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元阪神・玉置隆投手(日本製鉄鹿島)が野球人生の最後に投げた3試合225球

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
※11月2日の2回戦で好救援!23時半という時間でも爽やかな玉置隆投手です。

 『第45回社会人野球日本選手権大会』は今月4日、大阪ガスの初優勝、日本生命の準優勝で幕を閉じました。大阪対決となった決勝に割って入りたかったのが、元阪神タイガース・玉置隆投手兼任コーチ(33)のいる日本製鉄鹿島です。昨年と同じく、あと一歩でチーム初の決勝進出というところで敗退。それでも立派なベスト4だと思います。

 阪神を退団した翌年の2016年、当時の新日鐵住金鹿島へ入った玉置投手は、ここまで4年連続でダブルドーム(東京ドームの都市対抗野球、京セラドームの社会人野球日本選手権)出場に貢献しています。昨年からは兼任コーチとなり「終わる時を考えた」ものの、エース大貫晋一投手がDeNAに入団したこともあって延長。でも、ことしはもう最後のシーズンと言って臨んでいました。

 昨年までは日本選手権への出場が決まる“対象試合”で優勝できなかったため、地区最終予選を勝ち抜いて切符を手にしてきた日本製鉄鹿島ですが、ことしは5月に行われた『JABA東北大会』で見事優勝!都市対抗最終予選の前にもう出場権を得ていました。これは大きかったですね。玉置投手の野球人生の締めくくりが、大阪で行われる日本選手権というのは最高だったでしょう。

 しかも1回戦で先発をして10回まで投げ、準々決勝ではリリーフ登板、最後となった準決勝も先発と、計3試合もマウンドに立つ姿を見られたのですから。では、1回戦からインパクト十分な戦いだった、日本製鉄鹿島の4試合を振り返ります。

【1回戦は12回サヨナラ勝ち!】

 1回戦は大会2日目の10月26日、日本製鉄鹿島(以降は鹿島と表記)は昨年の同大会準決勝で敗れたJFE西日本と対戦しました。先発は玉置投と、日本ハムからドラフト1位指名を受けた河野竜生投手(21)。ちょうどひと回り違いの寅年生まれで、玉置投手は現役を終えることを決めており、河野投手はプロへ進むため、両投手にとって奇しくも最後の大会となったわけです。

10月26日 第2試合 (1回戦)

JFE西日本-日本製鉄鹿島

 JFE西 010 000 000 000 = 1

 鹿島 100 000 000 001x= 2

   ※延長12回タイブレーク

◆バッテリー

 【JFE西】河野(7回1/3)-宮崎(1/3回)-●中川(3回2/3) / 浦-志賀

 【鹿島】玉置(10回)-○能間(2回) / 片葺

◆三塁打 鹿島:福盛

◆二塁打 JFE西:三好、三木

《試合経過》※敬称略

※1回に先制!高畠のタイムリー(上)で、三塁打の福盛が生還(下)。
※1回に先制!高畠のタイムリー(上)で、三塁打の福盛が生還(下)。

 打線は1回、2死から福盛が右中間三塁打を放ち、4番・高畠の中前タイムリー!なんと先頭から4人続けて初球を打ったもので、わずか4球で先制します。ところが2回、玉置は先頭に四球を与え、犠打のあと7番・三木の右翼線二塁打で追いつかれました。とはいえ、ここからが彼の真骨頂! 5回と6回に1安打ずつ許しただけで他はすべて三者凡退で8回まで終了しています。

 ただし鹿島打線の方も2回から0行進で、8回にはヒットや連続四球などで1死一、二塁として河野を交代させましたが追加点なし。9回は玉置が一、三塁と久々のピンチを迎えるも無失点で、その裏の攻撃も三者凡退。延長戦へ突入します。さすがに9回までで113球を投げた玉置は交代だろうと思ったら…出てきました!

 10回は先頭を味方エラーで二塁まで進め、犠打で1死三塁。空振り三振で2死となったあと連続四球を与えてしまいます。ここで中島監督がマウンドへ行ってバッテリーに声をかけると4番・古田は初球で中飛!満塁のピンチをしのいだ玉置に、スタンドから「たまき!たまき!」と大声援です。

※11回からの2イニングを0点に抑えた能間投手。
※11回からの2イニングを0点に抑えた能間投手。

 ついで能間が11回を三者凡退、裏の攻撃も三者凡退。12回は無死一、二塁から始まるタイブレーク(打順は11回からの続きで走者はその前の2人)になり、まずJFE西日本をバント失敗から3人で片づけた能間。そして鹿島は7番・大曽根がバント失敗で1死一、二塁となったものの、続く片葺が左中間へタイムリー!二塁から代走のルーキー・原田が還って3時間36分の試合に決着がつきました。

これが最後、気持ちで勝った!

 殊勲の片葺翔太選手は、体が悲鳴を上げるほど“満身創痍”だと玉置投手から聞きました。なので話を聞けたのは後日ですが、この日の延長12回は自分で決めてやろうと思っていた?との問いに「はい、もう打って勝って、はよ帰りたかった!」という返事。まさに執念のサヨナラタイムリーだったのでしょう。また1対1での延長戦で2イニングを完璧に抑えた能間隆彰投手は、試合後に「いや~よかったです!」と大きく息を吐きました。

※タイブレークの12回裏、サヨナラ打を放った片葺選手。
※タイブレークの12回裏、サヨナラ打を放った片葺選手。

 そして、この日本選手権がラスト登板になるのは周知のことだった玉置投手。その初戦での先発に家族や親戚、同級生、後輩など、今回も和歌山から大勢駆けつけたのは言うまでもありません。「このチームでもっとやりたいという思いが、誰にも負けていなかったですね。気持ちで勝った。最後やと思ってやっていました。負けたら終わりだと」

※サヨナラ勝ち!ベンチを飛び出す鹿島ナイン。
※サヨナラ勝ち!ベンチを飛び出す鹿島ナイン。

 2回に追いつかれた場面は「あそこで自分を戒めることができた。1点取られて“クソッ”ではなく、なぜ取られたのかを冷静に考えて次へ向かえたので、よかったですね」と振り返ります。その言葉通り、以降は「しっかり腕が振れて、上と下のバランスもあってきた。ピンチになれば頼もしいピッチャー陣が来てくれるので、1イニング1イニングという気持ちで投げていました。いつ代わってもいいように出し切ろうと」思っていたそうです。

 9回終了時に中島監督から「いけるか?」と聞かれて「いけます」と即答。もう135キロ以下しか出なくなっていた球速が10回に再び130キロ台後半まで上がりました。「気持ちの乗っているとこだから、ガンガンいってやろうと思って」。ただピンチで繋ぎたくなかったから、イニングは投げ切りたいと考えていたものの「結局は1対1のままで代わったから、試合的に結構しんどい場面でしたけど」とも。頼もしい能間投手がしっかり抑えてくれたわけですね。

「点を取ってくれとは思っていない」

※初戦の先発は玉置投手。ひと回り下の河野投手(日本ハムのドラ1)と投げ合いました。
※初戦の先発は玉置投手。ひと回り下の河野投手(日本ハムのドラ1)と投げ合いました。

 

 ところで10回2死一塁での連続死球はビックリしましたよ。「いや~もう片葺のリード信じて投げました。『当ててもいいから来い。甘く入るくらいなら当てるくらいに』って。あいつ、インコース大好きなんで(笑)」。なるほど、そうだったんですね。試合終了時にウイニングボールをもらっていたでしょう?「記念に、ともらったけど能間が勝ち投手なのであげました。実は片葺がメッチャ欲しがってた」と笑います。だってサヨナラのヒーローですもんね。

※ウイニングボールが玉置投手のもとへ。
※ウイニングボールが玉置投手のもとへ。

 10回表、満塁のピンチをしのいだ時の“たまきコール”に「聞こえていましたよ!あそこがポイントですね。抑えたら流れは来ると思った」とスタンドからの援護にも感謝。まだ勝ち進んでいけば登板も先発もあるでしょうけど「きょうは河野相手でなかなか点を取れないとわかっていたので、これしかないっていうピッチングはできたと思います。みんなに見てもらえてよかった。勝てたのもよかった」と玉置投手。

 「負けたら胴上げするって言われてたんで、それだけは避けたかった」。本当に胴上げをやる気満々だったんですよ、お友だちは。グラウンドにも降りそうな勢いで。勝ってよかったですね。最後に、あと1点をどうしても取れなくてしんどかった?と尋ねたら、玉置投手はこんなふうに答えました。

 「いつも僕は点を取ってくれとは思っていません。野手が頑張っているので助けてあげたいと、それだけを常に考えています」

【2回戦も1点差、能間が完投】

 2回戦は6日後の11月1日で、その間に玉置投手は地元の方々や同級生に会ったり、ここまでの感謝を述べる機会になったようです。だから何が何でも1回戦を突破したかったという気持ち、よくわかりますね。なお2回戦は、対戦相手のJX-ENEOSと相性がいい能間投手の先発でした。

11月1日 第2試合 (2回戦)

JX-ENEOS-日本製鉄鹿島

 ENE 000 010 000 = 1

 鹿島 011 000 00X = 2

◆バッテリー

 【ENEOS】●阿部(3回)-江口(5回) / 小林-柏木

 【鹿島】○能間(9回) / 片葺

 ◆二塁打 鹿島:木村、原田

《試合経過》※敬称略

※2回に先制タイムリー!片葺選手(上)。生還して祝福される二塁打の原田寛樹選手(下)。
※2回に先制タイムリー!片葺選手(上)。生還して祝福される二塁打の原田寛樹選手(下)。
※最後まで1人で投げ切った能間投手(中)を迎え、抱きつく玉置投手(左)。
※最後まで1人で投げ切った能間投手(中)を迎え、抱きつく玉置投手(左)。

 1回戦に続いて先制した鹿島。2回2死から7番・原田が三塁線を破る二塁打を放ち、続く片葺が右前タイムリー!3回には左翼線二塁打した先頭の木村が藤本の二ゴロで三塁へ進むと、4番・高畠の右飛をライトが落球。これで木村が還り、2点目が入っています。

 先発の能間は1回、先頭の田中に左前打を許し、犠打や暴投などで2死三塁とするも、4番・山崎を中飛に打ち取って無失点。2回に四球の走者を出しただけで、4回までほぼ完ぺきに抑えます。5回はヒットと死球で1死一、二塁となり、続く9番・松本の二ゴロを林が二塁へ悪送球。このエラーで1点を返されました。

 なおも1死二、三塁のピンチをしのいだ能間は、6回、7回と三者凡退!8回は1死から四球を与えますが遊ゴロで二塁封殺、さらに守備妨害もあって3人で片づけます。打線は4回から8回までJX-ENEOS2人目の江口から2安打のみ、9三振を喫するなど抑え込まれたものの、9回は能間がクリーンアップをビシッと三者凡退に切って取り、試合終了です。

能間が自責点0の完投勝利

 1点リードを守り切った能間投手に話を聞いています。120球という球数に「そうですか。まだいけましたね」とニッコリ。1失点(自責0)完投勝利でした。それも、わずか2安打。「ヒットは先頭に1本と、点を取られた回に1本ですね」。失点した5回はセカンド・林悠平選手のエラーによるもので「きのう林を飲みにつれて行ったのが失敗でした」と笑います。

1日の2回戦で1失点(自責0)で2勝目を挙げた能間投手。
1日の2回戦で1失点(自責0)で2勝目を挙げた能間投手。

 8回にも危ない場面があり、これはエラーでなく守備妨害。「あれもビックリしましたね。とにかく怪我しなくてよかったです。あれ一塁ランナーが後輩なんで、林に恨みでもあったんですかね。後輩が先輩を削るっていう(笑)」。その一塁ランナーはJX-ENEOS・1番の田中将也選手で東洋大学出身。能間投手の4つ下、林選手の2つ下です。なるほど、削りましたか。

 納得のピッチング?「そうですね。まあ欲を言えば、まだまだありますけど。とりあえず勝てたことが一番よかったですね。次につながるんで。終盤はしっかり、ブキ(片葺)さんのおかげで気持ちよく投げられました」

【準々決勝は4投手で完封リレー】

 準々決勝は11月2日、三菱日立パワーシステムズ(以降はMHPSと表記)との対戦。大会9日目のこの日は4試合開催なので、最後の18時開始予定だった鹿島も、かなり遅れるだろうとは思っていました。しかし第2試合の三菱自動車岡崎と日本通運戦が延長13回までもつれ込み、3時間45分という激闘。よって第4試合の開始が20時27分!終わったのは23時24分です。そのため誰にも話を聞けず、引き揚げました。ご了承ください。

※先発・飯田晴海投手(左)と、好救援だった佐藤僚亮投手(右)。
※先発・飯田晴海投手(左)と、好救援だった佐藤僚亮投手(右)。

 最終電車を気にしながらの観戦になったものの、連休最初の土曜日とあり皆さんは最後まで応援してくださったんですよね。それに応えて完封勝ち!なお前日は途中出場した阪神・江越選手の弟、MHPSの江越海地選手ですが、この日は終盤にベンチで準備する様子を見たけれど出番がなく残念でした。

11月2日 第4試合 (準々決勝)

三菱日立パワーシステムズ-日本製鉄鹿島

 MHPS 000 000 000 = 0

 鹿島 000 000 30X = 3

◆バッテリー

 【MHPS】●浜屋(6回1/3)-本多(1/3回)-伊藤(1回1/3) / 平野

 【鹿島】飯田(4回2/3)-佐藤僚(1/3回)-○伊藤(2回)-玉置(2回) / 片葺

 ◆三塁打 鹿島:藤本

《試合経過》※敬称略

※2イニングを0点に抑えた伊藤投手(左)と、最後に登板した玉置投手(右)。
※2イニングを0点に抑えた伊藤投手(左)と、最後に登板した玉置投手(右)。
※上はスクイズを決めてガッツポーズの大曽根選手。下はタイムリー三塁打の藤本雅也主将。
※上はスクイズを決めてガッツポーズの大曽根選手。下はタイムリー三塁打の藤本雅也主将。

 先発の飯田は1回が1安打、2回は2安打で2死満塁としながら抑え、3回と4回は三者凡退。5回は2死からヒットと四球で交代します。2人目の佐藤僚は四球を与えて満塁とするも無失点!ついで元DeNAの伊藤が登板して、6回は1死から死球で1人出しましたが投ゴロ併殺打、7回は1死から内野安打を許したあと遊ゴロ併殺打。2イニングとも3人で片づけています。

 打線はMHPSの浜屋に対し、3回の片葺と5回の山田による2安打のみで6回まで無得点。しかし7回、林の四球と代打・渡辺の犠打、山田の四球で1死一二塁として浜屋が降板。代わった本多から片葺が初球を打って右前タイムリー!なおも1死一、三塁、続く大曽根が初球でスクイズ!山田を返して2死二塁となり、1番・藤本が左中間へタイムリー三塁打!

 3対0として迎えた8回、マウンドには玉置が上がりました。先頭に中前打されますが、3番と4番から連続三振を奪うなど走者を二塁へ進めず。9回は内野陣の好守備もあって簡単に2死、最後は代打の園田を空振り三振に仕留めて試合終了!4投手の完封リレーで、昨年と同じくベスト4進出を決めました。

【準決勝 玉置が惜別の先発】

 11月3日は準決勝2試合が行われ、第1試合で大阪ガスが三菱自動車岡崎にサヨナラ勝ちで決勝進出。そして第2試合は鹿島と日本生命との対戦で、鹿島は先制した直後に逆転され、4対1で敗れています。前日の準々決勝で最後に投げた玉置投手が、この日は先発でした。

11月3日 第2試合 (準決勝)

日本製鉄鹿島-日本生命

 鹿島 010 000 000 = 1

 日生 020 020 00X = 4

◆バッテリー

 【鹿島】●玉置(4回)-伊藤(1回)-能間(3回) / 坂口-土居

 【日生】○藤井(9回) / 古川

《試合経過》※敬称略

※左が先発の玉置投手。右は5回に登板した元DeNAの伊藤拓郎投手。
※左が先発の玉置投手。右は5回に登板した元DeNAの伊藤拓郎投手。
※6回から投げた能間投手(左)と、2回に先制打を放った山田克志選手(右)。
※6回から投げた能間投手(左)と、2回に先制打を放った山田克志選手(右)。

 これまでの3試合はすべて後攻で、すべて先制してきた鹿島。準決勝は先攻だったものの、しっかり先取点を奪っています。2回に先頭で中前打を放った4番・高畠を林が送って、2死後に7番のルーキー・山田が中前タイムリー!

 しかしその裏、玉置は1死から連打を浴びて一、三塁。続く8番・古川のバントを処理してバックホームしますが、セーフ(野選)。次の犠打で2死二、三塁となり1番・多田の左前タイムリーで勝ち越しを許しました。3回、4回は1安打ずつされながら0点に抑えた玉置。4回6安打2失点で交代です。

 5回は伊藤が登板。先頭に内野安打(サード木村が三塁線の打球を好捕)、続く左前打で一、三塁、犠打のあと5番・皆川の左前タイムリーで2人を還します。これで4対1。6回からは能間が登板してヒットと四球などで走者を出しながら0点に抑えました。しかし打線は日生・藤井の前に3回以降はノーヒット。4回と6回に四球の走者を出しただけで、他は完璧に抑え込まれて終了。

「野球人生の最後に、このチームで一日でも長く」

 玉置投手も体を気遣っていた片葺選手が、この日はついに欠場。球場へ来ず宿舎で静養していたそうです。『12』のユニホームだけベンチ入りしていましたね。どこがというより、もうまさに“満身創痍”だったみたいで。それでも1回戦では延長12回のサヨナラタイムリー、2回戦は先制タイムリーを含む2安打、準々決勝も先制タイムリーを含む2安打の活躍!またマスクをかぶった3試合で、わずか2失点という好リードでした。

※玉置投手は何度もスタンドに笑顔を向けます。来てくれた皆さんに感謝の気持ちで。
※玉置投手は何度もスタンドに笑顔を向けます。来てくれた皆さんに感謝の気持ちで。

 玉置投手は片葺選手と最後に抱き合って締めたかったでしょう。「ここまで導いてくれたのは片葺ですからね。自分で勝ちたかったし、自分で負けたかったはず。勝ち負けに関与できなかったことが悔しかっただろうと思います。いつも体ボロボロで頑張ってくれて、助けてもらっている。弱音を吐かないんですよ、あいつ。感謝の気持ちでいっぱいですね」

これは11月3日の準決勝。スタンドの“たまちゃん応援団”の皆さんも、ちょうど連休で何よりでした。
これは11月3日の準決勝。スタンドの“たまちゃん応援団”の皆さんも、ちょうど連休で何よりでした。

 大会を振り返って「僕自身の野球人生を賭けて臨んだので、この気持ちがあれば優勝できるんじゃないかと思っていました。そして、野球人生を賭けて臨んだから負けてもしかたないと。野球人生の最後に、このチームで一日でも長くみんなと野球をしたかった。だからギリギリまでいられてよかったです」と玉置投手。あと1つで初の決勝というところまで大阪に、京セラドームにいられたわけですね。

 今大会の鹿島は1回戦が2対1、2回戦も2対1、準々決勝は3対0、決勝は1対4というスコア。勝った3試合の失点は合計2点で自責は1です。すごいなあ。「でしょう?4試合のチーム防御率は1点台ですよ。ただしチーム打率も1点台で」。えっ?そ、それは…。計算してみると確かにチーム防御率が1.18で、チーム打率は.180でした。ピッチャーが頑張りましたね。でも本当に毎回、勝っても負けても“しびれる”戦いを見せてもらって感謝しています。

鹿島は最高!たまちゃん応援団も最高!

今も変わらない付き合いという市立和歌山商業野球部のチームメイト。
今も変わらない付き合いという市立和歌山商業野球部のチームメイト。

 試合後、応援に来てくれた皆さんと談笑したり、写真を撮ったり。勝った3試合と何ら変わりない風景でした。ただ、こういう場面はもう最後かなと思ったら寂しさもあって…。そんな中、市立和歌山商業野球部OB軍団は「胴上げするぞ~!」と、今にも駐車場で実行しそうな勢い。真顔で拒否する玉置投手に笑ってしまいました。

 そういえば「5回ぐらいまでは僕の応援してくれているんですけど、それ以降は飲んで騒いでるだけ」と玉置投手が笑う、たまちゃん応援団の皆さん。玉置投手の投げる姿はもう見られませんが、今度は一緒に京セラドームで応援しましょう。だから鹿島の皆さんも必ず来てください!来年は東京五輪のため、社会人日本選手権は7月。楽しみにしています。

玉置投手と奥さんと2人の娘さん。下のお嬢ちゃん(右)は11月3日が1歳のお誕生日でした。
玉置投手と奥さんと2人の娘さん。下のお嬢ちゃん(右)は11月3日が1歳のお誕生日でした。

 なお閉幕後に発表された大会の優秀選手は、日本製鉄鹿島から能間投手(3試合に登板して計14回を投げ2勝、防御率0.00)、玉置投手(3試合に登板して計16回を投げ1敗、防御率1.69)、片葺選手(3試合で8打数5安打3打点、打率.625)の3人が選ばれています。おめでとうございました。

 最後に。玉置投手の野球人生を振り返る記事を改めて書かせていただきます。そこで、本人や周囲の方々のお話をご紹介しますので、お待ちください。

   <掲載写真のうち※印はチーム提供、他は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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