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韓国のメディアは「東京五輪無観客」をどのように伝えているのか?

辺真一ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
東京五輪5者会談(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 東京オリンピックの無観客決定は韓国でも速報で伝えられたが、韓国国民の関心はそれほど高くなく、新聞媒体を含め韓国メディアの扱いも総じて大きくなく、多くは日本国内の政治問題や日韓関係絡みで取り上げていた。その中で代表的なものを取り上げてみる。

(参考資料:東京五輪への韓国人の複雑な反応 「ボイコット賛成」の世論調査とは真逆の国民請願の関心の低さ

 テレビ媒体では「MBC」が「結局、群衆も歓声もないオリンピック・・・『雪だるま』の赤字だけ」の見出しを掲げていたのが印象的だ。

「MBC」は「東日本大地震被害地域の復興、人類がコロナを克服した証しになるとした日本が押し出したスローガンが無色化し、オリンピック開催成功後の秋の総選挙で勝利する菅政府の構想は打撃を受けることになった」と「無観客は菅政権にとってダメージとなった」との視点から伝えていた。

 通信社の「聯合通信」はジャーナリストの李セウォ氏の論評を伝えていた。

 李氏は「専門家らが提示している感染者の趨勢展望を見ると、東京五輪は『安全・安心の大会』ではなく、『危なっかしい大会』となる状況にある」としたうえで「現在の状況では東京五輪はコロナに打ち勝った証しよりも、コロナに降伏する直前のコーナーに追い詰められた大会になる可能性がある」と予見していた。

 新聞媒体では政府系の「ハンギョレ」(「東京五輪首都圏競技は無観客開催」)が「五輪競技のほとんどが無観客で開かれる最悪の状況になり、菅義偉首相の政治的打撃も大きいものとみられる。今秋に予定されている衆院解散後の総選挙や首相続投などにも影響を及ぼす」との菅政権に批判的な日本のメディアの分析を紹介していた。

 同じく政府寄りの「京郷新聞」は「無観衆五輪に落胆する日本・・・経済損失を憂慮に『意味ある』の反論も」の見出しの下、「東京五輪が無観客での試合に決まった時、日本政府と東京都の計画は水の泡に帰した。経済的損失や感動のない競技を懸念する落胆の声も出ているが、一部ではコロナ克服に協力するうえで参加することに意味を求める声もある」と、日本国内の雰囲気を伝える一方で「オリンピックを契機に『失われた25年』と呼ばれた1990年以降の長期不況を振り払い、再跳躍の足場にしようとした自民党の青写真は色褪せてしまった」と書いていた。

「オーマイニュース」(「東京五輪、ついに『無観客開催』…五輪史上初」)も「京郷新聞」とスタンスは同じで「日本政府は開会式と閉会式を含めサッカーや野球などの大きなスタジアムでの競技と夜間競技だけを無観客で行う折衷案を出したが、総選挙の前哨戦と称された4日の東京都議会選挙で自民党は目標の過半数に届かず、事実上、惨敗を喫した。結局、有観客に強く反対する民心を確認した菅首相は今秋の総選挙を意識し、無観客開催を受け入れた」と書き、「有観客開催に執着していた菅首相が怒った民心に『白旗』を上げることになった」と伝えていた。

 無観客決定が韓国に及ぼす影響について報じたのは保守紙「東亜日報」と中立紙「国民日報」の2紙を含め何紙かあるが、「東亜日報」(「歓呼も応援もないオリンピック、プレーしたいか」は「125年の五輪史上初の無観客協議に選手らも当惑を隠せないでいる。不参加者も続出するのではとの見方もある。8日に結団式を行った韓国選手団はできるだけ動揺しないようにしている。柔道や野球など日韓戦の主要分水嶺となる種目では日本の観衆から一方的な応援の負担から逃れることができたという肯定的な評価も出ている。国際大会の度に繰り返されてきた日本の観客の旭日旗による応援問題も浮上しないものと思われる」と書いていた。

 また、「東京五輪無観客、思いもよらぬ退出した『旭日旗』」の見出しを掲げた「国民日報」は「東京五輪では旭日旗を場内に持ち込むリスクは無観客の方針で相当解消された。日本の選手による政治的行動や極右団体による場外集会での戦争犯罪象徴の露出可能性は依然として残っているが、少なくとも東京競技場の観客から旭日旗が振られる可能性は消えた。無観客方針はまた、日本と競合する種目での韓国選手の負担も軽減した」と伝えている。

 なお、冒頭の「MBC」もスポーツニュースで「日本の観衆も入場できないことから旭日旗の応援や韓日戦の負担が軽減されるが、今回のオリンピックはこれまで以上に静かで、不便な大会になるとみられている」とアンカーが伝えていた。

(参考資料:「2032年夏季五輪のソウル―平壌誘致」が実現不可能な4つの理由)

ジャーナリスト・コリア・レポート編集長

東京生まれ。明治学院大学英文科卒、新聞記者を経て1982年朝鮮問題専門誌「コリア・レポート」創刊。86年 評論家活動。98年ラジオ「アジアニュース」キャスター。03年 沖縄大学客員教授、海上保安庁政策アドバイザー(~15年3月)を歴任。外国人特派員協会、日本ペンクラブ会員。「もしも南北統一したら」(最新著)をはじめ「表裏の朝鮮半島」「韓国人と上手につきあう法」「韓国経済ハンドブック」「北朝鮮100の新常識」「金正恩の北朝鮮と日本」「世界が一目置く日本人」「大統領を殺す国 韓国」「在日の涙」「北朝鮮と日本人」(アントニオ猪木との共著)「真赤な韓国」(武藤正敏元駐韓日本大使との共著)など著書25冊

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