世界の武器取引が激増 中国が143%増で世界3位の輸出国
スウェーデンのシンクタンク「ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)」が16日に公表した報告書「世界の武器取引2014」で、2005~09年には世界9位の武器輸出国だった中国が10~14年に前期比143%で世界3位になったことが明らかになった。
上のSIPRIのグラフを見ると、冷戦の終結で激減した通常兵器の取引量が2005年ごろから再び増加に転じていることが一目瞭然だ。10~14年の武器取引は05~09年に比べ、16%も増加した。
中国の軍事的な台頭で、アジア・オセアニアの国々による武器輸入が前期比で37%も増加し、全体の48%(前期は40%)を占めた。輸入国世界トップ10のうちアジア・オセアニアがインド、中国、パキスタン、オーストラリア、韓国、シンガポールの6カ国。
武器輸出国の世界ランキングをみると、(1)米国(世界全体の31%)(2)ロシア27%(3)中国5%の順。米国もロシアも武器輸出をそれぞれ前期比で23%、37%も増やしており、同143%増の中国はドイツ、フランス、英国の欧州主要3カ国を追い抜いた。
中国の輸出先はパキスタン、バングラデシュ、ミャンマーの3カ国で69%を占め、最も多いのはパキスタンで41%。「パキスタンは米国から中国の手に渡った」(南アジアの安全保障専門家)という声もある。
このほか中国はアフリカの18カ国に武器を輸出するなど、ベネズエラを含む世界35カ国が輸出先になっていた。インドネシアには対艦ミサイル数百発、ナイジェリアに無人攻撃機を輸出していた。
日本と外務・防衛閣僚会合を開き、防衛装備品の技術協力や共同開発の協定に署名したフランスの2番目に大きい武器輸出先は中国(フランスの武器輸出全体の14%)。
一方、中国の武器輸入は前期比で42%減、前期の武器輸入国世界1位から3位に後退した。戦闘機や輸送機のエンジン設計・製造が難航しているため、ロシアやウクライナから航空機エンジンの輸入を継続している。
また、中国は英国、フランス、ドイツ製の戦闘機、艦艇、武装車両のエンジンも製造している。日本にとって欧州との防衛協力を強化し、欧州と中国の間にクサビを打ち込むことが自国の安全保障につながる。
武器輸入国の世界ランキングは(1)インド(世界全体の15%)(2)サウジアラビア(同5%)(3)中国(同5%)の順。
イランの核開発、イスラム過激派組織「イスラム国」の台頭など中東の不安定化でサウジアラビアの武器輸入が増えているのが目立つ。
中国の台頭で米国を中心にアジア太平洋諸国の結束が強まっている。中国から武器を輸入する中国勢力圏とウクライナ危機で領土的野心をむき出しにしたロシア、ロシアと米国を天秤にかけながら中国に対抗するインド、米中に対する第三極としての欧州に世界は分断されつつある。
(おわり)