「美のプロフェッショナル」モデルはおそらくタピオカドリンクを選ばない その理由とは
2019年7月14日付の読売新聞の記事、「タピオカ足りません…電話が殺到・仕入れ値3倍」によれば、タピオカの需要が急激に高まったため、欠品が相次いでおり、2018年春と比べて仕入れ値が3倍にも高まっているという。
タピオカとは、キャッサバという芋のでんぷんを粒状にしたものだ。ゆでて、デザートやドリンクに使われており、10代から20代にかけての若い女性に人気を呼んでいる。
「美のプロフェッショナル」である10代〜20代のモデルたちの美肌の秘訣とは?
若い女性たちの憧れで、カリスマ的存在といえば、モデルだ。
筆者は食品メーカーの広報室長時代、取引先と一緒に「モデル100人調査」を実施したことがある。肌も体型も美しいモデルは、どのような食生活や習慣を身につけているのかを探るのが目的だ。
対象となったのは、10代が多く、20代前半までの女性100名のモデル。
「あなたがモデルとして最も大切にしているのは?」という問いに対しては、「美肌(肌の美しさ)」が最も多い回答だった。
では「肌の美しさを保つために、あなたは何に気をつけていますか?」という問いに対して、答えはどうだったろうか。
実は100人分の回答が集計される前、社内の関係者で答えを予測していた。
おそらく「高い化粧品を使い、エステティックに行っているのだろう」と。
ところが、得られた答えは意外なものだった。
1位は「睡眠」。
2位から5位までも、「ビタミンやミネラルなど栄養バランスに気をつける」「便秘をしない」「朝食をとる」「定期的に運動する」といった、すべて生活習慣に関わるものだった。
これには関係者一同、驚かされた。
なにしろ、世代がほとんど10代から20代前半なのだ。多少、夜更かしをしようが、不摂生をしようが、若さでカバーできる。この年齢なら、何をしていても、ある程度の綺麗さは保つことができる。
しかし、「美のプロフェッショナル」であるモデルたちは、知っているのだ。肌は、外面からではなく、内面からその美しさが作られることを。
質の良い睡眠をとれば、大人であっても成長ホルモンが分泌される。この成長ホルモンは、睡眠中に、荒れた肌を修復したり、不要な老廃物を排出したりする役割を果たす。しかし、眠る前に満腹になってしまうと、この成長ホルモンは働きづらくなる。だから、プロのモデルは、寝る前の3時間程度は食べ物や水を口にしない。
一般女性はモデルたちと真逆のことをしていた
このモデル100名調査をプレスリリースで発表したところ、多くのメディアに取り上げて頂いた。それだけではなく、女子中高生や大学生に指導する立場の教師や教授たちからも「ぜひ、これを使わせてほしい」と依頼を頂いた。
教科書通りの四角四面な食育授業をやっても、彼女たちは聞く耳を持ってくれない。「モデルの美の秘訣」というキーワードなら、きっと聞いてくれるだろう、と、先生方は口々におっしゃった。
非常に評判が良かったので、われわれは第二弾の企画を考えた。
今度は、同じ質問を、モデルではなく、一般女性100名を対象にしてみて、その違いを調べてみよう。
はたして、結果はどうだったか。
日頃から目指しているのは、モデルと同様、「美肌(肌の美しさ)」が1位だった。
そして、そのためにしていることは「高い化粧品を使う」「エステに行く」ことで、この答えは、モデルを上回った。
逆に、生活習慣に関する項目に回答した人は、モデルよりも少なかった。
美肌のために、モデルは「内面からの美を目指し、食生活や睡眠、定期的なお通じや運動など、生活習慣に気をつける」。
一方、美肌のために、一般女性は「外側から手っ取り早く綺麗にしようとする」。
まるで、はかったかのように、真逆の結果となった。
モデルたちは炭水化物を控え、ビタミン・ミネラルや食物繊維を摂っていた
美肌のために実践していることのほかに、モデルが一般人と大きく違う点があった。
モデルたちは、シリアル類を、一般人の食べる回数より4倍も多く摂っていた。
そのシリアル類は、とうもろこしを主原料にして砂糖をまぶしたものよりは、食物繊維を多く摂取することができる、全粒穀物(精製していない穀物、コメなら玄米、小麦なら全粒小麦など)を主原料にしたものが多かった。
炭水化物は必要最小限に摂取し、できる限り、ビタミン・ミネラルや食物繊維を摂れるよう、合理的に食材を選んでいるのだ。
もちろん、極端な炭水化物抜きダイエットなどではない。
あるいは、極端な脂質抜きでもない。脂質は、女性ホルモンの原料でもある、大切な栄養素だ。
ただし、彼女らが気をつけていたのは、空気に触れて酸化した油は、「内側にも外側にも取り入れない」ということ。
揚げてから時間の経った揚げ物を買って食べることはしないし、ファンデーションを塗りっぱなしにもしない。
タピオカはでんぷん、イコール炭水化物
冒頭に書いた通り、タピオカは、キャッサバという芋のでんぷんからできている。炭水化物がメインだ。
管理栄養士の川村郁子氏は「ブームのタピオカ、実は太る。タピオカミルクティーも要注意」(女子SPA!2019年1月26日)という記事で、タピオカの摂り過ぎに気をつけるよう、注意喚起している。
別の記事でも同様のことが書かれており、キャッサバには有毒な成分「シアン化合物」が含まれており、食用にするためには毒抜きの処理が不可欠で、生食の状態で日本に輸入することは禁じられていることにも触れられている。
これは極端な例だが、タピオカドリンクの飲み過ぎでタピオカが腸に詰まり、緊急入院したという事件もあった。消化不良を起こしやすく、しっかり噛まずに飲むと便秘を引き起こす可能性もある、と記事には書かれている。
肌や体型の美しさが食べ物から成ると心得ているモデルはタピオカドリンクを常飲しない
前述の通り、たとえ若さだけでも美しくあることのできる世代のモデルであっても、美のプロフェッショナルを目指すモデルは、合理的に栄養素が摂れるものをしっかりと選んでいた。一時の楽しみや面白さに引きずられないのだ。
タピオカは、炭水化物がメインで、ビタミン・ミネラルなどの微量栄養素が少なく、食物繊維もほとんど含まない。だから、肌や体型の美しさが自らの口にする食べ物からできていると心得ているモデルは、おそらく、毎日のようにタピオカドリンクを常飲することはない。
もちろん、モデルだって修行僧じゃないから、たまにはタピオカドリンクを飲むだろうし、流行りの食べ物や飲み物を試すこともあるだろう。食べたり飲んだりすることは、単に栄養素を摂取するだけではなく、楽しみでもある。
でも、新聞記事で14歳が笑顔で答えているように「毎日飲んでも飽きない」とは、プロを目指しているモデルなら若い子でも言わないだろう。
モデルの中でも、意識の高い人は「咀嚼(噛む)」ということも意識して心がけている。
食のブームに過剰に影響されるのは精神的に幼い人のすること
読売新聞の記事にあるように、日本では、かつてナタデココブームやティラミスブームがあった。ほかにも、挙げればきりがないほど、食のブームは、訪れては去っていった。
ブームが去った後はむなしい。その食品は、とたんに売れなくなる。業者は余剰在庫を抱え、食品ロスが生まれる。
ブームが一時的なことをわかっていて、この時期だけ手を出し、儲けを得て去って行く人たちもいる。
恵方巻きやうなぎやクリスマスケーキで毎年経験しているように、多くの人が一斉に同じものを食べたり飲んだりすることは、食の不均衡を生み出す。自然のバランスを崩してしまう。
「ただ自分が食べたいから」という理由だけで流行りの食べ物に飛びつき、過剰なほどそれに執着するのは、自分のことしか見えていない人がすることだ。
実際、インスタグラム(写真投稿サイト)で「タピオカ」に関する投稿を検索すると、肌補正のプリクラ写真を投稿している10代の女子学生が多く散見される。
自分のことしか見えていない。と同時に、自分の心身の健康が食べ物から作られていることにもあまりに無関心である。
タピオカも元をたどれば生き物
タピオカも、モノのように見えるかもしれないが、元をたどればキャッサバという芋、つまり、生き物だ。
一時的に流行ったからといって、即座に何十倍にも栽培を増やせるものではない。
しばらくはタピオカブームが続くだろう。
でも、食べ物が心身の健康を作っているという意識があれば、いちいち流行りの食べ物に踊らされたりしない。
そして、食べ物は地球の資源や命からいただいている。地球を1つの家だと考えられる、広い視野を持てる人なら、わかっていて、わざわざ自然のバランスを崩すことに加担するような真似はしないはずだ。
参考記事:
タピオカ足りません…電話が殺到・仕入れ値3倍(読売新聞 2019年7月14日)