Yahoo!ニュース

無双リーダー・藤井聡太二冠(19)地球代表・深浦康市九段(49)ABEMAトーナメント準決勝で激闘

松本博文将棋ライター
(提供:アフロ)

 9月11日。第4回ABEMAトーナメント準決勝、チーム藤井-チーム菅井戦がおこなわれました。

 最初に登場したのは、チーム藤井はリーダーの藤井聡太二冠(19歳)でした。

藤井「1局目はジャンケンで決めました。ジャンケン弱いので最初、出なくていいのかと思ったんですけど、今回はたまたま勝ってしまって、出ることになりました。初戦に出るのは今回初めてなので、緊張してるんですけど、チームを勢いづかせれるようにがんばりたいと思います」

 普段の対局では、どれほどの大勝負であっても「緊張」という言葉はめったに使わない藤井二冠。団体戦では違う感慨があるようです。

 チーム菅井は深浦康市九段(49歳)が立てられました。

深浦「菅井さんから言い渡されました。『いつでも準備できてる』と言ったら『じゃあ、ぜひお願いします』と。チーム藤井は藤井リーダーが要だと思いますので、いい勝負を展開できればと思います」

 どんな時間設定でも強い藤井二冠。フィッシャークロックルールで超早指し(5分+1手指すごとに5秒追加)であっても、ここまで圧倒的な成績を収めてきました。個人戦の第1回、第2回は優勝。団体戦となった第3回もチーム永瀬のメンバーとして優勝。今回第4回もここまで5勝1敗と安定した強さを見せています。

 一方、深浦九段は今回ここまで5戦全敗と意外な不振です。

 公式戦での対戦成績は藤井1勝、深浦2勝。藤井二冠に勝ち越している棋士は現在、数えるほどしかいません。

(画像作成:筆者)
(画像作成:筆者)

 深浦九段は先手で角筋を止め、戦型は互いに雁木となりました。序盤は間合いをはかりながらの駒組。戦端が開かれてからの中盤は難しい押し引きが続いていきました。

 99手目。深浦九段は相手の歩頭に銀を打ちます。これが飛車取りのハードパンチ。深浦九段は駒から手を離した右手で、自分の頬を3回ほどたたきました。気迫あふれる深浦流です。

 藤井二冠は対応が難しいところ。歩頭の銀を歩で取るのは、負けになってしまいます。時間のない藤井二冠は21秒で飛車を逃げます。深浦九段は打ったばかりの銀を前に進めて一気に藤井陣を突き破った形。形勢は深浦九段優勢となりました。

 深浦九段は大駒をすべて渡す代わりに金銀8枚を収め、手厚く藤井玉に迫ります。藤井二冠の粘りを振り切って、深浦九段は藤井玉を詰ませます。最後は153手で深浦九段の勝ちとなりました。

深浦「藤井さんに(80手目△4七歩成で)と金を作られたあたりはちょっと苦しかったんですけど、まあなんとか、勝負形に持ち込めたという感じですかね。組み上がってからはあまり下がらずに、前に前に行けたのかな、というふうに思います。これでお二人(菅井八段、郷田九段)につなげますし。最初に結果の出てない私を送り出してくれた菅井さんがすごいのかな、というふうに思います」

藤井「いきなり最初の方で間違えてしまって、なんかあまり勝負どころがない感じになってしまったような気がします。(56手目)△4六歩と垂らしたところがあったんですけど、本譜(61手目)▲2七飛車でぴったり受かってしまうので。まだ時間があるところだったので、しっかり落ち着いて考えないといけなかったような気がします。いやちょっと、なんというか反省点しかないような感じになってしまったので、次局以降修正していければと思います」

 両者は4局目でも再び対戦しています。

 今度は藤井二冠先手。戦型は相掛かりとなりました。

 戦いが始まったあとの58手目。深浦九段は藤井陣に飛車を打ち込みます。これが厳しい攻めに見えましたが、藤井二冠が自陣に角を打ったのが受けの好手。一見つらい守り方のように見えましたが、それで意外と深浦九段の攻めが続きません。

 最後は89手。藤井二冠が深浦玉を詰ませて勝利を収めました。

 以上、ABEMAトーナメントでの両者の対戦は、互いに先手番を取り合っての1勝1敗でした。

 両者は今期NHK杯2回戦でも対戦します。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

松本博文の最近の記事