「住民税決定通知書」はここを読もう 控除を増やすためのポイント解説と基礎知識
毎年5月から6月に受け取るのが住民税決定通知書。ちゃんと見たことがない人は今年こそ、しっかり確認しよう。なぜなら、節税のヒントや、教育費関連の給付金がもらえるかどうかがわかるからだ。住民税の計算の仕組みはけっこう複雑で、そのため住民税決定通知書を見て理解するには、ある程度の知識が必要だ。最低限知っておきたい住民税の仕組みと、住民税決定通知書を見る際のポイントを紹介しよう。
住民税の仕組み
住民税は、
1、前年(1月1日から12月31日)の収入をもとに計算する
2、収入のある人が、住んでいる自治体に払う(国に払うのは所得税)
3、収入から各種の控除を引いた残りの「課税標準額」に税率をかけて計算する。
4、市区町村に払う市区町村民税と、都道府県に払う都道府県民税がある
5、課税標準額により税額が決まる所得割に加えて、一律の金額の均等割も払う
6、払い方は特別徴収と普通徴収。会社員は特別徴収(給与天引き)、個人事業主などは普通徴収(自分で払う)
ざっと、この6点を押さえた上で、では、住民税決定通知書を見てみよう
通知書に記載の3項目 所得、所得控除、税額
自治体により様式は多少異なるが、住民税決定通知書には、大きく分けて3つの項目がある。「所得」、「所得控除」、「税額」だ。
所得とは?
まずは「所得」。ここには昨年1年間の所得が記載されている。所得とは、収入から、その収入を得るために使った経費を差し引いた金額。会社員なら勤務先から受け取った収入の合計(年収)から、給与所得控除(会社員の見なし経費として収入に応じて国が定めた金額を引ける。実際に経費としてお金を使ったかどうかは関係ない)を引いた給与所得が記載されている。個人事業主なら収入から実際の経費を差し引いた営業等所得。複数の収入があるなら、経費を差引後のそれぞれの所得が記載されている。合計して、総所得(合計所得)を出す。
所得控除とは?
次に「所得控除」。これは、昨年の事情に応じて、それぞれ当てはまるものを引くことができる。例えば、所得が一定額以下の配偶者がいる人は配偶者控除(最高33万円)、所得が一定額以下の扶養親族がいる人は扶養控除(1人につき33万円(ただし19歳から23歳未満の扶養親族は45万円、70歳以上は38万円など))、保険に加入している人は生命保険料控除や地震保険料控除など。これらは会社員の場合、年末調整の際に申告しているから、それが反映されているかを確認。医療費がたくさんかかったなどで確定申告をした人は、確定申告した控除が記載されている。
住民税は、「所得」-「所得控除」=課税標準額(課税所得金額と記載するケースも)、課税標準額×税率=算出所得割額という手順で計算する(まだ計算の続きがある。続きは後ほど説明する)から、所得控除が多いほど、住民税は安くなる。申告できる控除は全部記載されているだろうか。
社会保険料は全額を社会保険料控除にできるし、iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済(小規模企業の経営者や個人事業主のための退職金制度)の掛金も全額を所得控除できる。家族の社会保険料(国民年金保険料など)を払った場合は忘れずに申告し、収支に余裕があるなら、iDeCoや小規模企業共済に加入したり、掛金を増額したりすることで、住民税を減らすことができる(控除が増えれば、住民税のみならず、所得税ももちろん減る)。
税額とは?
では、いよいよ税額だ。まず、所得割額を計算する。先ほど説明した通り住民税は、「所得」-「所得控除」=課税標準額(課税所得金額) 課税標準額×税率=算出所得割額という手順で計算する。税率は、通常、市町村民税6%、都道府県民税4%で、合計10%だ。税額の枠には、それぞれの金額が記載されているはず。
そして、ふるさと納税をしている人は、さらにここから税額控除として引くことができる。また、住宅ローン控除を受けている人で所得税から控除しきれなかった人は住民税からも税額控除として引ける。ふるさと納税や、住宅ローン控除は、控除額がそのまま、節税額になる。
算出所得割額から税額控除を引くと所得割額(差引所得割額)が計算できる。これが所得に応じた住民税の部分。これに一律の均等割5000円(自治体により金額は多少異なる)を足したものが、1年間の住民税額だ。
復習しよう。
・所得-所得控除=課税標準額(課税所得金額)
・課税標準額(課税所得金額)×(6%+4%)=算出所得割額(市町村民税+都道府県民税)
・算出所得割額-税額控除=所得割額(市区町村民税+都道府県民税)
・所得割額+均等割額=年税額
子育て世帯への給付金は住民税で判定
子どもがいる世帯の、保育園の保育料、高校生への就学支援金、私立高校生の給付金の加算、日本学生支援機構による大学生への給付奨学金などは、課税標準額や所得割額が判断の基準になる。一定額以下の場合に給付されるなど、それぞれに決まっている。つまり重要なのは、所得割額と、これを計算するための課税標準額だ。この金額を把握しておきたい。ただし、ふるさと納税や住宅ローン控除を使って実際の納税額を減らしていても、教育費関連の給付では、ふるさと納税や住宅ローン控除等の税額控除前の金額で判断する。
ちなみに、住宅ローン控除は、消費税率10%で新築を購入した場合には控除期間を13年とする特例期間が延長された。2022年の住民税から適用になる。
住民税の納付は6月から
特別徴収の会社員は、住民税額を月割にして6月から来年5月までの毎月、給与から天引きされる税額も記載されている。普通徴収の個人事業主などは、6月以降に一括または4回に分けて納める。
今年の控除を増やせれば来年の住民税が減る
節税の余地はないか、あるなら、来年の住民税を減らすためには、今年行動しなければならない。子どもがいる世帯では、所得割額や課税標準額をもとに保育料の水準や、給付金がもらえるかどうかの目安も確認しておきたい。