SMの女王様、毒母、親孝行の娘まで。新たに演じたリモートワークで寂しさが募るOLは恐怖の女?
いったい彼女は、どれだけの顔をもっているのだろうか?
こちらにそう思わせるほど、ここのところさまざまな顔を見せてくれているのが女優の菜 葉 菜だ。
2022年の幕が開けて少しした2月公開の「夕方のおともだち」ではSMの女王様を演じ、続く出演作「ホテル・アイリス」では毒母がちょっと含まれたホテルの女主人、北京冬季オリンピックの期間中に流れたクボタのCMでの父想いの娘役は大きな反響を呼んだ。つい先日まで放送されていたNHK連続ドラマ「つまらない住宅地のすべての家」では物語の鍵を握る脱獄囚を演じていた。
そして、新たな主演映画「ワタシの中の彼女」では、新たな4つのまったく違う顔を見せてくれる。
新たにどんな顔を見せてくれているのか?菜 葉 菜に訊く。(全六回)
言葉のやりとりが想像以上にスリリングな攻防になっている
前回(第二回はこちら)に続き、第一章の「4人のあいだで」の話から。
そこでの話で、撮影方法がかなり特殊で、作品上では、ナナエ、フサエ、コウジが別々の場所でスマホごしに会話を繰り広げる。
ただ、実際の撮影では、同じ公園にいながら各人がちょっと離れたところに位置して、同じ公園で1人ずつ撮っていく形。
共演者がすぐそばにはいる。しかし、出演者は共演者の顔を見ることなく、スマホを通して話しかけるみたいな形でのお芝居だったことが明かされた。
ゆえに、どのような形の作品になるのか、想像がつかなかったと菜 葉 菜は明かす。
「正直なことを言うと、中村監督に失礼になっちゃうんですけど、脚本上でだけだと、おもしろさがつかめなかったんです。
前回、お話した通り、役者はスマホに向かってセリフを語るだけだったりするので、それがどう組み合わせれて、構成されて映像としてみせられるのか、想像できないところがある。
だから、脚本の字面だけだと成立しているか、どうかわからない(笑)。
中村監督と撮影のカメラマンさんは、『ここはこういうふうに見せた方がいいから、こう撮ろう』とか、『ここはこういう切り返しがいいんじゃないか』とか、『ここではここまでみせちゃダメでしょう』とかけっこう綿密に打ち合わせをしていらっしゃったんですけど、わたしはそれがいまひとつ何を意図しているのかわからないで、とにかく求めに応じて演じるだけだったんですけど……。
出来上がって作品を見て、そのとき、中村監督や撮影のカメラマンさんがいろいろ打ち合わせていた意味がわかりました。『なるほど、そういうことだったか』と。
作品の中で徐々に明かされることなので詳細は伏せますが、『そういうこと!』とみてくださった方も気づくところがある。
そうなることはわたしもわかってはいたんですけど、それまでどうみせていったらそう感じてもらえるか、というところまでは分からなかかった。
だから、作品をみて初めて『なるほど、こういうことだったのか』と感じました。
言葉のやりとりが想像以上にスリリングな攻防になっているし、占部さんが演じるフサエがふと会話から抜けるところなどは、ちょっとざわつく感じになる。
演じているときはわからなかったですけど、作品をみて驚かされるところがいっぱいありました」
当たり前にできると思っていたことが、実は当たり前じゃないことに気付いた
いまみると、どこかもう忘れかけているような、コロナ禍が始まった当初の人と人が顔を合わせられない孤独や、極度に行動が制限され不自由な社会の感覚が甦るものになっている。
「そうですね。誰も当時はコロナ禍がこれほど長くなるとは思っていなかった。
でも、中村監督はある意味、察知していたというか。長引いて人の心になにかしらの影響を与えるのではないかということを考えていた。
で、コロナ禍でおそらく多くの人が感じたと思うんです。一緒に飲みに行ったり、ごはんを食べたりということが、お互い元気でもできなくなることがあるんだと。
当たり前にできると思っていたことが、実は当たり前じゃないことに気付いたところがあったと思うんです。
そういうことがこの作品の裏には隠されている。その点も大いに驚かされましたね」
第二章は「ワタシを見ている誰か」は、賛否ある問題作!
第一章の「4人のあいだで」に続く第二章は「ワタシを見ている誰か」。
本章で、菜 葉 菜が演じたのは、リモートワークで人と接触する機会を失った30代後半のOL・メイ。
寂しさを紛わせようと彼女はフードデリバリーを利用するように。
そしてある日、自分は食べられないからと配達員のカズヤに注文した食事を目の前で食べるようお願いする。
以来、何度か同じやりとりが繰り返され、顔見知りとなったメイとカズヤの関係の行方が描かれる。
おそらく今回の四章の中で、一番の問題作にして賛否が分かれるであろう、ちょっと常識からは逸脱した異色のストーリーが展開していく。
「わたしもはじめ、『どういうこと?』というか、『ちょっとこれはありえないのではないか?』と思ったんです。
特に女性は疑問を抱くといいますか。いくら顔見知りになったからといって、あのような形で知り合った人間を自宅にあげるかといったら、あげないと思うんです。
ただ、中村監督から、それこそいかつい感じの人だったら、たぶん危険を感じてあげることはない。ただ、ある意味、恋愛対象外。なんとなく自分の気持ちをわかってくれそうなタイプで、心の隙間にするっと入ってきて、気を許してしまう人っていない?といったようなことを言われて。
確かに自分の心の隙間を埋めてくれるような人っているよなと思って、『なるほどな』と妙に納得させられたんです。自宅に上がらせるかはわからないけど(苦笑)。
だから、このストーリーを見てくださった方はどう受けとめられるのか、すごく興味があります。
純愛のラブストーリーととる人もいるかもしれないし、ホラー映画と受けとめる人もいるかもしれない。
ちなみにわたしはけっこう恐怖映画だと思っているんですよ。
わたしが演じたメイもなんか本心がどこにあるのかわからないところがあって怖いし、好井まさおさんが演じたカズヤもものすごく表面上はいい人ですけど、裏の顔がありそうで怖い(笑)。
みなさんの目にはどうこの物語が映るのか、楽しみです」
(※第四回に続く)
オムニバス映画『ワタシの中の彼女』
監督・脚本 中村真夕
『4人のあいだで』
出演:菜葉菜 占部房子 草野康太
『ワタシを見ている誰か』
出演:菜葉菜 好井まさお
『ゴーストさん』
出演:菜葉菜 浅田美代子
『だましてください、やさしいことばで』
出演:菜葉菜 上村侑
全国順次公開中
公式サイト http://watakano4.com/
最新の劇場公開情報はこちら → https://watakano4.com/#theater
場面写真はすべて(C)T-Artist