ジダンとペレスを襲う無冠の重責。レアル・マドリーに早くも訪れたクライシス。
レアル・マドリーに、早くも最初のクライシス(危機)が訪れた。
26日に行われたインターナショナル・チャンピオンズカップで、レアル・マドリーがアトレティコ・マドリーに3-7と敗れた。マドリーがプレシーズンの親善試合で大敗したのは、およそ39年ぶりである。1980-81シーズン、バイエルン・ミュンヘンに1-9で敗れている。
プレシーズンとはいえ、この大敗でマドリディスタが不満を溜めるのは間違いない。
■期待された大幅刷新
2018-19シーズン、マドリーは主要3タイトルにおいて無冠に終わった。フレン・ロペテギ元監督、サンティアゴ・ソラーリ前監督はいずれも結果を残せず、ジネディーヌ・ジダン監督の再就任が決定した。
それは2019-20シーズンに向けた布石だった。この夏の大型補強敢行、大幅な刷新が期待された。そして、フロレンティーノ・ペレス会長はリアクションを見せた。エデン・アザール、ルカ・ヨヴィッチ、ロドリゴ・ゴエス、エデル・ミリトン、フェルランド・メンディを獲得するため、補強費3億6000万ユーロ(約435億円)を投じた。
アザールの獲得に関しては、疑義が挟まれた。アザールとチェルシーの契約は2020年夏までとなっていて、契約期間が残り1年の選手に固定額1億ユーロ(約121億円)+ボーナス3000万ユーロ(約36億円)の移籍金を支払う考えに疑問が投げかけられたのだ。だがパリ・サンジェルマン、マンチェスター・シティ、そういったクラブとの競争を考慮して、ペレス会長はアザールの獲得に踏み切った。
隆盛を極めるプレミアリーグで名声を恣(ほしいまま)にしていたアザールが、マドリーを選んだ。それは、「レアル・マドリー」というブランドがまったく廃れていない証である。当時アシスタントコーチを務めていたジダンは2009年にアザールの獲得に関して「二つ返事でイエスだ」と語っていた。その頃から、アザールに関心を寄せていたのである。
アザール以前、マドリーの最後の大型補強は2014年のハメス・ロドリゲスまで遡る。以降、ペレス会長は若い選手を安く買う手法に切り替えた。マルコ・アセンシオ(350万ユーロ/約4億円)、ヘスス・バジェホ(500万ユーロ/約6億円)、テオ・エルナンデス(2400万ユーロ/約29億円)、ダニ・セバジョス(1650万ユーロ/約19億円)...。その一方でケイロール・ナバス、セルヒオ・ラモス、ルカ・モドリッチ、トニ・クロース、カリム・ベンゼマはいずれも30歳を超えており、主力選手の高齢化が進んでいた。
■結果こそが価値
マドリーは大型補強を敢行しているだけではない。相変わらず、ペレス会長は選手を売るのが上手いのだ。
プレシーズンの前に、マルコス・ジョレンテをアトレティコ・マドリーに売却した。同都市に拠点を置くクラブにカンテラーノを放出するという批判はあったが、18-19シーズンに出場時間540分だった選手を固定額3000万ユーロ+ボーナス1000万ユーロ(総額4000万ユーロ/約48億円)の移籍金で売却したのだから、ペレス会長の手腕は相当なものだ。
ペレス会長はかつての方策を再び採ろうとしている。
それはマーケットにおける攻めの姿勢に依(よ)るものである。すでに3億ユーロ(約360億円)超の資金を投じているが、ポール・ポグバへの強い関心が取り沙汰され、ここにきてキリアン・ムバッペやネイマールが補強候補として再浮上しているところだ。その一方で、M・ジョレンテに続いてテオを移籍金2000万ユーロ(約24億円)でミランに売却。またセバジョスをアーセナルに、バジェホをウルヴァーハンプトンにレンタル放出している。
もはやペレス会長にカンテラーノを庇護する考えはない。マルセロから定位置を奪う実力を備えたレギロンでさえ、レンタルでセビージャに放出された。
だが、その中で不測の事態が起こる。負傷者の続出だ。アセンシオ、ブラヒム・ディアス、メンディ、ヨヴィッチがシーズン開幕前に離脱を余儀なくされた。とりわけ、アセンシオは右ひざの前十字断裂と半月板損傷で6カ月から9カ月の長期離脱が見込まれている。移籍が濃厚なガレス・ベイルの代わりに、アザール、ベンゼマの3トップに組み込むジダン監督の算段が早くも崩れている。
チャンピオンズリーグ3連覇は、ある種の真実を隠してしまった。プレースタイルを確立しないままに、マドリーは欧州の舞台で常勝の道を歩んでいた。それでも、レアル・マドリーというクラブでは、価値が認められるのは結果だけという矛盾がある。
無冠の重責が、ペレスに、ジダンに、襲い掛かっている。