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東京五輪サマータイム案 天気からみると

片山由紀子気象予報士/ウェザーマップ所属
東京五輪 猛暑対策が最大の難関に(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 東京五輪の猛暑対策、サマータイム案に効果なし。2時間繰り上げても、気温はわずか1度低下するだけ。マラソン開催日を7月下旬に移動した方が得策か。

午前5時の気温は25.6度、湿度80%

 熱中症注意の呼びかけが続く、この夏。東京五輪が決まったときも、一年で最も高温多湿な時期の開催を危ぶむ声がありました。

 多少の猛暑対策では焼け石に水、とうとうサマータイム案までという気持ちです。最大2時間の繰り上げが行われた場合、どのくらいの効果があるのでしょうか。天気から見てみました。

 こちらは2000年から2018年まで、東京五輪開催期間(7月24日-8月9日)の午前5時の気温をグラフにしたものです。赤線は今年(2018年)、紫線は19年間を平均したものです。

【東京都心】午前5時の気温(東京五輪開催期間,著者作成)
【東京都心】午前5時の気温(東京五輪開催期間,著者作成)

 日によって気温の変化が大きい、小さいはあるものの、およそ23度から27度の範囲に収まっています。この夏は記録的な暑さと言われますが、グラフで見る限り特別ではないようです。そして、湿度の平均は約80%でした。

この結果をみると、日中の暑さに比べれば、多少は効果があると思ってしまいますが。

2時間繰り上げても わずか1度

 それでは陸上競技のマラソンはどうでしょうか。日程では午前7時スタート予定ですが、これが2時間早まれば、涼しい環境で競技ができるのかというと、そうでもないようです。こちらは上記と同じ条件で、午前5時の気温と午前7時の気温を比べたものです。

【東京都心】午前5時と午前7時の気温くらべ(東京五輪開催期間,著者作成)
【東京都心】午前5時と午前7時の気温くらべ(東京五輪開催期間,著者作成)

 2時間繰り上げても、平均して気温はわずか1度の違いです。たとえば、2018年8月1日や2016年7月30日のように4度くらい涼しくなれば少しは効果があるかもしれません。もしも、マラソン当日がこのような天気になったら幸運でしょう。

 仮にサマータイムが導入されても、天気を変えたことにはならず、運を天に任せることに変わりがないように思います。

マラソン開催は7月に

 もう打つ手はないのでしょうか。もうひとつ、開催期間の7月下旬と8月上旬の気温を詳しく調べてみました。

 すると、2000年以降、7月下旬の気温が平年を下回った年は6年あり、8月上旬と比べると明らかに多いことがわかりました。

【関東甲信地方】7月下旬と8月上旬の平均気温を平年と比べたもの(2000年-2017年,著者作成)
【関東甲信地方】7月下旬と8月上旬の平均気温を平年と比べたもの(2000年-2017年,著者作成)

 7月下旬が冷夏となった原因を探ると、遅い梅雨明け、戻り梅雨という共通点がありました。

 さすがに、2年後の梅雨明けは見通せませんが、マラソン開催日を7月下旬に移動すれば、梅雨明けが遅かった場合、猛暑が避けられる可能性があります。

【参考資料】

気象庁ホームページ:過去の気象データ・ダウンロード

公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会

朝日新聞:酷暑五輪対策 サマータイム案,2018年8月8日記事

気象予報士/ウェザーマップ所属

民放キー局で、異常気象の解説から天気予報の原稿まで幅広く天気情報を担当する。一日一日、天気の出来事を書き留めた天気ノートは128冊になる。365日の天気の足あとから見えるもの、日常の天気から世界の気象情報まで、天気を知って、活用する楽しみを伝えたい。著作に『わたしたちも受験生だった 気象予報士この仕事で生きていく』(遊タイム出版/共著)など。

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