Jリーグのタイトル、昇格争い、残留争いに影響。新外国人の合流で大きく変わるクラブ5+(J1編)
Jリーグは序盤戦から中盤戦に差し掛かってきていますが、新型コロナウイルスの影響で来日できなかった新外国人選手たちがようやく入国し、いわゆる”Jリーグバブル”を経て所属クラブに合流しています。
J2・J3編 をアップしましたが、今回はJ1編。タイトル、昇格争い、残留争いに大きな影響を与えそうな変化が期待できる5つのクラブと選手を紹介していきます。
湘南ベルマーレ(ウェリントン、ウェリントン・ジュニオール)
キャプテン石原広教を中心とした3バックが安定し、昨シーズンよりも攻守にベースアップされた戦いができているものの、なかなかゴールが遠い状況が続いています。浮嶋敏監督もチャンスの数、ペナルティエリア内に侵入するかの数などが着実に増えていることに手応えを得ながらも、やはり勝ち切れない課題を強く認識しているようです。
福岡や神戸に在籍したことでも知られるウェリントンは元湘南のFWで、7年前にJ2で圧倒的な強さを見せて優勝した時の主力でした。J復帰戦となった清水との試合では途中出場からチームを救う起死回生のヘディングシュートで、相手のロティーナ監督も「あれはゴラッソだ」と振り返りました。ただ、まだコンディションは6、7割という印象で、ゴールを決める以外の守備やポストプレーで現在の湘南に完全フィットするのはさらに先になりそう。それまでは主にジョーカー的な役割になるかもしれません。
ウェリントン・ジュニオールはより幅広くアタッキングサードを動き回るタイプで、スタイルは横浜F・マリノスのマルコスジュニオールに似たところがあります。湘南が3ー1ー4ー2を採用する場合はウェリントンと少し縦関係の2トップになることが予想されますが、攻撃的な役割であれば中盤も可能でしょう。ただ、29日に合流したばかりなので、公式戦でのお披露目にはもう少しかかりそうです。
横浜F・マリノス(レオ・セアラ)
ここまで10 試合20得点と高い攻撃力を発揮していますが、首位を走る川崎や堅守をベースに勝ち点を積み重ねる名古屋との差を縮めて行くには勝ち点3を取り続けて行く必要があります。レオ・セアラは本格派のストライカーで、日本人のFW陣はもちろん、過去に在籍したエジガル・ジュニオやエリキともまた違った特長を持っています。
「ペナルティエリア付近でうまくパワーを使いながらフィニッシュ」と強みを語るレオ・セアラは2016年に J3だったFC琉球に在籍しており、そこで日本人に良くしてもらったから戻ってきたと語っています。当時から大きく成長したのがパワーで、もちろんブラジルで積んだ経験がマリノスでの挑戦に生きてくると考えているようです。
ルヴァン杯の178cmと長身ではないものの、跳躍力とボールに飛び込む勢いがあり、ティーラトンや水沼宏太などの良質なクロスがこれまで以上に有効になりそうです。
柏レイソル(ドッジ、ペドロ・ハウル、エメルソン・サントス、アンジェロッティ)
新外国人の合流で最も大きく変わりうるのがレイソル。4人ともルヴァン杯の横浜FC戦に先発しており、アンジェロッティとペドロ・ハウルは徳島とのリーグにも途中出場しました。エメルソン・サントスがセンターバック 、ドッジがボランチ、アンジェロッティがシャドー、ペドロ・ハウルが1トップというポジション分けになります。
特に大きなインパクトを与えそうなのがペドロ・ハウルで、ボタフォゴでは本田圭佑と縦のラインを形成していました。192cm・86kgの巨漢で、ボックス内のフィニッシュは迫力満点です。江坂任とのホットラインが期待されますが、長身でテクニカルなボール捌きを見せるアンジェロッティとのコンビも面白そうです。
名門フルミネンセで主力を担ったドッジ、パウメイラスでリベルタドーレス杯を制覇した経験を持つエメルソン・サントスともに、ブラジル人のネルシーニョ監督の元でチーム力を引き上げる存在になるはずです。ただ、外国人枠の関係があるので、チームの象徴的な選手であるクリスティアーノをはじめヒシャルジソン、マテウス・サヴィオ、韓国代表のGKキム・スンギュとけが人がいなければ8人になる陣容をどう使い分けて行くか注目です。
鹿島アントラーズ(ディエゴ・ピトゥカ、アルトゥール・カイキ)
今シーズンの新外国人の中で最大の目玉と言えるのがディエゴ・ピトゥカで、名門サントスで主力中の主力だった選手。実力的にも実績的にも、おそらく現役のセレソン(ブラジル代表)に最も近いタレントでしょう。おそらく欧州主要リーグも含めて引く手数多だったはずですが、ジーコに憧れるMFはJリーグでの挑戦を決断しました。
視野と正確なパスを長所にあげますが、中盤から機を見たアタッキングサードへの攻め上がりは絶品です。ザーゴ前監督にとっても彼が開幕から出られなかったことは大きな誤算だったはず。時計が巻き戻ることはありませんが、チームを助けたいというディエゴ・ピトゥカ。相馬直樹新監督のもと、中盤から強度を高めて、チャンスメイクでも違いを出していけるかが注目されます。
アルトゥール・カイキは左サイドハーフがメインで、カットインからのミドルシュートを武器としますが、シンプルなパスワークやワンツーを用いた突破なども得意としています。彼もザーゴ前監督の時に合流していれば大きな力になったはずですが、あまりエゴを押し出すタイプではないので、相馬監督のもとでも適応力を見せて行く可能性は高いです。
浦和レッズ(キャスパー・ユンカー)
デンマーク出身の長身F Wはノルウェーリーグで25試合27得点と爆発的な決定力を発揮し、ボデ/グリムトのリーグ初制覇に大きく貢献しました。タレント軍団のモルデなど強力なライバルを制して優勝した理由としてユンカーは「監督の手腕が優れていて、チームとしてもまとまっていた」と振り返ります。そのユンカーから見てもリカルド監督が植え付けているスタイルがボデ/グリムトに似ており「自分に合っているサッカー」と語ります。
西野勉TDはあまり結果を焦らず、来シーズン得点王に輝くような活躍を期待しているようですが、ユンカー本人は来日前もハードなトレーニングを積めていたと言い、14日間の隔離期間や公式戦からの間隔が空いたことによるゴールの間隔が戻ってくれば、早期に活躍できるイメージを描いている様子です。
興梠慎三や杉本健勇などFW陣とは「健全な競争をしていきたい」とユンカー。長身ながらスピードがあり、左足のシュートを武器とするストライカーは「大事なところでは必ずペナルティエリアにいる」スタイルで浦和を上位に引き上げることができるか。できるだけ長く浦和でプレーしたい意向も表しており、北欧の選手としてJリーグに新たな金字塔を打ち立てられるか注目です。
そのほか、ここまでリーグ戦で好調のサガン鳥栖にはアフリカ出身のFWチコ・オフォエドゥとイスマエル・ドゥンガが合流。多彩な仕掛けを得意とするチコはすでにルヴァン杯でゴールを決めており、ケニア人ストライカーのドゥンガも幅広いポストワークで存在感を示しており、引いた相手をいかに崩せるかというチームの課題を改善する活躍が期待されます。
開幕ダッシュに成功したヴィッセル神戸も直近のリーグ戦は3引き分けと足踏み状態にあり、攻撃面の迫力を欠く中でエース古橋亨梧の孤軍奮闘が目立ちます。そんな中でケニア出身の快速FWアユブ・マシカが鋭い突破力を加えています。課題は周囲との連携面ですが、試合を追うごとに良くなりそうな気配。さらにブラジル期待の星であるリンコンがいかにゴール前で違いを生み出せるか。
新型コロナウイルスの影響で一時的な活動停止や試合の延期を強いられたガンバ大阪はすでに韓国代表MFチュ・セジョンが中盤の主軸になりつつありますが、なかなか得点力が上がってこない中で、ウェリントン・シウバがサイドからのチャンスメイクに大きなプラスをもたらせるか注目です。横浜F・マリノスのマルコス・ジュニオールと同じ名門フルミネンセの出身ですが、イングランドやスペインでの経験もあり、適応力は高そうです。
昇格シーズンでの奮闘が目立つアビスパ福岡ではナイジェリア出身でカメルーン代表の経験を持つFWジョン・マリがルヴァン杯でゴールを決めるなど、さらなる得点力アップの期待を高めており、欧州での経験が豊富なFC東京のブラジル人DFブルーノ・ウヴィニもルヴァン杯の徳島戦でCKからゴール。リーグ戦でのスタメン出場に大きくアピールしています。
ここまで下位に苦しむ大分トリニータはDFのエンリケ・トレヴィザンとMFペレイラがどれだけチームに良い変化をもたらせるか。戦術的なタスクが多いスタイルなので、早急なフィットは簡単ではないですが、特にペレイラは中盤の強度と崩しの起点という両面で期待されます。
さらにベガルタ仙台のフェリペ・カルドーソ、北海道コンサドーレ札幌のガブリエルなど、活躍次第でチームを上昇気流に乗せるポテンシャルのある新外国人もおり、ここから目が離せません。