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セルティックス、NBAで最多優勝チームとなるか

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 今季東地区1位でプレイオフに出場したボストン・セルティックスは、マイアミ・ヒート、クリーブランド・キャバリアーズを4勝1敗で下し、地区決勝ではインディアナ・ペーサーズをスイープしてファイナルに進んだ。

 レギュラーシーズン西地区5位から、ダークホースとして勝ち上がったダラス・マーベリックスを相手にしても、6月6日、9日、12日と3連勝をあげ、連続スイープでチャンピオンとなるかーーと思わせた。

 が、14日のゲームは84-122で黒星を喫する。本日、セルティックスのホーム、TDガーデンにて第5戦が行われる。

エースのテイタムはどんなプレーを見せるか
エースのテイタムはどんなプレーを見せるか写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 今シーズンが始まった時点で、セルティックスとロスアンジェルス・レイカーズは、共にNBAで17度ずつチャンピオンとなっており、最多優勝回数で並んでいた。セルティックスは、18回目に王手をかけている。フランチャイズであるボストンの大声援を受け、精神的に優位だと見る。

 ボストンのVは、1957年、59年から66年、68年と69年、74年、76年、81年、84年、86年、そして2008年となる。59年から8年連続で王座に就いた盤石ぶりに目が行くと同時に、この16年間、優勝から遠ざかっている事実も突き付けられる。

写真:Shutterstock/アフロ

 8連覇時代は、現在のライバルであるレイカーズのフランチャイズがミネアポリスだった。当時の大黒柱、ビル・ラッセルは2年前に88歳で鬼籍に入っている。昨シーズンは、彼への敬意と追悼の意をNBA全体で示し、それぞれのプレーヤーが、ラッセルの背番号だった6を右肩につけて戦った。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ラッセルは選手として11回、監督として2回セルティックスをチャンピオンに導いている。しかし、必ずしも英雄として称えられていた訳ではない。ラッセルはボストンのファンからの卑劣な人種差別的発言や嘲笑に耐えねばならなかった。娘のカレン・ラッセルは、1987年のニューヨーク・タイムズ・マガジンにコメントを寄せている。

 「私たちの家はめちゃくちゃでした。壁には『NIGGA』とスプレーで書かれました……我が家に忍び込んだ泥棒たちは、ビリヤード台にビールをかけ、フェルトを引き裂きました。彼らは私の父のトロフィーケースを開け、ほとんどのトロフィーを粉々にしました。

 私はそんな状況に愕然とし、傷付きました。家族全員が動揺しました。警察が来ましたが、しばらくして去っていきました。その時、両親がベッドカバーを外すと、強盗がベッドで排便していることに気付いたのです」

写真:REX/アフロ

 今、セルティックスのスターであるジェイソン・テイタムやジェイレン・ブラウン、あるいはバスケットボール界の神、マイケル・ジョーダン、そして今日のKING、レブロン・ジェームスが羨望の眼差しを向けられる前に、同じ肌の色を持つ実力者は、苦難を乗り越えたのだ。そんな雲外蒼天を信じたラッセルを忘れてはならない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 筆者は、セルティックス18度目のVを予想する。その折、バスケットボールファン全員がラッセルの足跡を再確認すべきだと感じる。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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