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ランジャタイ国崎がダウンタウンの前でやりたかった全財産を賭けた一世一代のボケの裏側

てれびのスキマライター。テレビっ子
『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』公式HPより

9月10日に放送された『ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!』(日本テレビ)では、「ランジャタイ国崎七変化」が放送された。

「七変化」といえば、同番組の看板企画と言っても過言ではない人気企画で数多くの芸人たちが挑戦してきた。ダウンタウンらが参加している会議中、7回にわたって挑戦者が様々な扮装をして入っていき、それに笑ったら1人1000円ずつ払い、その合計金額を競うもの。これまで61人が挑戦してきて国崎は62人目だ。

国崎といえばダウンタウンへの強い憧れを公言しているひとりで、以前の筆者によるインタビューでもこう語っていた。

国崎「『ガキの使い(やあらへんで!)』の「D-1グランプリ」(※ダウンタウン40周年記念として行われたダウンタウンに憧れる芸人達がその愛を詰め込んだネタで競う大会)が今までの芸人生活で一番嬉しかったですね。あのダウンタウンさんの前で、しかもダウンタウンを題材にしたネタができるんだっていうのが、2021年の『M-1』の決勝よりも全然嬉しかったかもしれないです」

「TOKION」2023年03月30日 より

だから、看板企画の「七変化」への参戦も並々ならぬ思いで挑戦したに違いない。

果たして、その強い思いを反映したような全身全霊をかけたネタの数々は爆笑に次ぐ爆笑を生み、歴代3位という好結果を残した。

途中、眉毛や髪の毛を剃った捨て身のネタもあったが、特に大きな笑いを生んだのは3つ目におこなったネタだった。

1本目のネタは全員笑わず不発に終わり、2本目も思ったほどの笑いが返ってこない。内心、国崎も焦っていたに違いない。

そんな状況の中、国崎は、子供たちと一緒に登場する。

彼らと遊ぶ国崎に、現代アートのオブジェを持った美術商らしき男がやってくる。

国崎の貯金額は約469万円。オブジェの合計金額も同額。

それを購入しようと国崎は言う。「やめなよー」と子供たちが心配する中、契約書にサインをして、カードで支払いを済ます国崎。

しかし、貯金額が表示されたスマホの画面を更新しても「0円」にならない。

幸か不幸か決済エラーが発生したのだ(画面をよく見ると「限度額エラー」らしき文字が見えるのでカードの設定上支払いができなかったのだろう)。

見守るメンバーも意図的なものか否かを判断ができず微妙な空気が流れる。

1本目、2本目の不発に続き、ここでも万事休すかと思ったその時、子役のひとりがアドリブで言う。

「良かったじゃーん!」

それが大爆笑を生んだのだ。

これ以降、堰を切ったように笑いが次々と起こっていくことになるのだ。

(※番組はHuluで視聴可能。また日テレ無料では本日17日23:24まで視聴可能)

奇跡のハプニング笑い

翌11日からニッポン放送では「お笑いラジオスターウィーク」が始まった。

これは1週間にわたり、『オールナイトニッポン』『オールナイトニッポン0(ZERO)』『オールナイトニッポンX(クロス)』の3ブランド全ての番組のパーソナリティをお笑い芸人・講談師が生放送で担当する企画だ。

14日深夜の『オールナイトニッポンX』を担当したのはランジャタイだった。

ここで、2人はこの『ガキの使い』の「七変化」を裏話を交えて振り返っている。

やはり国崎は、「七変化、どうですか?」と尋ねられたときに「やります!」と即答したという。「芸人にとってさ、もう(こんなチャンス)ないじゃない、一生」と。

事前の会議では構成作家がネタの案も考えてきてくれたという。しかし、国崎は固辞した。

国崎: 会議の段階で「国崎さん、どうします?」って言われて。「何か、やりたいことありますか?」って。その時にね、一応作家さんたちが案みたいなのを持ってきてくれるの。「我々が考えた案です」って。結構分厚いんですよ。「こんなにですか?」って。でも正直、ダウンタウンさんにその自分のネタを7個見てもらうなんてないじゃん?

伊藤: もう一生に一度。

国崎: 一生に一度あるかないかだから。「今回だけは、本当に申し訳ない。自分のやつを7個、やらせてくれ」って。そしたら快く「いいですよ。どんなのをやりたいんですか?」って聞かれて「これをやりたい、あれをやりたい」って。でも、すごいのは限度がないんですよ。

伊藤: 限度がない?

国崎: うん。「これ、お金かかるぞ?」って。でもそれも「ああ、全然いいです」ってなって、全部やってくれて

番組本編でも松本人志から「完全に卑怯」だとイジられていたが、この回では、通常の会議室ではなく、会議室風にしたスタジオが使われていた。それも国崎の考えたネタを実現するため。スタッフも金と労力を惜しまずに国崎の熱量に応えたのだ。

「全財産を使う」というボケも、色々な番組で提案しても却下されていたという。しかし、この番組では「いいですね!」と了承してくれた。

国崎: 全部の番組は「ダメです、ダメです」「もう手に負えません。番組が責任持てません」ってなって。「じゃあこれ、もうダメなんだな」と思っていたら、『ガキ使』さんだけが「いいっすね、それもやりましょう!」ってなって

伊藤: わー、究極のお笑い番組だ!

国崎: いや、そうですよ。「やったー!じゃあ、これもいいですか、あれも?」「やります。全部やります」ってなって。

伊藤: ワクワクするね!

国崎: だから、全部の案を通してくれるのよ!お金も限度がないですよ。

国崎の全身全霊の狂気を受け止めた番組側の覚悟があったからこそ、番組史に残るような奇跡的なハプニング笑いと名作が生まれたに違いない。

(※番組はradikoのタイムフリーで9月21日まで聴取可能)

もしもトラブルがなかったら

ちなみに『ガキの使い』の放送の翌日、国崎のYouTubeチャンネル「ふっとう茶☆そそぐ子ちゃん」には「【ガキの使い 七変化】子供の前で全財産使うおじさん」と題された動画が公開された。

3本目のネタに実際に参加した2人の子役も再度招集し、トラブルがなかったらこうなるはずだったというコントを改めて演じている。

カード決済ではなく現金払いに変更し、実際に全財産を使い果たし一文無しになる国崎。

そこから、奇想天外な展開が用意されていたのだ。

想定通りに進んでいたら、どうなっていたかも見てみたかったが、それは叶わぬ夢。そこに一発勝負の痺れる攻防があるのだ。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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