おいしいものの話をする時の彼女の表情もまた、魅力的だった。

とにかく嬉しそうに、ニコニコと話す。さすが“スマイル・キャンディ”の愛称で知られる存在だ。

日本料理では寿司、しゃぶしゃぶ、すき焼き、天ぷら…のどくろまで。現役時代も30歳を過ぎてからは焼き鳥や白身の魚と合わせてワインなどを少々嗜むようになった。韓国料理ではちょっと酸っぱい本場のキムチチゲ、スンデ、あとはチャメというフルーツ（マクワウリ）…。

元プロゴルファーのイ・ボミが日本を訪れた。京畿道水原市出身で、07年にプロ転向。その後は2010年の韓国ツアー賞金女王、2015年と16年には日本ツアー女王にも輝いた彼女。2023年シーズンを最後に日本ツアーから引退。6月下旬から現役時代に拠点を置いた日本を久々に訪れている。

先月28日には都内品川のホテルにて「2024 K-FOOD FAIR in Tokyo」のレセプションでのトークショーに出演。現役時代には当然こだわりがあったという「食」、特に「K-FOOD」についてじっくりと語った。アスリートとして日本でも長い時間を過ごした日々、当然のごとく食には強いこだわりがあった。

「去年ね、引退してから時間がたくさんできたんです。父と旅行に行ったり、母や友達とゴルフしたり。あとは主婦の生活をしてますね」

相変わらずの流暢な日本語。引退後は韓国を中心に過ごすなかで、母や友達にゴルフを教えることもあるが「上手くできなくてケンカになったりもする」のだそう。また海外旅行にも行くことがあり、「フランス料理が美味しいな」と感じることもあるのだとか。そんななかでも食に関してはある考えがはっきりと口にした。

「食べ物が好きなんじゃなくて、美味しいものが好き」

特に現役時代は当然のごとく、食を重要視した。そういったなかでも「美味しく食べること」を大切にしてきたのだそう。大会の開始時間が早かったり遅かったりする際には食事が摂りにくかった。その際にはツアー中には常に一緒にいたお母さんが部屋で料理をしてくれたのだという、

「お母さんの得意料理は、タットリタンとテジカルビです。私がしっかりと食べられるよう、考えて作ってくれていたんだなと感じます」

特にツアー中は、ホテルでの宿泊が続き、朝食がどうしても似たメニューになるのが悩みだった。どうしても食が細くなる。すると「おふくろの味」がかなりの助けになったようだ。

いっぽうでイ・ボミはツアー時以外にもやはりスタミナを考えた食べ物を好んで属してきたようだ。

「Kフードだと、私はやっぱりサムゲタンですね。日本だとうな重。韓国だと焼きうなぎが主流なんで、それを食べたりします。韓国ではうなぎに野菜をサンドして食べたりもするんですよ」

こういったなかで、司会者との会話で詳しく掘り下げられたのがサムゲタンだった。

―サムゲタンは鶏をぐつぐつと煮て作るものですけれど、これは薬膳が入っていて、韓国でも人気ですよね。

「それと最後に高麗人参が入りますね。高麗人参を入れないとだめなんですよ…このおかげで本当に13年間、長くプレーできたと思います。本当に風邪を引かなかったという印象もあります」

どちらかというと「良薬口に苦し」という類の高麗人参。これが「美味しいものが好き」と言い切るイ・ボミの口から飛び出した点が印象的だった。よっぽど韓国では存在感のあるものなのだな、と。

イ・ボミはこの後、一般ゴルファーからの悩み相談で「コースに出た時、前半はフック、後半はスライスしてしまう」という内容に対してこう答えていた。

「最初は体力が余ってて、（右利きの場合）右肩に力が入りすぎてフック、後半は足が疲れててスライスするんでしょう。プロは1時間くらいウォーミングアップをしてから試合に出ます。だから前半のホールでいい感じでスタートダッシュできるよう、ストレッチをしっかりすることがおすすめです。後半はのフックは足に疲れが出るのが原因だと想います。理由の一つは、お昼ご飯でお腹がいっぱいになって、体が回らなくなることもあるのでは？」

終始笑顔で語るイ・ボミだった。