台湾、「オールプロ」対決初のアメリカ撃破。その裏でかいま見たお国柄【プレミア12】
舞台を東京に移して日本、台湾、アメリカ、ベネズエラの四強が「世界一」を目指して最終決戦に臨んでいるプレミア12。WBCと比べていかがなものか、という意見も飛び交って入るが、「メジャー以外にも世界にはこんな野球がある」という野球の世界的な広がりを示す貴重な大会であることは間違いない。
実際、今回はベネズエラ代表が初来日し、スタンドには「世界野球」を観戦すべく日本人以外の観戦者の姿も目立った。とくに今や「親日国」の代表として双方の旅行者の行き来も盛んになっている台湾からのファン、デーゲームのスタンドを自国のスタジアムのそれのように変えてしまうほど多くのファンが東京ドームに押し寄せている。
前日に「日米決戦」を侍ジャパンが制した昨日22日、日本に敗れたアメリカは台湾と相まみえた。台湾も初戦のベネズエラ戦を落としているので、決勝に進むためにはともに絶対負けられない一戦である。
このゲームをネット裏で観戦したのが、マーク・ウォーディナーさんファミリーだ。奥さんと小さな子どもを連れて、観戦にやってきたという。聞けば、横浜で活躍したスペンサー・パットンの親戚だと言う。
「僕と彼の妻どうしが姉妹なんだよ。彼がヨコハマでプレーしていたときにも日本に来たからこれで2度目だね」
というウォーディナーさん。普段はデンバー在住で、コロラド・ロッキーズのスタジアムの近所に家があるという。前回は横浜スタジアムで義兄弟の勇姿を見たが、今回は初めての東京ドーム。どっちのスタジアムがいいのか尋ねると、少し考えて、次のような答えが返ってきた。
「うーん、甲乙つけがたいけど、ドームかな」
アメリカでは今や絶滅の危機にある密閉式ドームが物珍しいようだった。
義兄弟のパットン投手は、前日の侍ジャパン戦に続き、今日もリリーフ登板。台湾に1点のリードを許した7回表という勝敗を左右する場面での登板だったが、連投の疲れもあってストレートに前夜のような勢いがなかった。アウトを1つも取ることなく5安打5失点でマウンドを降りる羽目に。子どもをあやすため、ドーム内を一周してネット裏に返ってきたところでの義兄弟の「炎上」にウォーディナーさんも肩をすくめるばかりだった。それでも前日の試合後はパットンとディナーをともにしたウォーディナーさんは久々の日本を満喫しているようだった。
どちらかというと、多分に観光気分(無論試合に入れば本気モード前回ではあるが)が入ったアメリカに対し、台湾はスタンド、ベンチとも「勝つ」ことにこだわっていた。8対2というこの日の結果は、勝つことへの執念の現れだったと言っていいだろう。東京ドームには9000人超の観客が詰めかけていたが、そのほとんどは台湾ファンで、台湾野球が誇る「美人チア軍団」陣取るライトスタンドからの大応援は、ここが台北ドームではないかと錯覚させるほどだった。
これまで台湾は国際大会において、アメリカに対してジュニアレベルでの勝利はあるが、プロレベルで野球の母国を破ったのは、このプレミア12の前身大会にあたるIBAFワールドカップ2003年大会以来のことである。その時は、プロ・アマ混声のチーム台湾が独立リーガーが大半を占めるアメリカ相手に2対1の辛勝し、準々決勝を通過したものの、準決勝で開催国キューバに敗れ、その後の3位決定戦でも社会人ジャパンに敗れメダルを逃している。
マイナーリーガー中心とは言え、21年ぶりにアメリカを下したとあって、試合後は、その台湾メディアで埋まったプレスルームはわきかえっていた。ここ10年ほどはWBCでも予選に回るなど、国際大会での不振が目立った台湾の目標は、オールプロで臨み、阿部慎之介(現巨人監督)、井口資仁(当時ダイエー)など主力をプロの一線級で固めたプロ・アマ混合の日本を今大会の会場にもなっている天母球場での3位決定戦で破った自国開催の2001年IBAFワールドカップの銅メダルを上回ることだ。
(写真は筆者撮影)