初夏から活発になる背中が赤いクモ、意外とあなたの身近に潜んでいることも 注意すべきポイントは?
28年前に日本に侵入した毒グモ「セアカゴケグモ」をご存知でしょうか? 当時は、「猛毒を持っているので、かまれると死ぬことも」と大きく報道され、記憶に残っている方もいらっしゃるかと思います。日本の侵略的外来種ワースト100に指定されている特定外来生物です。
かまれると最初は軽い痛みでも時間とともに強くなってくることが特徴とされています。今回は夏~初秋にかけて被害が多くなるセアカゴケグモについてお話しします。
いつ日本に入ってきたの?
1995年、大阪の湾岸地域で初めて見つかりました。海外からのコンテナなどに付着して入ってきたものと考えられています。当初は、亜熱帯性のクモなので日本の冬は越せないと思われていましたが、セアカゴケグモが多く生息するサウスオーストラリア州の平均気温は大阪市と大差はなく、今は温帯性のクモと考えられていて、日本の冬も越せるようです。
セアカゴケグモの特徴
メスは球体状で、体長約1cm、そんなに大きなクモではありません(足を伸ばすと3cmになります)。全体に黒色で、なります)。全体に黒色で、背中に赤い帯状の模様、お腹側にも砂時計状の赤い模様がある特徴的なクモなので、すぐにセアカゴケグモとわかると思います。
オスは体長4mmと小さく全体に茶色で細い体をしていて、メスのように赤い模様もなく、同じクモには見えません。かむのはメスだけです。
※リンク先にクモの画像が掲載されています。苦手な方は閲覧ご注意ください。写真でご覧になりたい方はこちらから↓
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セアカゴケグモの巣
クモの巣として一般にイメージされるような放射状の平面的な巣ではなく、丸い壺のような形をした立体的で不規則な巣を作ります。地面に近いところに巣を作る傾向があり、巣の糸はかなり粘り気が強く、この巣の中に卵を産みます。巣には落ち葉などが絡んでいることもあります。
卵は袋に包まれていて、クリーム色をした約1cmの球体状で「卵嚢(らんのう)」と呼ばれます。1つの卵嚢の中には数十~200個の卵が入っていて、一生の間に3~8個の卵嚢を産みます。
どこにでもいる身近なクモです
大阪で初めて見つかったセアカゴケグモですが、今では、青森県、秋田県を除く日本全国に広がっています。
セアカゴケグモが生息している場所は、日当たりがよく、暖かく、巣を作ることができる隙間があり、エサとなる昆虫などが多くいるところで、具体的な場所は以下のようなところとなります。
【住宅周辺では】
・側溝の金属製のふた(グレーチング)の裏側
・プランターや植木鉢の持ち手や裏側
・エアコン室外機の隙間
・ブロック塀の隙間
・外置きのサンダルの中
【公園などでは】
・ベンチの裏
・すべり台の裏
・遊具の隙間
・自動販売機の下
かまれる危険性があります
セアカゴケグモの性質はおとなしく、積極的に人間を攻撃してくることはありません。ただ、上記のように人工物を好み、私たちの生活圏に生息しているので、側溝の掃除、プランターの移動、サンダルを履くときなどにクモがいることに気付かず、手や足が触れると、自分の身を守るためにかんできます。
公園などでは、ベンチの裏側に潜んでいることがあり、座って、手をベンチの裏にかけた瞬間かまれることや、子どもさんが遊具で遊んでいるときにかまれるという危険性があります。
また、そんなに起こることはないのですが、干した洗濯物や布団などに付いて一緒
に入ってきたクモに室内でかまれることもあります。
かまれないためには
セアカゴケグモは4~10月頃まで活動していますが、繁殖期である初夏~初秋にかけて、かまれる被害は多くなります。被害を防ぐには、生息場所をきちんと知って、対策をすることが重要です。
例えば、外置きのサンダルを履く際は確認してから履く、プランターの植物の手入れをする時は、厚手の軍手を着用する、布団を取り込むときはクモが付いていないか確認するなどです。
もしかまれたらどうすればいい?
原産地のオーストラリアでも死亡例はまれで、日本ではセアカゴケグモにかまれて亡くなった方はいらっしゃいません。しかし、このクモは微量ですが、強い毒を持っています。
かまれる場所は手や指が多く、赤くなったり腫れたりします。かまれた瞬間より、時間が経つごとに痛みが強くなっていく傾向がありますが、症状には個人差があるようです。
万が一、かまれた時は医療機関の受診をお勧めします。もし可能であれば、かまれたクモの写真を撮影すると何にかまれたかがわかるため、ドクターの診療がスムーズになります。
セアカゴケグモを見つけたら
もし、セアカゴケグモを見つけたら、絶対に触らないでください。クモ専用のスプレー剤、あるいは一般的な害虫用スプレー剤を噴霧することで駆除できます。すぐにスプレー剤が用意できない場合は、靴などで踏みつぶすことでも駆除できます。棒などで突っつくと死んだふりをすることがあるので、死んだと勘違いして触ることは絶対やめてください。
最後に…
セアカゴケグモの名前の由来は、「背中の赤い後家のクモ」です。後家は夫を亡くした女性のことで、交尾後にメスがオスを食べてしまって後家になるからです。オスはかわいそうですが、メスに食べられ、次世代の子孫の栄養分になることで貢献しています。
日本全国に広がっているセアカゴケグモは、日本からいなくなることはもう難しいと言われていて、共存していくしかなさそうです。私たちの住んでいる身近な場所にどこにでもいるクモという認識をして、かまれる危険性を下げていくようにしましょう。小さなクモですが、毒性が強いということを忘れず、見つけた時はスプレー剤などで対処し、生息していると思われる場所では潜んでいることに注意を払ってください。