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ストレスに強くなる方法とは? 「ストレスワクチン」でストレス耐性をアップしよう!

横山信弘経営コラムニスト
人生の荒波にさらわれないよう、それなりのストレス耐性は誰にでも必要なこと

ストレスに強くない人は極端な反応を示す

私は企業に入り、目標予算を絶対達成させるコンサルティングが仕事です。研修やセミナーの講師やビジネス書の執筆しかしないコンサルタントならともかく、実際に現場に入り込むため、さまざまな「ストレス」の形態に出会います。

たとえば、「来期の目標を今期の1億円から、1.2億円にしましょう。この目標を絶対達成させる戦略、行動計画をこれから考えていきます」と私が発言すると、

「わかりました。今期は未達成で終わりそうで、本当に申し訳ありません。来期こそ絶対達成します」

と答える人と、

「とんでもない! 今期の目標でさえ未達成なのに、1.2倍にしろだなんて、そんな横暴が許されてたまるか。あなたはわが社の業界を知らないからそんなことが言えるんだよ。気が狂ってるとしか言いようがない」

と激しく抵抗する人がいます。当然のことながら、目標が達成できなかったとしても、殺されるわけではありません。社会人として失格だとレッテルを張られるわけでもありません。にもかからず、極端な反応を示す人がいます。

また「目標を絶対達成しよう」と考えながら1年間過ごすのと、「達成できるはずがない」と受け止めて1年間過ごすのとでは、成長度合が異なります。前者も後者も結果的に目標達成度合いが同じであったとしても、過ごした1年の意義はまったく違うものとなるのです。明らかに「絶対達成しよう」と考えながら1年間過ごした人のほうが「ストレス耐性」は高くなり、「達成できるわけがない」として1年間を送った人のほうが「ストレス耐性」は低くなります。

同じ状況下に置かれても、「キツイ」「厳しい」とネガティブに受け止める人と、「上等だ」「やってやろうじゃないの」とポジティブに受け止める人がいます。なぜこのような違いが生まれるのでしょうか? 

ストレスの定義を明確化してコントロールしやすくする

ストレスの定義にはいろいろな種類があり、そのレベルも要因や状況によってかなり異なります。私はストレスを「慢性ストレス」「急性ストレス」の2種類にわけ、それぞれのレベル感を「10段階」と定義すると、ストレスをコントロールしやすくなる、と考えています。

産まれたときから「慢性ストレス」を抱えている、という状況は考えにくいと言えます。したがって「慢性ストレス」というのは、長期間において強いストレスにさらされ、大きくなると普段なら何でもない問題がとてつもなく大きな難題に思えている状態のことと定義します。「急性ストレス」は、まさにその都度やってくるストレスのこと。脳の神経細胞・ニューロンの活動に影響を及ぼす、すべての事柄はストレスです。たとえ「映画『永遠の0』を観て感動する」という楽しい体験にも、「冷蔵庫からビールをとる」というなんでもない動作にもストレスはかかっているのです。その「レベル感」が違うだけ、ということです。

人間が何らかの活動を起こすにはニューロンの発火が必要で、そのたびにニューロンは傷つき、消耗していきます。この修復作業が繰り返されることにより、ストレス耐性がアップすることは覚えておきましょう。感染症を予防するために弱めた病原体でワクチンを打ち、体内に抗体を作ります。それと同じこと。ストレスを受けることによって、ストレスに強くなるということです。

ストレスを10段階のレベルで表現したとします。わかりやすくするため「慢性ストレス」のレベル例を1、5、10のみ書き出してみましょう。

<慢性ストレスのレベル例>

● レベル1 ……ほぼ正常。何事も前向きに受け止められる

● レベル5 ……体が少しだるい。たまに倦怠感を覚える

● レベル10 ……寝ている状態から体を起こすことも困難

次に「急性ストレス」のレベル例を1、5、10のみ書き出してみましょう。

<急性ストレスのレベル例>

● レベル1 ……歩く。物を手でとる。紙を切る、等

● レベル5 ……過去と比較して高い目標、プレッシャーをかけられる、等

● レベル10 ……近親者の死別、天災による家屋の崩壊、等

そして実際に体が受け取るストレスレベルを、「慢性ストレス」×「急性ストレス」のかけ算で数値化できると考えてみます。

「慢性ストレス」が【7】の状態の人が、【5】レベルの「急性ストレス」を受けたときは、【35】のストレスをかけられたと体が感じるでしょう。ですから、「これ以上やってられるか! このままだと会社に殺されてしまう!」という反応を示します。

反対に、「慢性ストレス」が【1】の状態の人が、【5】レベルの「急性ストレス」を受けたときは、せいぜい【5】レベルのストレスとしか受け止めません。なので「やってやろうじゃないの! それぐらい大きな目標を持たないと楽しくないですしね」という反応になります。急性ストレスのレベルが同じ【5】でも、反応が異なるのは「慢性ストレス」の状況レベルが異なるからです。

「慢性ストレス」がハイレベルにある人は、なんでもない問題でさえ難題だと受け止めます。したがって、ちょっとしたストレスでも、かなり極端な反応を示します。ネット炎上を引き起こす「ラジカル・フィードバック」は娯楽なのか?に書いたとおり、物事を「1」か「ゼロ」か、「白」か「黒」かの、「二元論者」に近づいていってしまうのです。

ひどい場合は、1か2程度の「急性ストレス」しか受け止められなくなり、事実上、生活や仕事が困難になっていきます。家から外へ出ることも、食事をすることさえも「キツイ」「厳しい」という生理的な反応を示します。

ストレス耐性は、生まれながらにしてその度合いは異なるものです。すべての人が同じではありません。しかし、幼いころから1や2レベルの「急性ストレス」でさえ対応困難だ、という人は極めて稀です。小さなストレスをかけていくことによって、ストレスに耐え得る抗体を作っていくわけですから、ちょっとしたストレスに臆病になっていては、耐性がドンドン落ちていきます。

「キラキラワード」記事に肯定的な人と否定的な人

昨年の12月に書いたコラム「キラキラワード」が日本をダメにするは、たった2日間で160万以上のアクセスを記録しました。「いいね!」も1万に近づいており、「無理をしないほうがいい」「頑張らないほうがいい」といった綺麗ごとにウンザリしている人が多数いることを窺い知るよいきっかけとなりました。いっぽうで、「この内容には賛成しかねる」というネガティブなコメントも多数寄せられています。

確かに、「慢性ストレス」がハイレベルにある人に、「無理をしろ」「限界に挑戦しろ」と呼びかけるのは残酷です。その人の受け止めるストレスレベルが極大化してしまうからです。しかし、ストレス耐性がそれほど低くない人たち――それこそ多くの「将来性のある若者たち」にまでも「ラクして儲けたい」「頑張らなくてもいい」という発想を植え付けると、日本はどうなっていくのでしょうか。それこそ国全体のストレス耐性が落ちていくことになりかねません。

目の前のやるべきことをキッチリやって、最低限の目標・目的は達成しようという主張でさえ強いストレス、と感じられる人が多くなると「現状維持」も難しくなります。安定した生活、安定した仕事に就けなくなります。

人間の体、脳は何万年も基本的な部分は進化していません。ライオンやクマといった危険な動物に遭遇したときに分泌される神経伝達物質ノルアドレナリン等は、今もすべての人間の脳にあるのです。しかし、今や「闘争・逃走本能」を呼び起こす脳内物質は、ほとんど必要のない時代です。しかし、これらの神経伝達物質が、「慢性ストレス」がハイレベルにあると過剰分泌してしまうため、

「来年の目標を去年の1.2倍にしてみないか」

と言われただけで、まるで「ホオジロザメ」のような危険生物に遭遇したかのように、

「このままだと会社に殺される!」

という極端な反応を示してしまうのです。

ストレスワクチンを意識しよう

高度情報化時代になり、「テキストデータ」がネット上にあふれています。私は営業・マーケティングのコンサルタントですから、「誰でも、簡単に、短時間で、ベネフィットが享受できる」というキャッチコピーが集客や関心を引き寄せることを知っています。人の射幸心に火をつけるからです。ですから「キラキラワード」が蔓延するのも無理ありません。

しかし、そういった「キラキラワード」を目にしても、過去に、体験を通じてしか得られない知識を豊かに持っている人は、「そんなことあるわけがない」「それなりに苦労しないと何事もうまくはいかない」と理解します。寒い日に、ずっと暖房のきいた室内に閉じこもってばかりいると、体のストレス耐性はアップしていきません。たまに15分でも30分でも外へ出て散歩したり、体を動かすことによって体は鍛えられていきます。体も脳も同じ、ストレスをかけ、意図的に修復させることで、回復能力を身に着けていくものです。人間は本来、目の前に困難なことがあればあるほど乗り越えようと努力し、そして成長し、幸福感を覚えるのです。

ストレスを乗り越えた記憶が、人生を豊かにする「知恵」に転化していくわけですから、過大な「慢性ストレス」を背負わないよう、小さなストレスワクチンを打ち続けるようにしたいですね。人生の荒波にさらわれないようにするには、それなりのストレス耐性は誰にでも必要なことですから。

経営コラムニスト

企業の現場に入り、目標を「絶対達成」させるコンサルタント。最低でも目標を達成させる「予材管理」の理論を体系的に整理し、仕組みを構築した考案者として知られる。12年間で1000回以上の関連セミナーや講演、書籍やコラムを通じ「予材管理」の普及に力を注いできた。NTTドコモ、ソフトバンク、サントリーなどの大企業から中小企業にいたるまで、200社以上を支援した実績を持つ。最大のメディアは「メルマガ草創花伝」。4万人超の企業経営者、管理者が購読する。「絶対達成マインドのつくり方」「絶対達成バイブル」など「絶対達成」シリーズの著者であり、著書の多くは、中国、韓国、台湾で翻訳版が発売されている。

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