Yahoo!ニュース

2024年、OpenAIの企業価値1,570億ドル(24.4兆円)トヨタ39兆円に続くレベルの非上場

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:公開データをもとに筆者作成

KNNポール神田です

2024年、生成AIのサービスは驚くべき進化を遂げた。2022年11月30日の約2年前と、世界は大きく変化を遂げた。2023年、ChatGPTは『生成AI』の世界を席巻し、数々のAIライバル企業があとを追う。そして2024年すでに、この数十年もの『ググる』と言われる検索行為が大きく変化を遂げた。そうGoogleの盤石だった広告モデルが大きく変化をもたらしているからだ。それらがわかるのが、このOpenAIへの投資の加熱ぶりだ…。

2024年11月28日、『ソフトバンクG』が傘下の『ビジョンファンド』を通じてOpenAI社内の株式を通じて最大15億ドルを出資。

□「ソフトバンクグループ」は、生成AIの開発を手がけるアメリカの「オープンAI」に対して、最大で15億ドル(約2,200億円)の追加投資をする方針を固めました。
□傘下の投資ファンドを通じて、オープンAIにすでに5億ドルを投資。
□追加投資は、ソフトバンクグループがオープンAIの従業員や元従業員から株式を取得する形で行われ、オープンAIはすでに従業員らに対して売却を認めた。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20241128/k10014652091000.html

今回のOpenAIの資金調達額は、米スライブキャピタルの手動で66億ドルの資金調達(ソフトバンクGは今回の出資の約22%)で66億ドル(1兆円)となった。

さらに、JPモルガン・チェイスなどの主要金融機関からも約40億ドルの借り入れも確保している。

■Microsoftの累計出資額はすでに130億ドル(2兆円)超え、OpenAIの株式の49%を保有 企業価値は1,570億ドル(24.4兆円)

出典:公開データをもとに筆者作成
出典:公開データをもとに筆者作成


OpenAIの出資額による企業価値は1,570億ドルとなった。ドル円156円とすると、24.4兆円となる。日本企業の時価総額と比較すると、日本で首位のトヨタの39兆円に次ぐ企業価値となっている。円安の影響もあるが、2位の三菱UFJフィナンシャル・グループの17兆円、3位のソニーグループの15兆円を完全に抜いてしまっている。
米国企業の時価総額だとランキング50位代のゴールドマン・サックスグループ1,580億ドル、ウォルト・ディズニー1,576億ドル、モルガン・スタンレー1,550億ドルと非上場ながらも肩を並べている構図となる。

一方、華麗なる資金調達とは裏腹に、2024年の売上は36億ドル(5,616億円)である。そして2025年は116億ドル(1.8兆円)の売上とさらに179億ドル(2.7兆円)の資金調達を予定している。

さらに、年間の赤字額は50億ドル(7,800億円)と予測されている。その要因は、Microsoft社からのNVIDEAのGPU A100を35万台を借りており、29万台をChatGPUの処理に向けている。1台1時間あたり1.3ドルのレンタル料だけでも年間40億ドル(6,240億円)となっている。しかし、OpenAIの事業部門の49%の株を持つ、マイクロソフトからの借金がほとんどなので、これはすでに織り込み済みの借金と考えるべきだろう。

しかし、OpenAIは非営利企業が親会社である飯櫃な企業ストラクチャーを持っているので単純なスピンアウトでかたづけられない。
2023年11月のお家騒動の時にもその複雑な構造が、問題をもたらしたのだ。

出典:OpenAIの資料をもとに筆者加工
出典:OpenAIの資料をもとに筆者加工


1.最上位に取締役会がある。

2.取締役会は、非営利団体として、『OpenAI,Inc』が創設された。

3.『OpenAI,Inc』の傘下に『OpenAI nonProfit+従業員持株会+投資家』のホールディングスカンパニーが存在する。

4.そして最後に、営利企業の『OpenAI Global LLC』が存在し、Microsoft社はそこの会社の49%のシェアホルダーとなる。

そう、大きく4段階のレイヤー構造の組織体となっているからだ。

https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/84ad2bab9a4e4a43af592452cdf9806deb70e920

最下層の『OpenAI Global LLC』の資金調達が増えれば増えるほど、上位層の51%のシェアホルダーとの関係は大きく変わる。上位層のシェアが希薄化しているのか、もしくは上位層への投資なのかは非上場なので不明だ。しかし800億ドルの『企業価値』が1,570億ドルとたったの1年間で約2倍になっていることが同社の成長への期待を物語っている。


2025年『上場』と『広告ビジネス』への布石となるのか?

すでに、ChatGPTのウェブトラフィックは、『ググる』行為が変革したように、大きく影響を与えている。世界のトラフィックのうち10位圏内にはいっているのも、いつでも『広告事業』に参入できることを物語っている。『Google』がずっと恐れているのはここだ。
そして、売上よりもサーバー負担コストや研究開発費の高さがありながらも出資企業があとを絶たないのが、成長への期待だ。

しかし、上位レイヤーが、非営利団体なので、単純に上場しての上場益を狙うという側面だけではなく、ソフトバンクGのようにAI産業への覇権において、地政学上の有利なポイントを確保したいという思惑がよく現れている。
『広告ビジネス』も同様に、AI産業全体のアルゴリズムにも、大きな変革を及ぼすことを考えると慎重にならざるを得ない。

年間の赤字額の大半が、大株主のマイクロソフトであることを考慮すると、まだまだ投資のフレーズでさらなる研究開発で、利益の期待よりも一歩でも未来へ向けての投資の段階といえる。

そして、なんといってもGoogleのAI『Gemini』や、他者のAIの追従もすごい。少なくとも、MicrosoftとGoogleの次の覇権をかけた代理戦争としてOpenAIがMicrosoftの代わりに戦っている構図としてとらえてみておくべきではないだろうか?

未来の覇権を巡ってのジャイアントテックのAI戦争は、まだまだ入口にはいったばかりだというのが筆者の見立てである。

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

神田敏晶の最近の記事