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実写版『人狼ゲーム』シリーズ新作でヒロインの桃果  「人の悪いところを見てもすぐ嫌いにはなれません」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会

定番の騙し合いゲームにリアルに命を賭けて挑まされて……。実写版『人狼ゲーム』シリーズ第8弾となる映画『デスゲームの運営人』が公開される。過去作では土屋太鳳、桜庭ななみ、武田玲奈らが若手時代に主演。今回は20歳の新鋭・桃果がヒロインを務めた。生きるか死ぬかの極限状態に凛々しさを漂わせ、女優として大きなステップアップになったようだ。

ウソが苦手で遊びの人狼ゲームはすぐ負けます(笑)

――現在はショートカットの桃果さんですが、『人狼ゲーム デスゲームの運営人』ではロングでポニーテールでした。

桃果  1年くらいロングだったので、そろそろ切ってもいいかなって、ショートにしました。ロングのときはポニーテールが人気で、男の子も女の子も「好き」と言ってくれました。

――小学生のときに『ニコ☆プチ』でモデルデビューしてから、女優のほうにシフトしてきたんですよね?

アデッソ提供
アデッソ提供

桃果  スカウトされて事務所に入って、『ニコ☆プチ』の専属に選んでいただきました。でも、小さい頃からドラマが大好きで、いっぱい観ていたんです。せっかく芸能界にいるならお芝居をやりたいと思って、小6くらいから演技の勉強を始めて、だんだんそっちのお仕事をいただけるようになった感じです。

――どんなドラマを観てきたんですか?

桃果  本当に小さい頃だと、昼間にやっていた『がきんちょ~リターン・キッズ~』とか、香里奈さんが障害を持ちながら子どもを育てる『だいすき!!』とか、ママ友のドロドロの『名前をなくした女神』とか。

――大人なドラマも観ていたんですね(笑)。

桃果  恋愛モノだと『ブザー・ビート』が好きでした。あとは、病院モノから何から幅広く観ていました。

――今回の映画のモチーフの人狼ゲームは、普通にやってました?

桃果  好きでした。学校でずーっとやってました。

――強かったんですか?

桃果  めちゃくちゃ弱いです(笑)。周りが強いと黙って何も言わないようにするんですけど、ちょっとしゃべったら何かハズすというか……。たとえば自分が人狼のとき、「あなたは人狼ですか? 村人ですか?」と聞かれて「人間です」と言っちゃって疑われたり、いつも最初に殺されます(笑)。ウソが苦手で、頭が回らなくて。

生死が懸かる中で人をどう励ましたらいいのか

『人狼ゲーム デスゲームの運営人』はシリーズの原作小説の作者・川上亮が、自ら監督を務めた。富裕層の非合法な賭博の対象としての生死を賭けた人狼ゲームで、運営側にも初めてフォーカスが当てられている。拉致などで集められた参加者の1人・夏目柚月(桃果)は、運営人の1人・正宗(小越勇輝)が家庭教師をしていた女子高生だった。正宗は他の運営人に気づかれずに柚月を勝たせようと力を尽くす。

――今回演じた柚月は、命が懸かった人狼ゲームの中でも、わりと冷静でしたね。

桃果  柚月は頭の回転が速くて、どんな状況でも人を思いやれて、周りを励まそうとするやさしい子です。

――桃果さんと通じるところもありました?

桃果  人の悪いところを見ても「きっと良いところもあるから」って、すぐ嫌いにはならないような性格は似てると思いました。同じ人間だし、自分だって良いところも悪いところもありますから。

――大人ですね。柚月に「後ろを向くのはやめよう。運命だと思って頑張ろう」という台詞がありました。桃果さんにもそういう心持ちはありますか?

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会

桃果  私はすぐ落ち込むけど、励ましてもらったら「わかった!」って、すぐ元気になるタイプです(笑)。友だちが落ち込んでいたら、自分を励ますときの言葉を掛けたりもします。でも、拉致されて人狼ゲームをやっている状況で、柚月みたいに人を励ますことはできないと思います。そこまでメンタルが強くはないので。

――普通は自分が生き残ることで精いっぱいになりますよね。

桃果  だから、撮影初日は柚月を捉え切れませんでした。こういうゲームをしていたら、みんな怖いし、「勝たないと」って気持ちで演じていましたけど、川上監督に「もうちょっと明るく、みんなを励ましてください」と言われて。「この状況で、どうやって励ますんだろう? 自分だけ元気でもおかしいし……」と悩みました。でも、監督とたくさん話して、柚月がどんな子かわかってきて、2日目からは「良くなった」と言ってもらえました。

――1日で掴めたんですね。

桃果  自分が柚月と似ている部分もあったから、2日目以降はそこまで悩まず、すんなりできました。

――この『人狼ゲーム』シリーズでは、劇中のゲームが行われている施設に実際に泊まり込んで撮影するのが、恒例だそうですね。

桃果  撮影場所と泊まる場所が同じでした。そこで寝起きするから、最初は「気持ちはずっと暗いままかな?」と思っていたんです。でも、共演者さんたちが元気で面白い方が多かったので、演技に入れば集中しながら、合間の時間はワチャワチャして笑いがあって。ずっと暗かったわけではないです。

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会

泣かないシーンを撮ってから涙が出たりしました

――とはいえ、演じていてキツかったシーンも多かったのでは?

桃果  そうですね。仲良くなった子が死んじゃったり……。泣かないことになっているシーンや恨む気持ちを持つシーンでも辛くなって、カットがかかってから涙が出たりもしました。

――桃果さん自身は普段、泣くことはあります?

桃果  高校生の頃は落ち込んだら泣いて発散するタイプでしたけど、最近は全然泣かなくなりました。演技でも今までは、泣かない場面で泣きそうになることはなかったんです。今回はやっぱり、泊まっていた場所と撮影場所が同じだったから、役にも物語にも入りやすかったと思います。

――誰が人狼か投票するシーンも?

桃果  その現場に入って円になって座ると、自然に心臓がドキドキしました。

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会

――最初に参加者が死ぬのを目の当たりにしたとき、直立して指先まで固まったようなリアクションもリアルでした。

桃果  あそこはあの役の方の死ぬ演技がすごく上手かったんですよ(笑)。リアルに体が硬直する感じで、「エッ? ホントに死んじゃった!?」と思いました。

――実際には「死ぬかもしれない」みたいな極限の状況は経験ないですよね?

桃果  人間はいつ死ぬかわからないとは思っていて、たとえば誰かとケンカしたとき、「明日死んじゃったら悲しい」と考えて、すぐ仲直りしたりはします。でも、本気で「死ぬんじゃないか?」と思ったことはないですね。

――柚月の台詞にあった「本当は怖くて仕方ない」みたいな気持ちになったことは?

桃果  東北の大震災のときは東京もすごく揺れたので、本当に怖かったし、その後でちょっとトラウマみたいになって。少し揺れただけで「もうイヤだ……」となる時期はありました。

――あと、柚月は「(ゲームに勝って)1億円もらえるなら賭けてみようというのは理解できるかも」と言ってました。そこは桃果さん的には?

桃果  勝ったら1億円もらえるとしても、負けたら死ぬなんて賭けは、私は絶対無理です(笑)。

――1億円が手に入ったとしたら、何に使いますか?

桃果  ひとり暮らし用のおうちを買いたいです。大きいマンションで、ベッドもキッチンも大きいといいですね。でも、大きすぎても掃除が大変だし、ひとりだと寂しいし(笑)、ある程度の大きさでいいです。あとは好きなお洋服を買ったり、家族にも車とか買ってあげたり。お芝居をするうえで、いろいろな経験をしておいたほうがいいので、ライセンスもいっぱい取りたいです。スキューバダイビングとか乗馬とか英会話とか……。

――今持ってるライセンスはありますか?

桃果  自動車の免許しか持ってません(笑)。

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
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怖い映画になると思ったら人間愛に感動しました

――完成した『デスゲームの運営人』を観て、どんなことを感じました?

桃果  今までの『人狼ゲーム』シリーズは怖かった印象があって、今回も撮影中は怖い気持ちが強かったんです。でも、完成して観たら、参加者も運営側も1人1人にいろいろな想いがあって、人間愛みたいなものに感動したんです。怖いより「いい話だ!」と思ったのが、自分でビックリしました。だから、今までのシリーズとは違う感じかもしれません。

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
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――今までのシリーズも観たんですか?

桃果  全部観ました。どれも内容がちょっと違って面白かったんですけど、『ビーストサイド』の土屋太鳳さんは演技というより本気じゃないかと思うほどで、他の出演者さんたちも上手だったので、めちゃくちゃ怖かったです。

――このシリーズでは、土屋太鳳さんの他に桜庭ななみさん、武田玲奈さんらも主演してきました。桃果さんも追いついてやろうと?

桃果  そこまで考えませんけど(笑)、とりあえず自分の名前を連ねて嬉しかったのと、毎回皆さんがすごく上手だから、今回「あれ?」とならないように、ヒロインとしてしっかりしなきゃとは思ってました。

――この作品でヒロインを演じて、身に付いたことはありますか?

桃果  こういう戦い系の役は初めてで、強いお芝居を身に付けられたと思います。私自身は平和でいたくて、戦う勇気も力もありませんけど(笑)、役でそういうことができるのは面白かったので、また次に活かしたいです。

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会

趣味のギターでイーグルスを弾いてます

――最初にドラマの話が出ましたが、映画も観てますか?

桃果  最近はいろいろ観てます。吉岡里帆さんの『見えない目撃者』が面白かったのと、韓国映画の『7番房の奇跡』はすごく感動しました。知的障害のあるお父さんが冤罪で死刑になってしまうんですけど、6歳の娘がいて、苦しくても最後まで笑顔でいようとする親子愛に心が動かされました。私もそんな演技がしたいです。

――好きな女優さんもいます?

桃果  尊敬しているのは石原さとみさんです。お芝居を見ていると、アドリブかと思うくらい自然で、泣くシーンも涙を流すというより、心から溢れ出すものがあって辛いのを我慢していたり、すごくリアルに感じます。だから、どんなドラマで見ても面白くて。

――自分もそういうレベルに行きたいと?

桃果  石原さとみさんのお芝居を参考にすることはあります。他にも「こういう役はこの方が合ってる。じゃあ、この方のお芝居を頭に入れておいて、やってみよう」とか。

(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会
(C)2020「人狼ゲーム デスゲームの運営人」製作委員会

――日常生活でも、演技力向上のためにしていることはありますか?

桃果  1億円の話でも言ったように、経験することが大事だと思うんです。いろいろなところに行って、いろいろな挑戦をして、感受性を豊かにして、「こういう役をやる」となったとき、活かせるようにしておきたいです。

――最近でも何か面白いことはしましたか?

桃果  このご時世なので、あまり出掛けたりはできませんけど、自粛期間にギターを始めました。お兄ちゃんのギターを借りて弾いたら楽しくて、譲ってもらいました。

――どんな曲を弾くんですか?

桃果  イーグルスの「テイク・イット・イージー」は弾けます。

――意外な曲が出てきました(笑)。

桃果  お兄ちゃんとお父さんがTOTOとかオアシスとか昔のバンドが好きで、家でよく流れているんです。自然と頭に入ってきて、私も「これ好き」となりました。

――今年の8月に20歳になってから、変わったことはありますか?

桃果  「子どもだから」は通用しなくなったので、「ちゃんと大人らしくしなきゃ」と考えるようになりました。みんなでごはんを食べに行ったとき、サラダを取り分けたりしています(笑)。

――演じる役の幅は広がりそうですね。

桃果  大人な役の引き出しを持っておきたいと思います。でも、まだ子どもなところも残しておいて、妹役とかもやりたくて。いろいろできるように頑張っています。

Profile

桃果(ももか)

2000年8月25日生まれ、神奈川県出身。

小学生の頃にスカウトされ、2013年から『ニコ☆プチ』専属モデルに。2017年公開の映画『春待ちかぼちゃ』で初主演。主な出演作はドラマ『5人のジュンコ』、『最上の命医2017』、『KBOYS』、映画『レミングスの夏』、『ビブリア古書堂の事件手帖』、『恋は雨上がりのように』など。

公式Instagram

公式Twitter

『人狼ゲーム デスゲームの運営人』

11月13日よりシネマート新宿ほか全国公開

公式HP

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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