天の川銀河は宇宙の巨大空洞「ボイド」のすぐ隣にあると判明!?
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「天の川銀河はボイドのすぐ隣にあるかもしれない」というテーマで動画をお送りしていきます。
●宇宙の大規模構造とボイド
私たちが住む地球は太陽系に属しており太陽系は銀河系と呼ばれる銀河に属しています。
そして宇宙には膨大な数の銀河が存在していて、銀河は複数の重力的に結びついた銀河の集団を形成しています。
重力的に結びついた数十個程度の銀河の集団を銀河群、より大規模な集団を銀河団といいます。
太陽系が属している天の川銀河も40ー50個ほどの銀河とともに局部銀河群、英語で言うとローカルグループと呼ばれる銀河群に属しています。
また、この銀河群や銀河団も、より大きなスケールで見た時、さらに大きな銀河の集団の一部にすぎず、銀河群や銀河団の集合体である超銀河団を形成しています。
ですが、このような入れ子構造は永遠に続くわけではありません。
宇宙には銀河が均一に存在しているわけではなく、集団で存在している部分がある一方で、ほぼまったく何もない空間も存在します。
このほとんど全く何もない空間こそが、今回の動画のテーマであるボイド、別名超空洞と呼ばれる空間です。
ボイドには目に見える銀河などの物質だけでなく、目に見えないダークマターも存在していません。
そしてそんな超低密度の領域が、なんと直径数億光年という想像を絶するほど広い範囲で広がっています!
そんなボイドが初めて見つかったのは1980年代です。
天文学者が数億光年離れた先に約2億光年にわたって銀河がまったく観測されない空っぽの空洞が存在することを明らかにしたのが最初です。
その後も宇宙空間には、同じような空洞がいくつもあることが発見され、こうした銀河の存在しない超巨大空間を英語で何もないことを意味するボイドや、日本語で超空洞と呼ぶようになりました。
そして宇宙は、数千億個ともいわれる銀河が集まった「銀河フィラメント」と呼ばれる領域と、この銀河がほとんど存在しないボイドが複雑に入り組んだ構造をしており、その構造は網に例えられます。
網の部分が銀河が密集している領域で、網目にあたる空洞部分がボイドです。
このように非常にマクロなスケールで宇宙を見たときに現れる、網目構造を「宇宙の大規模構造」と呼んでいます。
現在観測されている限りでは、観測可能な宇宙の果てまでこの宇宙の大規模構造が連なっていることが確認されています。
●ボイドはなぜ形成された?
しかし、宇宙はなぜこのような構造をしているのでしょうか?
それは現在のところ、宇宙が誕生した頃に起こった「密度ゆらぎ」が原因だと言われています。
密度ゆらぎとは物質の密度のむらのことです。
最初期の宇宙は、物質がほぼ均質に存在していたものの、わずかな密度のむらがあったと考えられています。
密度のむらは重力の不安定性を生み、密度が高く、質量がわずかに大きな領域にむかって物質はゆっくりと引き寄せられます。
すると重力の不安定性もさらに高くなります。
それが繰り返されることで高密度の領域に物質が集まり、低密度の領域はさらに物質が少なく、現在のボイドのような空間が作られていったというわけです。
●天の川銀河はボイドの隣にある!?
そんなボイドですが、なんと私たちが住むこの天の川銀河を含む局部銀河群は、「ローカルボイド」と呼ばれる超巨大なボイドのすぐ隣、もしくは内部に位置している可能性が高いことが、近年の研究で示されていました。
ローカルボイドは地球から見て天の川銀河中心部の向こう側に位置していると考えられていますが、その方向は大量の光と物質により情報が遮断され、観測が非常に難しく、近年でも多くの謎に包まれています。
正確な大きさについても謎のままですが、最低でも直径が1.5億光年あるそうです。
そんな中2019年8月には、天の川銀河近傍にある17000個以上の銀河の距離と運動、そして質量などの情報のもと、このような近傍宇宙のこれまでにないほど正確な地図が作成され、公開されました。
この地図でも、画面中央の天の川銀河がある領域の本当にすぐ左上に、巨大なローカルボイドがあることが示されています。
なお、画像の1辺は6億光年、3方向に伸びる矢印それぞれが2億光年となっています。
30年ほど前から、私たちの天の川銀河やアンドロメダ銀河を含む特に近所の銀河は、宇宙の膨張によってもたらされるはずの運動から、実に600km/s以上もずれた速度で宇宙空間を移動していることが知られていました。
そのような凄まじい速度は、実は近隣のボイドからの強大な斥力によって生み出されていることも考えられます。
宇宙の大規模構造は時間とともに銀河フィラメント部分がより高密度になり、ボイドはより膨張していくため、ボイドの近傍にある銀河はそこから押し出される方向に力が働いているように見えるんですね。
今回の研究の結果、近隣の銀河が持つ、宇宙膨張では説明できない運動成分のうち実に半分が、約6000万光年彼方のおとめ座銀河団からの引力と、ローカルボイドからの斥力によって説明できることが判明しました。
この地図でもわかる通り、宇宙規模で言えば近所の領域から働く力が、未知の運動成分の半分を占めていたことになります。
先述の通り、天の川銀河中心部の方向は観測が難しいため、その方角にあるローカルボイドの正確な大きさなどの情報は未だに謎が多いままです。
とはいえ今後宇宙や天の川銀河の歴史を紐解くうえで、ローカルボイドが非常に重要な役割を果たすかもしれません。
今後もローカルボイドにまつわる研究が続けられ、新たな発見がもたらされることに期待しましょう!