「しつけ」として行われる体罰虐待は繰り返されエスカレートする:男の子はなぜ衣装ケースで死んだのか
体罰を使い始めると、他のしつけ方法を忘れ、暴力が繰り返されエスカーレートしていきます。その先には、悲劇が待っています。孤独で独りよがりな子育てから脱出し、あの手この手で、みんなで子育てを。
■2歳の男児が閉じ込められ死亡、父親逮捕
逮捕された父親は、「しつけ」と語り、「何回もしている」と供述しています。
■「しつけ」と説明される体罰、虐待
今回の事件の詳細はわかりませんが、これまでの類似の事件でも、親は暴力や虐待をしばしば「しつけ」と語っています。たしかに、主観的には殺意のないことも多いでしょう。少なくともある段階までは、子どもの面倒を見ている親も多いのです。
しかし、小さな子どもは親の思い通りにはなってくれません。それは、当然のことです。ちらかしたり、こぼしたり、禁じられていても触ったり、入ったり。子どもはそういうものです。
親は、善意で、あるいは時には親の都合だけで、子どもをコントロールしようとします。もちろんしつけは必要です。また大人の邪魔をされても困ります。
普通の親は、何とか子どもに言うことを聞かせようとして、あの手この手を使います。こうして、親も少しずつよい方法を学び、子どもも、して良いこと悪いことを学んでいくのです。
■体罰
子どもに言うことを聞かせる方法として、体罰は強力な方法です。殴ったり、縛ったり、閉じ込めたりすることで、とりあえず子どもをコントロールできるでしょう。
しかし、体罰には副作用があります。まず、体罰を加える人とされる人との人間関係が悪くなります。子どもは、恐怖で指示に従いますが、親子関係は悪くなり、子どもの心が不安定になることもあります。
こうなってしまうと、子どもは親がイラつくことをますます行うようになることもあります。
■「何回もしている」
体罰は、強力な方法です。だから、一度体罰という方法を使ってしまうと、また使いたくなります。体罰は、繰り返されます。しつけの方法として体罰ばかりを使うようになると、他の方法を身につけることができなくなります。
親の中には、自分も親からの体罰を受けてきたことで、体罰以外のしつけ方法が最初からわからない人もいます。
体罰は、くりかえされるうちに、エスカレートしていきます。それはもうしつけとは呼ばれず、暴力であり、虐待にもなっていきます。
殴るこぶしに力がはいり、縛るひもの結び方が強くなります。閉じ込めるときなども、最初は安全のための配慮があっても、しだいに無頓着になることもあります。
こうして、これまでも悲劇が生まれてきました。
■あの手この手で、みんなで子育て
犬やサルに芸を教えるときでさえ、愛情が必要だと言います。信頼関係こそが、土台です。ただそのためには、教える側の技術と根気強さが求められます。
人間の子どもは、他の動物以上に、自立するまでに長い時間がかかります。人間の子育ては、とても大変なのです。だから、あの手この手を使って、みんなで協力して子育てをします。
一つだけのしつけ方法に頼り始めたとき、孤独な子育てになってしまっているとき、子育てに危機が訪れています。悲劇が近づいています。
誰も自分の子どもを殺したいと思わないでしょうし、殺人犯にもなりたくないでしょう。そうなる前に、誰かに助けを求めましょう。自分から助けを求められない人には、社会の側からの危機介入が必要です。