アメリカ海軍の戦略原潜と空中指揮機が異例のグアム展開
1月15日にアメリカ海軍のオハイオ級戦略弾道ミサイル原子力潜水艦「ネバダ」がグアムのアプラ港に入港しました。また同日、アメリカ海軍の戦略弾道ミサイル空中指揮統制機「E-6Bマーキュリー」がグアムのアンダーセン航空基地に飛来しています。
E-6Bマーキュリーは戦略原潜に核ミサイル発射命令を出す特別な機体で「Doomsday Plane(世界終末の日の航空機)」とも呼ばれています。
これは異例中の異例の出来事です。オハイオ級戦略原潜がグアムに展開するのは過去に1回あっただけで、今回で2回目です。なぜ異例かというと、本来は戦略原潜は前線に出て来る必要が無いからです。オハイオ級戦略原潜の搭載する潜水艦発射弾道ミサイル「トライデントD5」は射程1万km以上あり、アメリカ本土近海から仮想敵国のロシアと中国を射程圏内に捉えています。戦略原潜は前進せずに防備の厚い自国近海に潜んで敵国を撃つ兵器です。
それではなぜ戦略原潜ネバダはグアムまで出て来たのでしょうか? 過去に戦略原潜が訓練でハワイまで出て来たことは時折ありましたが、グアム進出は非常に珍しいことです。戦術的には必要のない行為です、すると政治的に砲艦外交として見せつける必要があったのでしょうか? では何処の国を対象に?
1月5日から既に4回も弾道ミサイルを発射している北朝鮮への牽制でしょうか。しかしグアムへの入港時期からいって、戦略原潜ネバダの西太平洋展開は1月5日よりも以前に既に計画されていたものである可能性があります。
あるいはロシアが計画している戦略核部隊演習への対抗でしょうか。ウクライナ侵攻と同時にアメリカを牽制する核ミサイル演習をロシアが行う場合に備えたのかもしれません。
それとも中国に対するけん制なのでしょうか。ただし現状、台湾海峡の情勢はそれほど緊迫はしていません。
前回グアムにアメリカ海軍の戦略原潜が寄港したのは、2016年10月30日に展開した戦略原潜「ペンシルバニア」でした。この2016年は1月6日と9月9日に北朝鮮が核実験を行っており、1年間に2回も核実験を行った北朝鮮に対する牽制行為だった可能性があります。
ただし今回の戦略原潜ネバダのグアム寄港については、明確な目的がまだよく分かっていません。
- 戦略原潜(SSBN)・・・潜水艦発射弾道ミサイルを搭載。核攻撃専用。
- 攻撃原潜(SSN)・・・魚雷を主兵装として戦う原子力潜水艦。
- 巡航ミサイル原潜(SSGN)・・・巡航ミサイルを主兵装として搭載。
なおアメリカ海軍の原子力潜水艦は大きく分けて3種類あり、攻撃原潜と巡航ミサイル原潜はグアムに来ますが、戦略原潜は普通は来ません。巡航ミサイル原潜はオハイオ級戦略原潜のうち4隻(オハイオ、ミシガン、フロリダ、ジョージア)を改装したものです。