが今日のボクシング界の中心であることは依然として揺るがない。ただ、2連敗となると状況は変わってくる。
カネロはどんな決断を下すか。