スーパー・コンビニの食品ロス削減の秘策!値引シールもシール貼りも不要「ダイナミックプライシング」とは
買い物で棚の奥から賞味期限日付の新しいものを取ったことがある「88%」
スーパーやコンビニに行くと、賞味期限や消費期限の日付が新しいものは、だいたい棚の奥に置いてある。筆者が全国の講演などで1,403名に「買い物のとき、賞味期限や消費期限の日付が新しいものを棚の奥から取ったことがありますか?」と聞いたところ、88%に当たる1,236名が「ある」と回答した(調査期間:2017年9月19日から2018年10月17日まで、対象者1,403名)。
1,403名の対象者の中には、スーパーの社員や食品メーカーの社員も含まれている。が、彼らも買い物の時には「いち消費者」なので、一般の方と行動様式は変わらないようだ。
「同じ値段なら当然、後ろから取るよね」
よく聞くのは「同じ値段なら、当然、後ろから(新しいのを)取るよね」という言葉だ。「親から後ろから取るように教えられた」という人もいる。ある都道府県では、小学校で「新しい日付のものから取るように教育される」のだと、ある中小企業診断士の方に伺った。
Twitterでも、新しい日付のものを取るという人はいる。
奥から取る人の割合の調査結果をツイートしている人もいる。
前述の、筆者の調査は、1,403名という限られた対象者に過ぎない。が、それでも9割近い人が「賞味期限・消費期限の新しいものを棚の奥から取ったことがある」という結果だったので、少なく見積もっても半数以上の人が、同じ値段なら新しいものを望むのではないだろうか。
25%が「インセンティブがあれば考える」
では、消費期限や賞味期限の日付が近づいているものほど安いなど、何かお得だったら、どのくらいの人が買うだろうか。
株式会社エックス研究所が発表した報告書によれば、調査対象者の25%が「インセンティブ(お得なこと、メリット)があれば考える」と回答している(下記、黄色部分)。
AIを使った「ダイナミックプライシング」とは
スーパー・コンビニのうち、弁当やおにぎりなど、消費期限(5日以内の日持ちのもの)表示のものを見切り(値引き)販売するスーパーでは、店員が値引きシールを貼る姿や、値引き品コーナーなどを目にする。筆者も、買い物に行ったら必ずそのコーナーをチェックする。
だが、スーパーにしてみれば、売り値を下げることで儲けは減る。しかも、貼るシールのシール代や、シール貼りをする人員の人件費など、ばかにならない。
期限に応じて自動的に価格が安くなったらどんなに楽だろうか。
そんな仕組みが「ダイナミックプライシング」だ。
人工知能(AI)を使って、食品の期限に応じて価格を変動させ、表示させる。
この「ダイナミックプライシング」を筆者が初めて知ったのは、2018年5月23日、株式会社ローソンへ取材に行った時だった。
イスラエルの「Wasteless(ウェイストレス)」の実証実験で食品ロス33%削減
ローソンでの取材の時、谷田氏が教えて下さったのが、イスラエルの会社「Wasteless(ウェイストレス)」がスペインで行なっている実証実験の話だった。
このたび、その実証実験の結果が発表されたという記事が掲載された。2018年1月、スペインの首都、マドリードの小売店で実証実験を実施したところ、食料廃棄量が32.7%削減され、収益が6.3%増加したそうだ。
食品ロスを33%削減!消費期限により価格変動させるAIソリューションが欧州で本格展開(TECHABLE 2018年10月18日付、文:松岡由希子氏)
日本でも2018年2月にパナソニックとトライアルが実証実験
前述のローソンの記事を2018年5月に配信したところ、その記事を読んでくださったパナソニックの方から連絡があり、日本では2018年2月にパナソニックとトライアルカンパニーが共同でダイナミックプライシングの実証実験を行なったことを教えていただいた。
無人コンビニなど、AIの力を利用した効率化が進んでいるが、賞味期限や消費期限に応じて価格を自動的に変動するシステムが普及する時代が近づいているのかもしれない。鮮度の違う商品を置いた時に「お客さんが日付見て、みんな奥から取っていくんだよね・・」「でも、お客に面と向かっては言えないんですよ・・・」という悩みを抱えているスーパー・コンビニにとっては朗報ではないだろうか。見切り(値引き)するにしても、人がするのでなく自動的にできるのなら、そこに労働力や時間を割かなくて済むし、値引きシールも不要だ。食品ロス全体のうち、ある一定割合は削減できると推察される。
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