まるで別人?悪童と言われたネリは更生したのか 井上尚弥と4団体統一戦で激突
ボクシング世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥(30=大橋)が、元2階級制覇王者でWBC世界同級1位ルイス・ネリ(29=メキシコ)を迎え防衛戦に臨む。試合は5月6日、東京ドームで開催される。
井上尚弥VSルイス・ネリ
海外ではすでに報道されていたが、日本でも正式に発表記者会見が行われた。
会見で井上は「この試合は東京ドームで行われるタイソン以来の試合とあってモチベーションが高い。強豪を迎えるにあたり気を引き締めて、過去一仕上げなければならない」と意気込みを語った。
ネリの印象については「一発のパンチ力と打たれ強いのがストロングポイント。4団体王者としてふさわしい試合をしたい。ネリに対して何もさせずに勝つ」と語っていた。
2階級で4団体統一を果たした井上にとって、単なる防衛戦ではモチベーションも上がらないだろう。しかし、今回の試合会場と対戦相手は特別だ。
過去にも日本ボクサーが東京ドームで試合をしたことはあるが、メインを飾ったことはない。そのため、井上が日本選手として初めて主役としてリングに上がることになる。加えて対戦相手は話題性のある強豪ネリ、気持ちも高まっているだろう。
物静かなネリ
会見では大きなサプライズもあった。なんと対戦相手のネリが、メキシコから来日し、記者会見に登場した。
今回の試合について「再び日本の地を踏めることを嬉しく思う。(過去の過ちに対して)申し訳なかったと謝りを入れたい。大変集中し、きちんと練習している」とコメントした。
井上については「私は最強のボクサーと戦うことを望んでいる。モチベーションが高い。井上についてはスピードがあってパワフル。リスペクトはしているが、恐れてはいない」と語った。揺るがない自信を持っているようだ。
終始落ち着いた態度で、かつて悪童、ビッグマウスと言われたネリの姿はなかった。
会見中にも話題に上がったが、ネリは2018年に元バンタム級世界王者の山中慎介氏との対戦で、ドーピング疑惑や体重超過が取り沙汰された。
あれから約6年、キャリアも中盤に差し掛かっている。敗戦も経験し、だいぶ丸くなったように感じられた。
会見後には山中氏とネリが対面し「私の間違いで山中さんのキャリアを終わらせてしまって申し訳ない」と謝罪した。
井上も会見で「過去に因縁があるのも分かっているが、今回の戦いに関しては自分対ネリ。反省しているので過去の因縁は持ち込まない」と話している。
今回の試合では、60日前にも計量が行われ、現在約60キロで節制しているようだ。
スーパーバンタム級のリミットである55.3kgまで、あとマイナス5キロほど。2ヶ月で無理なく落とせる範囲だろう。
ドーピングのチェックも含めて不正がないよう、厳戒態勢で試合を行って欲しい。再びあのような悪夢が繰り返されないよう願いたい。
日本ボクシング史上最大級の興行
東京ドームでボクシングが行われるのは34年ぶりだ。
メインとなる井上の試合の他にも3つの世界戦が組まれ、4大世界タイトル戦となる。世界的に見ても非常に豪華な興行だろう。
セミファイナルには、先月防衛に成功したWBAバンタム級王者の井上拓真(28=大橋)が、指名挑戦者で現WBA1位の石田匠(32=井岡)と防衛戦を行う。
前回の試合から2ヶ月しか経っていないが、元王者のアンカハスをKOで下し、勢いに乗っている拓真。そして、過去にもタイトルマッチの経験がある石田との対戦は注目のカードだ。
また、1月に無敗の王者を下し、新王者となった阿久井政悟(28=倉敷守安)と、桑原拓(28=大橋)との再戦にも注目したい。
両者は2021年、日本タイトルマッチで対戦しており、接戦の末、最終ラウンドに阿久井がKO勝利した。世界タイトルマッチでの再戦は、まさに因縁の対決だ。
さらに、元K-1王者で全戦全勝の武居由樹(27=大橋)は、WBO世界バンタム級王者のジェイソン・マロニー(33=オーストラリア)に挑戦する。
わずか8戦で世界までたどり着いた武居が、実力者のマロニーを相手にどのようなボクシングを展開するのか。新王者誕生への期待も高まる。
今回の興行では、日本ボクシング史上類を見ない豪華なカードが揃った。歴史に残る興行に臨む、選手たちの健闘に期待したい。