スキー女王に薬物陽性 「選手に責任はほとんどない」ノルウェー国民の3人1人が擁護
クロスカントリースキーのテレーセ・ヨーハウグ選手が、ドーピング検査で陽性反応を示した件が国内で波紋を広げている。同選手は、今回の件に関しては、「私には一切罪はない。私が無実だと証明するために、これから闘っていく」と記者会見で号泣しながら主張。選手は自身の責任を全否定し、チームドクターが辞任した。
ノルウェースキー界の女王が禁止薬物陽性 「私に一切罪はない」と責任否定し、記者会見で号泣
ドーピング騒動 ノルウェースキー界で何が起きているのか 選手の「私に罪はない」は通用するか
リンダ・カトリーネ・ホフスタ・ヘッレラン文化大臣は、国営放送局の討論番組で、「なぜイタリアの薬局で医師がひとりで薬剤を購入し、セカンド・オピニオンを求めなかったのか」と、過去の騒動から業界が何も学んでいないのかと、いら立ちを見せた。
ヨーハウグ選手は笑顔や元気さが特徴的で、ノルウェー国内でも人気が高く、「国のアイコン」だとされている。VG紙が調査会社に依頼した世論調査によると、35.9%ものノルウェーの人々が、同選手には「責任がない」、「少しだけ責任がある」と回答した。
責任はない 22.3%
少しだけ責任はある 13.6%
責任は半分ほど 17.4%
大きな責任がある/全責任がある 28.8%
わからない17.9%
ヨーハウグ選手に対しての信頼度は下がったか?という問いに対しては、
明らかに下がった 11.4%
下がった 10.2%
変わらない 38.3%
高まった 6.2%
明らかに高まった 21.7%
ノルウェー国民の選手への強い支持はあまり変わっておらず、反対にクロスカントリースキーという業界に対する評価は、58.7%が「この1年間で下がった」と回答。それでも、ノルウェー人個人のクロスカントリースキーというスポーツに対する興味においては、「ネガティブに影響する」と答えた人が32.4%の一方、「影響がない」と答えた人は48.5%だった。
道徳的には責任はないかもしれないが、法的には責任はある
医師からの指示を信頼し、悪気はなかったであろう選手に対して、道徳的には彼女には責任はないとする(信じたい)傾向が国内では強い。道徳的には責任はないかもしれないが、法的には責任はあるだろうと、現地報道は「責任」の表現方法までも区別し始めた。
「ヨーハウグ選手を支えたい」、「彼女自身のせいではないだろう」という風潮は、スキー種目を愛するノルウェー独特の心理的傾向ともいえる。だが、今年だけでクロスカントリースキー選手2人目のドーピング騒動とあり、甘い対応をした場合、国外の競争相手からは大きな批判を受けるだろう。
ノルウェーのスポーツ界における信頼は下がるのではと懸念の声があがる中、国内の選手たちは報道陣へのコメントを避けている。ダーグブラーデ紙では、「我々は彼女を信じる。けれど、テレーセは無実で、責任から解放させてあげようと主張する勇気がある人は、今どれだけいるだろうか?」と問いかける記事も掲載されている。
Photo&Text: Asaki Abumi