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『September 12』を思い出せ

山口浩駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授

戦争が始まろうとしている。

米国のオバマ大統領は、シリアでの武力行使への承認を議会に求めた。そうすることによって軍事行動を開始することの責任を「分担」しようとしたのだろう。これは彼自身が戦争にはあまり乗り気でないことを示すものかもしれないが、戦争のリスクが大幅に高まったことに変わりはない。

ホワイトハウスはシリアの化学兵器使用を抑止するための限定的な武力行使を考えているのだろうが、攻撃は報復を生む。シリアが米国にとってもうひとつのイラクないしアフガニスタンにならないという保証はない。

シリア攻撃を支持する方々―日本の方々も含めて―にはぜひ、『Septermber 12』を思い出していただきたい。念のため書いておくが、『September 11』ではない。

Septermber 12』はFlashのオンラインゲームだが、娯楽目的ではなく、いわゆるシリアスゲームだ。Wikipediaでは、「エンターテインメント性のみを目的とせず、教育・医療用途(学習要素、体験、関心度醸成・喚起など)を主目的とするコンピュータゲーム」と定義されている。シリアスゲームは、教育、ヘルスケア、政治、防衛、その他のさまざまな用途で用いられる。

Septermber 12』は、プレイヤーが「テロとの戦いのある側面」を理解することを目的として作られた。2001年9月11日に米国の数カ所を襲ったテロが引き金を引いた「テロとの戦い」は、結果としてさらなるテロ攻撃を生み、さらに多くの人をテロリストに追いやることとなった。『Septermber 12』は、それがなぜ起きたのかを理解させてくれる。知らない人は、ぜひ一度やってみてほしい。やり方は簡単だ。テロリストを狙ってミサイルを撃てばいい。次に何が起きるか。

このゲームの制作者はこう書いている。

あなたは勝つこともできず、そして負けることもできない。

このゲームに終りはない。それはもう始まっている。

もちろん、今のシリアの状況は、当時のイラクやアフガニスタンの状況とはちがうだろう。軍事力がときに、ある状況を打開したり改善したりするために必要であり有効であることも否定しない。しかし確かなことが1つある。戦争を終わらせることは始めることよりもはるかに難しいということだ。多くの長期間にわたる戦争が「限定的な軍事行動」から始まっていることを忘れてはならない。

もちろん、シリアの状況は憂慮すべきものだ。化学兵器の使用は容認できない。しかし、それが「限定的かつ狭い範囲」だからといって、提案されている軍事行動を支持することはできない。それが「限定的かつ狭い範囲」にとどまり続けることは難しいと考えるからである。

駒澤大学グローバル・メディア・スタディーズ学部教授

専門は経営学。研究テーマは「お金・法・情報の技術の新たな融合」。趣味は「おもしろがる」。

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