リーグ公式戦再開。初の延長タイブレークを大分B-リングスが制す。【九州アジアリーグ】
4月9日から他団体との交流戦に入っていた九州アジアリーグ(KAL)だったが、ゴールデンウィーク突入とともに、火の国サラマンダーズと大分B-リングスによるリーグ戦が再開された。
4月29日に熊本、5月1日に大分県竹田市で予定されていた試合は残念ながら雨天のため中止。2日から場所を変えての3連戦が実施された。2、3日の大分・別大興業スタジアムでの2連戦はそれぞれ、9対6、6対4で火の国サラマンダーズの勝利。熊本・リブワーク藤崎台球場に場所を変えて行われた4日の試合は延長戦の上、大分B-リングスが勝ち星をもぎ取った。
この初の延長戦は、規定に基づきタイブレーク制で行われた。両軍3回に1点ずつを入れただけで9回では勝負がつかず。延長10回は、1アウト満塁での1番打者からの攻撃でスタートした。先攻のB-リングスはこの日ライト先発で初回にツーベースを放っている山下海星(岐阜協立大)が、ショートゴロゲッツーに倒れ無得点に終わる。一方のサラマンダーズも先頭の高山凌(日本体育大→熊本ゴールデンラークス)が三振、2番の猪口雄大(東海大九州→熊本ゴールデンラークス)がキャッチャーフライでサヨナラのチャンスを逃した。
延長11回は、再び満塁から。前のイニングの最終打者の次の打順の者が打席に入る。B-リングスは、ここまで2打数ノーヒットの2番花岡洋平(大分藤蔭高→大阪06ブルズ)がライト前のタイムリーを放ち、2点をもぎ取る。
そして11回裏。2点を勝ち越したとは言え、1アウト満塁からのスタート、打順もクリンナップからで、外野手の間を打球が抜ければサヨナラが期待できる場面だ。ここで、8回からマウンドに立った新井宏斉(福岡教育大)は、まず、サラマンダーズの3番宇土憲伸郎(創成館高→熊本ゴールデンラークス)から三振を奪い2アウト。続く4番水本大志(熊本ゴールデンラークス)には死球を与え1点差に迫られるが、ここで打席に立ったのが8回に代走で出場していた瀬戸口樹(共栄大→熊本ゴールデンラークス)。新井は、この日初めて打席に立ったこのバッターを落ち着いて3球三振に打ち取り、チームに2勝目をもたらした。
なお、このタイブレークの個人成績も公式記録に算入される。あらかじめ設定された塁上の走者に関しては得点が記録され、打者には打点が記録される。投手成績に関しては、相手側のすべての得点に関しては、マウンド上の投手に失点が記録されるが、あらかじめ塁上にいたランナーに関しては、自責点は記録されない。
2チーム構成のリーグで起こっている「格差問題」
初の延長タイブレークの死闘はB-リングスが執念でもぎ取り、サラマンダーズからの初勝利を飾ったが、ゴールデンウィークの3連戦も結局、サラマンダーズが2勝1敗と勝ち越した。
KALの初年度シーズンの「公式試合」は、2チームによるペナントレースである「公式戦」と他団体との「交流戦」の2本立てだ。個人成績は両者を合わせて算出し、あらかじめスケジュールに組み込まれていなかった「練習試合」は、公式記録としては扱わない。
サラマンダーズはここまでの14試合、まさに連勝街道を進んでいると言っていい。10勝3敗1分で.769という記録的な勝率を残している。公式戦でも6勝1敗とすでにB-リングスに5ゲーム差をつけている。一方のB-リングスは、公式試合通算3勝11敗。勝率は.214という有様だ。
まさに真逆と言っていい両チームの成績だが、ある意味仕方のないことかもしれない。
サラマンダーズの選手の待遇は、独立リーグ界にあって最高レベルであるという。当然、好選手が集まっている。そもそも母体となった社会人実業団チーム、熊本ゴールデンラークスは、都市対抗出場2回を誇るアマチュアトップレベルのチームだった。ここからの選手16人の多くは、学生時代「ドラフト漏れ」し、捲土重来を果たすべく、チームの「プロ化」に応じるかたちで入団してきた者たちだ。まさにドラフト候補生と言っていい。
一方の、B-リングスはゼロから作り上げたチーム。選手の多くは、他の独立リーグを退団した者や、クラブチーム出身者だ。財政的にも決して豊かではなく、選手報酬は独立リーグでも最低レベルである。
その「格差」は、直接の対戦成績だけでなく、他団体との対戦成績にも如実に現れている。琉球ブルーオーシャンズ、四国アイランドリーグplusとの対戦はともに7試合だが、サラマンダーズが4勝2敗1分であるのに対して、B-リングスは2勝5敗である。
今シーズン2球団のみでの出発となったKALでは、両チームの対戦は36試合が組まれている。ペナントレースの興をそぐことがないよう。B-リングスには奮起を期待したいものだ。