人の横を列車が走る!大阪名物「赤川鉄橋」まもなく渡り納め
全国でも珍しい「鉄道と歩行者の併用橋」が大阪に存在することをご存知だろうか。鉄道ファンの間では有名なこの橋が今、ちょっとしたブームになっている。長大編成の貨物列車が歩道の真横を駆け抜ける、なかなかスリリングなこの橋に、今回はスポットを当ててみたい。
○線路と歩道が一緒に川を渡る!
大阪市東部を南北に走る、JRおおさか東線。JR西日本として最も新しいこの路線は、片町線放出駅と関西本線久宝寺駅を結び、さらに放出駅から東海道本線新大阪駅〜梅田貨物線北梅田駅(仮称)までの延伸工事が進められている。もともとこの路線は「城東貨物線」という路線で、その名の通り貨物列車が走っていたところに旅客列車を走らせることになった。貨物列車はそれほど本数が多くないため単線でも十分だったのだが、旅客列車を走らせるとなればそういう訳にもいかず、現在営業している放出〜久宝寺間は全線が複線化され、また放出〜新大阪間も2018年度の開業に向けて複線化工事が進められている。
ところでこの城東貨物線の複線化は、路線が建設された当初から予定されており、そのため多くの区間ではあらかじめ必要な用地が確保されていた。同時に、淀川に掛かる橋梁は将来を見越して複線用のトラス橋が架けられ、当面線路を敷く予定のない片側は大阪市が借り受けて歩行者専用橋「赤川仮橋」として供用されることになった。以来「列車と人が共用する橋」として地元の人たちに愛用されてきたのだが、前述の通り城東貨物線の旅客線化に伴い、本来の目的である「複線の鉄道橋」として利用されることになり、2013(平成25)年10月末をもって道路としての役割を終えることになった。
城東貨物線淀川橋梁というこの橋、鉄道ファンや地元の方には「赤川鉄橋」という名で呼ばれている。大阪市旭区・都島区と東淀川区を結び、総延長は約610m。広大な淀川に架かる18連の白いトラス橋は大阪の貨物輸送を支える橋として、またこの付近で唯一淀川を渡る道路橋として、重要な役目を担っている。近年まで道路部分は床版・手すりとも木製で、板の隙間から水面が見えていたのだが、2010年ごろ鉄板が敷かれて通行しやすくなった。とはいえ、手すり部分は木造のままで、橋の雰囲気はそれほど変わっていない。
○週末には大勢のギャラリーが
この橋の特徴は、言うまでもなく歩行者の真横を列車が走る点である。もともと複線の鉄道橋として計画されているため、手を伸ばせば届くような距離(もちろん届きはしないが)を貨物列車が走っていくのだ。その迫力たるや、駅で眺めるのとはケタ違い!貨物列車は1日8往復程度(曜日によって本数が異なり、特に日曜日は少ない)が設定され、最近は市販されている「貨物時刻表」やインターネットの情報を元に、鉄道ファンだけでなく地元の家族連れや写真愛好家たちが、通過時間になると大勢集まってその様子を見守っている。
○生まれたばかりの車両が渡る橋
ところで城東貨物線は、貨物を運ぶ以外にもう一つ重要な役割を担っている。それは「鉄道車両の新車輸送」。片町線徳庵駅近くにある鉄道車両メーカー・近畿車両で製造された車両の一部は、この路線を通り全国へ輸送されている。つまり、普段はこの路線では(どころか関西では)見られないような、例えば九州の特急列車等が通ることもあるのだ。どちらかといえば地味な、貨物列車のみが走る赤川鉄橋も、そんな時は多くの鉄道ファンで賑わい、普段は貨物列車とすれ違っても目もくれない歩行者が「え?なに?」という表情で振り返る。
前述の通り、赤川鉄橋はこの10月末に道路としての役割を終える。鉄橋の上で貨物列車を眺められるのもあとわずか。週末ともなれば多くの人が集まり、写真を撮り、手を振る姿が見られる。赤川鉄橋へは阪急淡路駅から徒歩約15分、もしくは大阪駅から大阪市営バス「井高野車庫前」行きに乗り、東淡路一丁目バス停から徒歩5分ほどと、京阪神からでも手軽に訪れることができるスポットである。日曜日は列車の本数が少ないため、週末であれば土曜日がオススメだ。列車の合間には河川敷でお弁当を食べたり、キャッチボールをしたりと、ちょっとしたピクニックとしてももってこいなので、皆さんも一度訪れてみてはいかがだろうか。なお、狭い橋の上でもあるので写真撮影はくれぐれも安全に、また通行する人の迷惑にならないようにご注意いただきたい。
○赤川鉄橋と合わせてオススメのスポットも
さらに、阪急淡路駅から赤川鉄橋へと至る道沿いには、かつて貨物輸送で活躍したマンモス電気機関車・EH10形が保存されている。残念ながら金網で守られており、中へ入ることはできないが、全国で唯一現存する貴重な車両なので、こちらも要チェックだ。
また、阪急淡路駅近辺も連続立体交差工事が進み、日々その姿を変えている。いずれは現在の淡路駅も、地上区間を行く阪急電車も見られなくなってしまうので、その様子も記録しておいて、五年後・十年後の写真と見比べてみるのも楽しいかもしれない。