2024年のJ2で飛躍したイレブン
J2はレギュラーシーズンが終わり、すでに清水エスパルスと横浜FCが来年のJ1昇格を確定させて、残るは4チームによる昇格プレーオフで決着となりますが、シーズンで飛躍的な活躍を見せた選手を筆者の視点でイレブンに選びました。
なおJ2のベスト11ではないので、昨年から継続的に、チームの中心として活躍を見せた小森飛絢(ジェフ千葉)などは対象外、乾貴士(清水エスパルス)や福森晃斗(横浜FC)など、J1実績が抜群の選手も、リスペクトを込めて外しています。
GKは市川暉記(横浜FC)です。プロ8年目となりますが、J3のガイナーレ鳥取時代も含めて、初めてフルシーズンで正GKを務めて、リーグ最小の27失点という成績を支えました。どっしりと構えながら相手のシュートを見極めて反応するという流れが非常にしっかりしていて、ディフェンスに与える安心感も大きいように見えます。
終盤に昇格のかかった仙台戦と岡山戦で大量失点という苦しい時期はありましたが、ラスト2試合でクリーンシート。チーム状態が良いとは言えない状況で、何とか耐えて自動昇格を勝ち取れたのは、市川の力が大きいでしょう。
ディフェンスは住吉ジェラニレショーン(清水エスパルス)を筆頭に、安藤智哉(大分トリニータ)と田中隼人(V・ファーレン長崎)で構成しました。
住吉に関してはシーズンを通した安定感が評価ポイント。過去2シーズン広島ではリーグ戦の出場が一桁でしたが、清水では期限付き移籍の身ながら、夏場の一時期を除いて常に最終ラインで幅広い守備と1対1での強さを見せ続けました。その奮闘ぶりに、秋葉忠宏監督も残留を決めた栃木戦のフラッシュインタビューで、完全移籍のラブコールを送ったほど。この選手抜きに清水のJ2優勝&自動昇格は語れません。
安藤に関してはチームのパフォーマンスがなかなか安定しない中で、強固な防波堤として相手アタッカーを封じ、危険なボールを跳ね返し続けました。3バックにも4バックにも、柔軟に対応できる選手で、外国人センターバックと組んでも、しっかりと意思表示できるリーダーシップも高評価したいところです。空中戦の強さをもっとセットプレーの攻撃に還元できると良いですが、ポテンシャルはJ1級だと思います。
田中は柏レイソルからの育成形期限付き移籍ですが、早い段階で長崎にフィットして、下平隆宏監督の信頼を得ています。もともと良い時はJ1でも存在感を見せた選手でしたが、シーズン通して4バックの中央を守り抜いたこと、そして左足の展開力という部分でも、安定感が増しているように思います。惜しくも自動昇格は逃しましたが、3位という有利なポジションでのプレーオフで、長崎をJ1に導くことができるか。個人的には日本代表の高井幸大にも匹敵するタレントだと思いますが、ここからのルートが気になるところです。
左右のウイングバックは田中和樹(ジェフ千葉)と新保海鈴(レノファ山口)をチョイス。田中は荒削りな部分があるものの、ハードワークをベースに鋭い仕掛けとクロスのアシスト力を評価しました。J1基準で見ると、まだプレーにムラがあるようには見えますが、さらに飛躍が期待できるタレントです。新保は左サイドバックから果敢な攻め上がりと本職ウイングのようなクオリティで、8アシストを記録。セットプレーの左足キッカーとしても目を見張るものがあります。
ボランチは最も多くの候補がいて悩ましかったですが、インパクトを重視して宇野禅斗(清水エスパルス)とユーリ・ララ(横浜FC)という自動昇格に貢献した二人を選びました。宇野はJ1町田からの夏加入でしたが、昔からいたかのように中盤で素早くフィットし、幅広く攻守を支えました。ユーリ・ララは抜群のボール奪取力と効果的なファーストパスが目に付き、三列目からの得点力でもチームを助けました。
前線は谷村海那(いわきFC)と笠柳翼(V・ファーレン長崎)、そしてマテウス・ジェズス(V・ファーレン長崎)の3人です。谷村は18得点という結果が示す通りですが、ボックス内での無類の強さとチャンスが来れば確実に決め切る能力に関して、得点王の小森にも比肩しうるものを感じさせます。それでいて周りに点を取らせる能力も高く、6アシストを記録していることも見逃せません。
笠柳はディフェンスの予想を上回るファンタスティックなプレーが多く、観ていて楽しいタレントですが、そこに活動量なども伴ってきたことが、主力定着に繋がったように思います。笠柳の同僚であるマテウス・ジェズスはもともとMFの選手ですが、下平監督の意識改革にもあってか、爆発力を発揮するうちに前目のポジションがメインになっていきました。長崎が昇格できるかどうかはプレーオフの結果次第ですが、現在J2に在籍する中で今最もJ1のステージで観てみたい選手の一人です。