Yahoo!ニュース

Jリーグのタイトル、昇格争い、残留争いに影響。新外国人の合流で大きく変わるクラブ5(J2・J3編)

河治良幸スポーツジャーナリスト
アレクセイ コシェレフ/ 写真提供:ジュビロ磐田

Jリーグは序盤戦から中盤戦に差し掛かってきていますが、新型コロナウイルスの影響で来日できなかった新外国人選手たちがようやく入国し、いわゆる”Jリーグバブル”を経て所属クラブに合流しています。

すでに公式戦に出て活躍している選手もいますが、特にタイトル、昇格争い、残留争いに大きな影響を与えそうな変化が期待できる5つのクラブと選手を紹介していきます。

J2

ジュビロ磐田(アレクセイ・コシェレフ、ファビアン・ゴンザレス)

2人の外国時選手が途中合流となったのがジュビロ磐田。ここまで10試合を終えて勝ち点18の4位とまずまずの成績ですが、昇格候補の筆頭にもあげる声も多かったポテンシャルを考えれば、まだまだここからチーム力を引き上げて、新潟をはじめとした上位に食らい付いていく戦いが期待されます。

モルドヴァ国籍のGKアレクセイ・コシェレフは2mの巨漢でありながら機敏性もあり、オランダ1部のフォルトナ・シッタートでゴールマウスを守った経験も軽視できません。磐田には三浦龍輝、八田直樹、杉本大地と高水準のGK陣を擁していますが、コシェレフはかつてのカミンスキーに匹敵する存在感を発揮できる素地はあり、ジュビロの課題となっているゴール前のハイボールやクロスボールの処理を大きく改善する能力を備えています。

コロンビア人FWのファビアン・ゴンザレスは187cmの長身に加えて跳躍力があり、上空から叩きつけるようなヘディングシュートを得意にしています。スピードと1対1の突破力にも自信を持っており、前線にいるだけで怖いストライカーであることは間違いありません。

彼の合流で大きく変わりうるのが前線の並びで、もともと2トップを売りにしていた磐田は今シーズン、開幕から1トップ2シャドーをメインにしてきました。しかし、当初は怪我明けだったルキアンの状態が上がり、小川航基も復調してきているところに”ラッソ”の愛称を持つファビアン・ゴンザレスが加わることで、鈴木政一監督が2トップを再びメインに採用していく可能性が高まっています。

1トップ2シャドーにも当然メリットはありますが、ゴール前の迫力を考えれば、磐田の2トップが復活したらライバルには脅威でしょう。

ジェフユナイテッド市原・千葉(サウダーニャ)

高い位置からのディフェンスと鋭いショートカウンター、さらに後ろからの組み立ても織り交ぜるなど、ユン・ジョンファン監督の1年目だった昨シーズンより着実にベースアップしている印象ですが、ここまで10 試合で勝ち点12の13位と、結果が付いてきていません。

その大きな要因は得点力不足、特に前線の核になるエースストライカーが定まっていない状況です。攻守に精力的な動きで引っ張る大槻周平は頼りになりますが、一発で仕留める破壊力があり、一人で相手のディフェンスを警戒させる存在が不足していたのも事実でしょう。

サウダーニャは「1対1になったら、勇気を持って怖がらずに抜きに行って、相手を外してゴールするのが得意です」と語る通り、ラストパスに合わせるだけでなく、自分で打開して決め切る能力を備えたタレントです。185cmのサイズでターゲットにもなりますが、何より相手にこの選手にボールを持たせたら危険と認識させることで、結果として周囲にスペースをもたらすことができます。

成功の鍵はブラジルには無いJリーグのテンポにどこまで順応できるか。そこがクリアできればゴールを量産して行くことも可能なはずですが、もう1つ期待したいのがブワニカ 啓太や櫻川ソロモンへの刺激です。高いポテンシャルを秘めながら、未だ殻を破れていない彼らがサウダーニャに突き動かされて前線の競争が活性化してくれば、J2にも誇るFW陣になって行くはずです。

ヴァンフォーレ甲府(ウィリアン・リラ、パウロ・バイヤ)

現在勝ち点15で7位。これまで多くの外国人、特にブラジル人選手がこの甲府で飛躍したこともあり、二人の活躍についてもかなり期待値は高いでしょう。ウィリアン・リラはFWのスペシャリストであり、従来通りの3ー4ー2ー1であれば1トップで勝負して行くことになりそうです。

一方のパウロ・バイヤはチャンスメイクとフィニッシュの両方で輝ける万能型のアタッカー。町田に移籍したドゥドゥに大枠で重なる部分はありますが、ボランチもこなすなど、広範囲のプレーに関わっていきながら決定的なシーンに絡むことができるタイプです。

1−0で敗れた琉球戦のように、ある程度ボールが持ててチャンスも作れながら、相手の最終防壁を打ち破るまで行かない傾向がここまでの甲府にはありますが、そこを解決する鍵になりうる二人です。ただ、伊藤彰監督の率いる甲府はJ2の中でも攻守両面に求める強度が高く、フィジカル面がチームのスタンダードに引き上がってくることは最低条件になりそうです。

J3

鹿児島ユナイテッド(ジェルソン、グスタヴォ)

5試合を消化して勝ち8。悪くはない出だしですが、勝ち点13で首位を走るカターレ富山の攻撃力や攻守のバランスが取れている、いわてグルージャ盛岡、FC岐阜といったクラブを上回るにはパンチ力が必要です。

その意味でもJ3では数少ない外国人選手の途中合流がある強みは生かしたいところ。ジェルソンは屈強なセンターバックで、右サイドバックも可能。若い頃はオランダPSVのユースやアトレティコ・マドリーのBチームでプレーしていました。

見た目の通り対人能力の高さが売りですが、ボールを持った時の落ち着きがあり、前にスペースがあれば持ち上がって行くこともできます。Kリーグ(江原FC)の経験もあるので、Jリーグでの早期フィットの助けになるかもしれません。ここまでバックラインの中心的な存在になっているウェズレイと頑強なコンビを結成すればJ3の相手にはかなり手強いですし、セットプレーの得点力アップも期待できます。

一方のグスタヴォは前線の得点力に直結する働きを期待したいタレント。契約は4月5日でしたが、その時点で来日しており、比較的早い合流が可能となりました。クラブが10 番を託す通り、攻撃における多くのシーンで存在感を示し、ゴールをあげられるか注目されます。

基本的には前線に張ってクサビのパスを受けるのが得意で、似たタイプの選手と組めば、少し引いたポジションでボールを受けて、ドリブルで勝負することもでいます。すでにJリーグで活躍している選手に例えるなら、FC東京のディエゴ・オリヴェイラに通じるかもしれません。4ー2ー1ー3の前線で日本人アタッカーたちとどんな攻撃を繰り出して行くのか注目です。

FC今治(バルデマール、オスカル・リントン)

J3に最大級のインパクトを与えるポテンシャルを秘めるのがバルデマールで、すでに前節のY.S.C.C.横浜との試合では途中出場から終盤に同点弾を決めて、チームを救いました。パワープレーで前線に上がっていたDFの園田拓也が右ワイドから折り返すと、混戦でスライディング気味に流し込みました。

アフリカ西部のギニアビサウ出身で、188cm、82kgの巨体ながらがっしりというよりしなやかさも感じさせる選手。前線で貼り続けるよりは動きを持ってゴール前に入って行く方が良さを発揮できそうです。まだ23歳で、今治の地で大きく成長することも期待されますが、開幕ダッシュに失敗したチームが巻き返すにはいきなりの大活躍が求められます。

オスカル・リントンは現役パナマ代表のセンターバックで、185cmながらスピードがあり、左足から幅広いビルドアップを繰り出すことができます。昨年11月の日本代表が欧州遠征した試合でもスタメンで出ており、南野拓実のPKで1得点を許したものの、体をはった粘り強い守備を覚えている人もいるはず。

本来の能力を発揮できればJ3では規格外の存在です。パナマのコスタ・デル・エステから期限付き移籍という形ですが、悲願のJ2昇格を果たせば完全移籍に大きく前進するかもしれません。

スポーツジャーナリスト

タグマのウェブマガジン【サッカーの羅針盤】 https://www.targma.jp/kawaji/ を運営。 『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを製作協力。著書は『ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)『解説者のコトバを知れば サッカーの観かたが解る』(内外出版社)など。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHK『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才脳”」監修。

河治良幸の最近の記事