大阪桐蔭8強 次は浦和学院と対戦!
「3回戦の第4試合、一塁側ベンチ」昨年、仙台育英(宮城)に悪夢の逆転サヨナラ負けを喫した状況と全く同じ奇妙な取り合わせに、大阪桐蔭(北大阪)の西谷浩一監督(48)もナインも試合前から嫌な予感がしていた。相手は公立の名門・高岡商(富山)。好左腕・山田龍聖(3年)の活躍で同校初の夏2勝を挙げ、勢いに乗っている。桐蔭が苦手にする左腕でもあり、中川卓也主将(3年)は、「先輩たちはここを乗り越えられなかった。全員で乗り切ろう」とナインを鼓舞して試合に臨んだ。
「未完の大器」横川が先発
先発は今大会初登板の左腕・横川凱(3年)。
190センチの大型左腕で、中学(滋賀・湖北ボーイズ)時代から逸材と言われてきた「未完の大器」だ。昨春センバツの、静岡との2回戦で先発し、初回に6点の援護を受けながら、その裏1死しか取れずKOされていた。「甲子園は悔しい思いしかない。これまでの集大成のつもりで、全部出し切る」とマウンドに向かった。初回は三者凡退と上々の滑り出し。しかし2回、無死2塁からバントを警戒するあまり制球を乱し、無死満塁とされてしまう。1死後、右打者の内角を狙った球が上ずり、押し出し死球という嫌な形で先制を許した。ここでエースナンバーの柿木蓮(3年)が伝令に走る。「焦りがあって、気持ちが先走っていた。あれで落ち着けた」と横川は冷静に後続を断った。
主将の一打で逆転に成功
桐蔭打線は高岡商・山田の速球とスライダーのコンビネーションに、一巡目で早くも5三振を喫して迎えた3回裏。1死から1、2番が出塁し、3番の中川に回す。中川は2ボールからのやや甘い外角直球をとらえると、打球は左中間を切り裂いた。「次の打者に回そうと考えていた」という中川の一打で二者が還り逆転に成功。横川も毎回のように走者を背負いながら、5回を3安打9三振と力投した。「横川が粘って柿木につなぐ。打線が対応できなければしっかり守る」と、西谷監督は6回から柿木にすべてを託した。
6回からは柿木が締める
柿木は期待に応え、高岡商打線を寄せつけない。追加点の欲しい桐蔭は6回、二塁打の根尾昂(3年)を勝負強い山田健太(3年)が返し、2点差をつけて、最終回を迎えた。ここで柿木は先頭打者に安打を許し、2死までこぎつけたところで、中川が内野陣をマウンドに集めた(タイトル写真、正面が中川)。「去年の嫌な雰囲気がちょっとあったので、『二の舞にはならないぞ』と声をかけた」という中川に励まされ、柿木は気合を入れた。1年前の3回戦、試合終了と誰もが思った瞬間、中川は一塁ベースを踏み損ね(失策)、逆転のきっかけを作っていた。柿木は、完封目前で逆転打を浴びた。
「先輩に申し訳ない」と泣き崩れた二人が、マウンドで笑顔を見せ、守備位置に散った。柿木は最後の打者を三振に打ち取ると、グラブをポンと叩いて喜びを爆発させ、中川も拳を握りしめた。ようやく1年越しで、悪夢を振り払った。
準々決勝は強敵!浦和学院
「多くの人に支えられた。春夏連覇をしたら、本当の恩返しができると思う」。中川はインタビュー台できっぱりと言った。この日も3-1という辛勝で、ここまでの3戦、楽な試合はまったくない。3回戦突破と言っても、優勝するために必要な6勝のまだ半分だ。次の準々決勝で待ち受ける浦和学院(南埼玉)は、強力投手陣を擁する。3回戦で速球派の主戦が完封し、初戦で投げた他の3投手も水準以上で、ここまでの2試合無失点だ。桐蔭より1試合少なく、これまで苦戦をしていない分、浦和学院がコンディションにおいては有利とも言える。それでも悪夢から解き放たれた中川は、「自分たちには経験がある。しっかり粘って戦いたい」と、優勝ロードに乗ったことを確信しているようだった。