餅草とは?東京都中央区の老舗「桃六」さんの草餅は、強かな餅草に負けないこし餡も魅力のひとつ
年末から松の内にかけては、祝賀ムード満載の紅白の上生菓子や花びら餅などが和菓子屋さんの店頭に並びましたが、そろそろ春の和菓子へとバトンタッチし始めましたね。椿の葉を乗せた道明寺製の椿餅、地元産の苺から大小さまざまな粒の苺をとじこめたいちご大福、早いところでは桜餅も登場しておりました。
さて、「餅草」と呼ばれる植物をご存知でしょうか?春の季語としても用いられ(餅いられ?なーんて)、若菜を積んでお餅などに混ぜ込んだりする葉です。これでもうお分かりですね?
餅草とは、「蓬」のこと。お店によってその濃度はさまざまですが、目にも鮮やかで深い緑色に染め上げ、独特な清涼感を演出してくれる和菓子には欠かせない存在。特に春の和菓子のひとつでもある草餅は、この蓬がなくてはなりたちません。今回は一足お先に春の訪れを、東京都中央区京橋の老舗和菓子屋「桃六」さんの「草餅」にてご紹介。
草餅の形はじつに多彩。お団子とあんこが別になっているところもありますが、桃六さんの草餅はキュッと口が閉じた巾着型とでも申しましょうか。たっぷりとしたお餅ながらも、本物の巾着のように波打ちながらぴったりとくっついています。厚みのある深緑のお餅を均一な厚さにのばし、中に包んでいるのはこし餡。
こちらのこし餡もまた絶妙な炊き上げ具合で、鼻から抜けていく蓬の強かなスーッという爽快感と、力強い弾力にもかかわらず滑らかなお餅のほくほくっとした旨味に負けず劣らず、それでいて変に砂糖甘くないぽってりとしたこし餡なのです。蓬がたっぷり練り込まれているお餅かつ適度な芯を残した搗き上げ具合なので、咀嚼するたびにふわ、ふわっと青い薫香が立ち昇り、ここは好みがわかれるところかと思いますが、大人の春を口内と鼻腔双方で堪能し、呑み込んでから思わず深呼吸。
幼いころは蓬のスースーする香りが苦味のような印象に変換され、あんこが好きといえども何となく避けていた草餅。大人になった今、当時の分を取り返すように、私は一年を通して草餅を好んでいただいております。
<桃六>
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9時30分~17時
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