Yahoo!ニュース

男性も引きつけるジャニーズ俳優・中島裕翔 『SUITS2』で光る、行き過ぎないカッコ良さ

斉藤貴志芸能ライター/編集者
(写真:ロイター/アフロ)

3話以降の放送が延期となった“月9”ドラマ『SUITS/スーツ2』(フジテレビ系)。弁護士事務所が舞台の物語で、主演の織田裕二とバディを組みシリーズ前作に続き好演を見せていたのが中島裕翔だ。ジャニーズのアイドルグループHey!Say!JUMPのメンバーでもあるが、ドラマではいつも不思議と、知らない人が見たらジャニーズとわからないたたずまいが漂う。そして、一般のドラマファンの男性の好感度も高い。

『半沢直樹』から「ジャニーズに見えない」の声

 中島裕翔は現在26歳。小学生時代からジャニーズJr.として活動していた。コロナ禍による新ドラマの収録見合わせで再放送された『野ブタ。をプロデュース』(日本テレビ系)では、亀梨和也の弟役だった15年前の姿が話題になった。当時から背が大きく伸びて今は178cm。

 7年前には、続編が放送される『半沢直樹』(TBS系)の第一部に出演。最終回で破格の視聴率42.2%を記録したこのドラマ、当初はいわゆる大スターが出演してないことを危惧されていたのが、派手でなくても上手い役者を揃えたのが功を奏した。

 そんな中で中島が演じたのは、半沢の部下の若手銀行員。線が細く見えつつ、支店長側に人事をタテにスパイを強要されても「半沢課長は裏切れません」と屈しなかった。実力本位で適材適所の配役の中、彼もおそらく女性要員でキャスティングされたわけでなく、多くの男性視聴者が「ジャニーズとは知らなかった」と、クセのある役者たちと渡り合うのを自然に見ていた。

 4年前には『HOPE~期待ゼロの新入社員~』(フジテレビ系)でゴールデンタイムの連ドラに初主演。プロ棋士になる夢を絶たれ、総合商社に1年契約で入社した役。高卒でコピーの取り方すらわからず嘲笑されながら、必死で仕事に取り組む姿に、男性視聴者から「新入社員の頃を思い出して泣いた」「明日からまた仕事を頑張ろうと思える」といった声が寄せられた。

スーツが似合い弁護士事務所に馴染む

 そして、一昨年に出演したのがシリーズ前作『SUITS/スーツ』。一度見たものは忘れない完全記憶能力を敏腕弁護士の甲斐正午(織田)に買われ、どん底のフリーターから経歴を詐称してアソシエイト弁護士となった鈴木大輔役。年の離れたバディのポジションだ。

 最終回では、弁護士を辞めようとした大輔に甲斐がバッジを突き返し、ボストン行きのチケットと小切手を渡して「2年で帰ってこい」と告げてフィナーレ。実際に2年経った今年、『SUITS/スーツ2』1話では大輔が帰国し、さっそく完全記憶能力を使って甲斐を手助けした。

 『半沢直樹』の頃から、中島はまさにスーツとネクタイが似合う。長身でカッコ良く着こなしつつ、行き過ぎないカッコ良さというか、イケメンながら普通に社会人に見える。ジャニーズのアイドルがこうした役を演じると、華やかなオーラがある分、女性ファンはうっとりでも“本当にいそう”とは見えなくなりがちなのが、中島は物語の世界に自然に馴染む。SNSで1話の感想の中に「ジャニーズっぽくないカッコイイ演技」との声があったのは、そういう意味だろう。

仕事仲間にしたい誠実さもナチュラルに

 中島は実直そうで誠実な雰囲気を持つ。そこがストレートに出た『SUITS/スーツ』シリーズ。大人の立場でいうと、“良い部下”感がある。甲斐が弁護士事務所の代表・幸村チカ(鈴木保奈美)に無資格の大輔を切るように命じられても、頑として拒むのは、彼の特殊能力のこともあるが人間的にかわいがっているからのよう。そんな関係性をリアルに見せるものを、中島は漂わせている。社会人の視聴者としても、一緒に仕事をしたくなる。

 また、大輔は両親を幼い頃に交通事故で亡くして祖母と暮らしてきて、2話では「ああ、ばあちゃんに会いたくなってきた」との台詞があった。つき合い始めたパラリーガルの聖澤真琴(新木優子)を祖母に紹介するシーンでは、おねしょの話をバラされたりしながらの掛け合いが温かった。つまり“良い孫”感もある。

 新木とのキスシーンで女性ファンを沸かせつつ、中年世代まで幅広い男性視聴者にも好感を持たれている中島。ベースにあるのは様々な役をナチュラルに見せる演技力だ。ジャニーズでも二宮和也、生田斗真、岡田准一らが俳優として演技派と言われているが、中島は彼らとも一線を画している。自分が光るより、物語に溶け込んで過不足ない存在感を醸し出す。ジャニーズにはいなかったタイプだ。

 『SUITS/スーツ2』2話のラストでは、本当は弁護士資格のない大輔が甲斐に「偽りで固めた人生なんて送りたくない」と、聖澤にすべてを話すことを伝える。甲斐は「好きにすればいい」と突き放しながら「考えろ」とも言った。誠実な大輔と海千山千の甲斐がどうなっていくのか? 放送の再開が待たれる。

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

斉藤貴志の最近の記事