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2025年、Appleの折りたたみスマホの可能性は?2,000万台×$2,000で400億ドル市場へ

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:筆者のGoogle Pixel9ProFoldとMacBookAir M1

KNNポール神田です。

まだまだ噂レベルの話だが、『折りたたみiPhone』の話題が出ては消え、消えてはまだ出てくる。

マンネリは終わり。折りたたみiPhone「2000万台スタート」のうわさ
Gadgets 360によれば、いよいよ2025年5月に、折りたたみiPhone初の試作機が製造段階へ進むとのこと。まるでSamsung(サムスン)のGalaxy Z Foldシリーズのような、開くと大画面タブレットになるスタイルの可能性が高いんだとか。 そこから完成度を上げていき、2026年9月にiPhone 18シリーズとともに、一気に1500万~2000万台を初年度に売り上げる体制を整え、初の折りたたみiPhoneがやってくる
https://news.yahoo.co.jp/articles/91921d923f2cca1a92f4e327913a13da5e22153b

技術的にも、市場的にも、まだまだ課題のある『折りたたみスマートフォン』だが高価格帯でもあるが、Appleが参入する可能性を検証してみたい。
少なくとも発売は、2026年9月のiPhone17(2025年9月)の次のiPhone18の世代になりそうだ。

筆者は、BloombergのMark Gurman記者のニュースレター(英文)に非常に注目している。リークというよりも、むしろAppleのPRに近いレベルの精度を持ってリークしていると思う。影の広報マンといってもよいくらいだ…。

彼によると、iPhoneの折りたたみは、さらに2年後の2028年(令和10年)の販売予定だという。まだ2025年になったばかりだから、あと3年も先の話になる…。しかし、製造業の販売とするならば、Apple規模となると、部品調達や製造、アッセンブルに1年近く要するので3年後に販売できれば早いほどといえるが、とはいえ、市場の変化に対応できるのだろうか?

https://www.bloomberg.com/news/newsletters/2024-12-15/apple-working-on-giant-foldable-ipad-revamped-mouse-longer-range-airtag-2

(※英語のみ)

筆者は、Appleの戦略を財務諸表から、折りたたみiPhone Apple Foldの発売の可能性、いや『新カテゴリー』の必要性を感じている。それは、のびざかりの『サービス』事業を補完できる要素が多大だからだ。


■Appleが折りたたみFOLDを販売しなければならない理由

出典:Apple 2024年第4四半期の部門別売上を筆者加工
出典:Apple 2024年第4四半期の部門別売上を筆者加工


2024年、直近の第4四半期の売上を見てみよう。


iPhone部門の微増の売上シェアが直近では5割(462億ドル)を割った。
、iPad部門(69億ドル)が7%の売上で1割を割っていること、中国などでの販売不振という現状があるからだ。むしろ、売上の1/4を支える『サービス部門(249億ドル)』や1割に及ぶ『ウェアラブル部門(90億ドル)』の伸びの可能性に『折りたたみデバイス』は寄与するように感じているからだ。…とはいえ、市場規模のまだまだ小さな『折りたたみデバイス』市場に参入するにはそれなりのAppleが販売する理由が必要だろう。

それでも、折りたたみのフォルダブル市場は、2023年で277億ドルでCAGRは16.9%の伸びがあった。四半期ベースでは、約70億ドルとなり、69億ドルのiPad同等の市場が『折りたたみ』が成長しているといえる。

さらに、2030年(5年後)には740億ドルと予測されている。4半期だと約185億ドルで、5年後には、Appleのウェアラブル部門の市場の2倍の規模となる。この市場をみすみす見逃すとは到底、思えない。


Appleは、現在59万円で『Apple Vision Pro』を販売中でもあり、理想の『折りたたみ』のなんらかのアプローチが見えたので、現在は、試作機から販売のスキームに移ったのだろう。しかし、『AppleCar』を目指した『Project Titan』のような10数年かけても頓挫するという事例もあるので、しばらくは、新カテゴリーの登場には時間がかりそうだ。それでも期が熟した頃の良いタイミングで市場のオセロ返しを狙えるポジションにあるAppleにとっては、焦って中途半端なものを販売するよりは、圧倒的な使い勝手とブランドスイッチさせるような機能をもった製品としてアイデアを織り込んでいることだろう。

■Appleの2024年の報告書から経営課題を抽出してみる

2024年のAppleの四半期売上は949億ドル(14.8兆円@157)

2024年年間売上(2023年10月〜2024年9月)は3,910億ドル(61.3兆円)
時価総額は3.6兆ドル(565.2兆円)だった。

出典:Apple newsroom
出典:Apple newsroom

https://www.apple.com/newsroom/pdfs/fy2024-q4/FY24_Q4_Consolidated_Financial_Statements.pdf

チャート図(上グラフが2023年下グラフが2024)にしてみると、前年対比は、製品プロダクト部門の年間売上は98.9%に減少。しかし、サービス部門は112.8%増加し、年間売上全体としては102%となり、
売上総利益(粗利益)は106.8 %となった。

出典:筆者作成
出典:筆者作成


製品カテゴリー別に前年対比を比較してみる。

出典:Apple newsroom
出典:Apple newsroom


チャート図(上グラフが2023年下グラフが2024)の年間売上から読み取れるのは、2024年のiPhoneの売上は前年から100.2%と微増iPadは前年から94.3%の減少ウェアラブルも92.8%減少。サービスは112.8%の伸びである。

出典:筆者作成
出典:筆者作成


2024年の年間カテゴリー別売上比較

出典:筆者作成
出典:筆者作成


2024年のApplの売上の構成要素は、『iPhone部門』が51.4%と約半分
『サービス部門』が24.6%とほぼ1/4を構成1割を『ウェアラブル他部門』、続いて、『Mac』と『iPad』が1割を割っている
近年の特徴としては、『iPhone』のシェアの減少『サービス』や『ウエアラブル』の部門がおぎなっている傾向がある。製造業であるAppleの強みと弱みを考えると『サービス』部門が1/3の33%台を目指せると理想的だろう。『サービス部門』の拡大は、ハードウェアを使い続け、買い替え時期に左右されないという盤石なサブスクリプションの利益を生み出す。ローカルで保存していても、AppleIDひとつでどのデバイスからでも簡単に使えるという『環境』は年間コストを支払っても見合うサービスとして認識されてきているからだろう。

『折りたたみスマートフォン』は、Appleにとって、『iPhone』と『iPad mini』とのカニバリ製品となりそうだが、それだけでなく、『Mac』も含めたうえでの統合的な環境で、使うユーザー層にあわせたシームレスな利用の環境を考えると、クラウドを中心とした『サービス部門』の売上にも大きく寄与しそうだ。

折りたたみiPhone 初年度2,000万台スタート』と言われても、2,000万台の数がピンとこないの2024年の売上から販売台数を算出してみたい。

概算で最低価格の製品価格で、売上を割ることにより、少なくとも、これ以上は販売されていることがフェルミ推定できる。

そこにAppleFoldとして、2,000万台を勝手ながら、2,000ドル(31万4,000円)としてざっくりと試算してみた。

iPhone $799 iphone16    2億5,179万台
Mac     $999 MacBookAir M2   3,001万台
iPad $499 iPad mini  5,349万台
Wearables $249 Apple Watch SE 1億4,859万台
※AppleFold $2000           2,000万台

出典:筆者 予測推定販売台数
出典:筆者 予測推定販売台数


強引に、2024年の年間部門別 売上に 折りたたみの2,000万台の2,000ドルで加えると、一気に、iPhoneに次ぐ、400億ドルの製品カテゴリーとして誕生するではないか。

AppleでiPhone16Proの価格が$999スタートなので、$1,999でも最高峰の価格のApple製品として2,000万台だして売り切れば、400億ドル製品として、ウェアラブル市場同等が獲得できる、取らぬたぬきの皮算用が成立する。

実際に、中国のファーウェイの世界初の三つ折りの『Meta XT』は約40万円の価格ながら、発表時(2024年9月)だけで400万台の予約が殺到している。つまり、1兆6,000億円の売上が見込めるのだ。@157円換算でも101億ドルの売上となるので、Appleがこの4倍の400億円を『Fold』で売るというのは、あながち検討違いな数字ではないだろう。

同時に、Appleが、低迷で減少し続けている中国市場でもハイエンドモデルの登場は期待できるのではないだろうか?

出典:Appleデータより筆者作成
出典:Appleデータより筆者作成

他にも エリア別販売数データを見ても、2022年から販売数での伸び悩みがうかがえる。

出典:筆者作成 Apple, Canalys, CNBC, Gartner, Strategy Analyticsより
出典:筆者作成 Apple, Canalys, CNBC, Gartner, Strategy Analyticsより

中国では「高性能スマホ」と「プレミアムな折りたたみスマホ」の2本柱で各社が製品展開を進めている。そして「高価格・プレミアムモデル製品」を求める層の間で折りたたみスマートフォンへの需要が高まっている。Counterpoint Researchによると、2024年第1四半期の世界の折りたたみスマートフォンのシェア1位は、ほとんど中国でしか製品を売っていないファーウェイだった。
https://toyokeizai.net/articles/-/788161

敬愛する山根博士が語る、世界の富裕層や中国市場を考えても、Appleが折りたたみスマホを高価格で出したほうが、市場を喚起できるように思えて仕方がない。iPhoneは決して高価格なブランドでないからだ。

差別化要素としての『Apple Intelligence』だが、2025年となり、日本語でも活用できる予定ではあるが、あくまでも完成形ではなく、生まれたばかりのサービスである。

筆者は、Google Pixel9Pro Foldでの『Gemini』を日本語音声で活用しているが、まだまだといった印象だ。Liveの精度も喋り続けるモチベーションを維持するにはまだまだ値しない。
GmailやSpreadsheetなどでもGeminiが、使えるが、こちらも、あまり必要性を感じられない。

しかし、Foldの折りたたみの一番の良さは、PC画面にアクセスできるところにある。まるで、iPad miniを折りたたんでポケットにしまっているといった印象に近い。

iPhoneでできること、Macでできることろを、iPadなどで補完していたが、iPad Proが、もはや、MacBookAirと差別化しにくくなり、iPad miniで完結できそうなシーンでも、iPhoneと2台持ちということが多い。

FoldはこのiPad miniとiPhoneを2台持ちを1台にしたいというニーズには反映できそうだ。2台合わせた価格でも十分に元がとれるような気がする。

きっと、Apple本社のある米クパティーノでは、連日いくらでどのパーツを使い、何千万台出荷して、どれだけの売上を確保し、どのサイクルで投入し、Apple製品とのシナジーをどう提供するのかの議題が巡り、とりまとめが決まり、試作機へと移ったことなのだろう。


■関連資料

出典:Felo.ai
出典:Felo.ai


https://felo.ai/search/H6zzBARzM4B4jGXgQggad8?invite=LZLjwKV3jj15x

2024年 Apple 10K

https://d18rn0p25nwr6d.cloudfront.net/CIK-0000320193/c87043b9-5d89-4717-9f49-c4f9663d0061.pdf


Apple、売上高が過去最高 サービス部門の売り上げも過去最高

https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2411/01/news098.html

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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