旧統一教会コンプライアンス宣言後の正体隠しからの被害続々 5月開催予定合同結婚式への参加強要の懸念も
本日(3月1日)文化庁から旧統一教会に対して、4回目の質問権が行使されます。
全国統一教会被害対策弁護団は、1月22日、教団に対して、元信者などの被害者50人が、献金や物品購入などの金銭的損害の返金や慰謝料を求めての集団交渉を申し入れています。立憲民主党を中心とした「統一教会」国対ヒアリングでは、この交渉に臨んでいる、松田さん(仮名・80代女性)とA子さん(70代女性)から話がありました。
50人の被害者のうち、コンプライアンス宣言後の被害が半数近く
最初に阿部克臣弁護士から「今回は、第一次の集団交渉の申し入れです。今後も二次、三次の申し入れを通じて(教団に)被害金を払うように求めることになると思います」との話がありました。
今回だけで約16億円ですから、第二次、第三次となれば、返金請求額はかなりの金額になっていくものと思われます。
さらに今回の50人の被害の詳細について「被害終期を見て頂くと、現在から10年前までの被害者が24人おり、コンプライアンス宣言後の被害が半数近くある」と指摘します。
旧統一教会は、2009年のコンプライアンス宣言にて「伝道活動において、勧誘する当初から教団名を明示することを、信者に徹底させていた」と話しています。しかし、お二人の被害報告から、まったく乖離した状況が浮き彫りになってきています。
1億4000万円の被害(80代女性)の実態
松田さんは1億4000万円の被害に遭っています。その時期は2009年から2022年までで、コンプライアンス宣言後です。入信のきっかけは、ご主人が病気で入院する頃に声をかけられて、勉強会に参加したことだといいます。
松田さんが「(統一)教会とは思っていなかった」と話すように、宗教を知らされないまま誘われて、さらに「ご主人の病気が治るために」という言葉で入会を勧められています。ご自身のウィークポイント(悩み、弱み)を握られて、逃げられない気持ちに追い込まれたなかで、勧誘されていたことがわかります。
2014年には、約2300万円を別の目的で銀行から引き出したところ、そのお金を信者に持ち去られて、教会にて献金の扱いにされます。「返金を求めても応じてもらえなかった」と話しており、本人の同意なく持ち去った行為が事実とすれば、決して許されるものではありません。
松田さんのもとには「お世話をする」という名目で、信者らが家を訪れてくるそうです。さらなる献金の狙いがあることは透けてみえています。
今は、息子さんが松田さんを自分の家に連れていき、信者らから身を守る状況になっています。相手の事情をまったく理解せずに、教団を離れて献金を拒む人にアプローチを続ける行為はやめてほしいと思います。
最後に松田さんは「被害者のなかには90歳になっている方もいて、訴えられない方もいる。本当に許せない」と教団に対しての強い憤りを示されました。
A子さん1400万円の被害の実態
A子さんも8年前の教団のコンプライアンス宣言後に、駅前で女性2人から「何か心配なことはありませんか?」と声をかけられたことがきっかけで誘われています。
A子さんもまた勧誘時に「宗教や統一教会」といった名前は出されなかったといいます。勉強会に通う中で、家系図の話や先祖の因縁話を聞かされて信じさせられて、1400万円の被害に遭っています。
「勉強会では、1時間くらいの(教義の内容などの)ビデオを見て、その後に感想文を書いて、カウンセリングが行われました」
27年前とまったく変わらない教化手法が続いている
筆者は27年ほど前に教団を脱会していますが、信者時代、ビデオセンター(教団名を隠した勧誘組織)の責任者も経験しています。
その時も「教団の正体を隠して街頭から勧誘して入会させた人には(教義などの)ビデオを見せて、感想文を書かせる。そして、マンツーマンのカウンセリングを繰り返し行いながら、旧統一教会と気づかせないままに教義を刷り込む」という手法が行われていました。
コンプライアンス宣言後でありながら、A子さんにその頃と、まったく同じような手法をしている実態に唖然とせざるをえません。
A子さんは、昨年7月の安倍首相の銃撃事件をきっかけに、教団に不信感を抱き、被害に気づきました。
「多額の献金をしたために、今は貯金がなく、年金だけが頼りで、老後が不安なので、返金してほしい」と話します。今後の生活に不安を感じている被害者に対して教団側の真摯な対応を求めます。
合同結婚式への参加強要の違法判決について
2月22日の衆議院予算委員会の質疑で、岸田文雄首相に、立憲民主党の吉田はるみ議員から「2004年に出ている判決をご存じでしょうか。旧統一教会の合同結婚式への参加の強要は、違法とする最高裁の判決が出ています。5月7日に韓国で開催予定の合同結婚式にも、参加強要ということがあってはいけないと思いますが、その認識でよろしいでしょうか」との質問がありました。
岸田首相は「2002年の東京地裁において、違法であるという判決が示され、その後、控訴、上告が棄却されて、2004年2月に当該判決が確定したものと承知しております」さらに「5月7日に開催予定とされます合同結婚式については、詳細は承知しておらず、コメントは致しかねますが、一般論として、参加の強要があった場合には、違法になりうると認識を致します」との答えでした。
「参加の強要があった場合には、違法になりうると認識」の答弁はとても重要であると考えています。
正体を隠した伝道の先にあるのが、合同結婚式
筆者はこの裁判の原告の一人でしたので、国対ヒアリングの場で「合同結婚式の参加強要の違法判決」の経緯などについて話しました。
これは、元信者3人(筆者を含めて)が教団に対して起こした違法伝道訴訟です。
東京地裁は、合同結婚式への参加を強要されて、精神的な苦痛を受けたことや、入信の際に不当な勧誘があったことも認めて、旧統一教会側に計920万円の支払いを命じました。
重要な点は「正体を隠した伝道により入信させられた結果、唯一の救いの道が合同結婚式と思わされて、参加せざるをえなくなった」ところです。判決でも「文鮮明教主の選んだ相手を断ることはできず、婚姻の自由を侵害する」とされています。
これまで旧統一教会が引き起こしてきた問題は、教団名を隠した伝道(正体隠しの勧誘)により、いつのまにか教義を刷り込まれて信者となってしまうところにあります。その結果、マインドコントロール下に置かれて、高額献金をしたり、同じような(正体隠しの)伝道活動をすることになります。
合同結婚式(祝福)に参加すれば、サタンの血統から神の血統に生みかえられて、祝福を受けた夫婦から原罪のない神の子が生まれるとされており、この式に参加することが、唯一の救いの道であり、信者らの目標となります。
合同結婚式に参加するには、伝道(3人以上の勧誘)や経済(お金集め)の活動を通じて、一定の実績をあげることが必要です。そうでなければ、教会からの合同結婚式への参加の許可がされません。それゆえに信者らは必死になって活動をします。過去に金銭的被害が出た大きな要因には、この式の存在が大きくかかわっているといえます。
今も昔も、合同結婚式の意義は変わっていない
今は私の信者時代のような「文鮮明教祖が決めた人とカップリングされる」形とは違っている部分もありますが、教義上、自由に結婚相手を見つけることはできず、合同結婚式の意義づけは、ほとんど変わっていないと考えています。
「旧統一教会の信者、あるいは教義を受け入れた人とのカップリング」「唯一の救いの道と思いこまされて、教団の許可のもと参加しなければならない(祝福をうけなければ天国に入れない)」そして、受けた祝福を破棄すれば、サタンより下のサタンになると思わされており、地獄の地獄に行く思いから、離婚できなくなるなど、霊界の恐怖に裏打ちされた教えは変わっていません。
正体隠しの伝道をされて霊界の恐怖心などを植え付けられた延長線上に、合同結婚式はあるわけですから、お二人の話を聞いて、コンプライアンス宣言後も教団名を隠した伝道をしていることを考えると、このような形で開催予定の合同結婚式に参加した人が一人でもいれば、筆者の時のように「原罪を清算する、唯一の救いの道がこの合同結婚式」と思わされた後に「騙されたこと」に気づき、「参加を強要された」という人も出てくるのではないかと危惧しています。
お金集めの側面もある
当時の合同結婚式の参加には、140万円の祝福献金が必要でした。この式(祝福)自体が献金集めの側面をもっています。もうすでに献金をし続けて、お金のない信者が、祝福を受けるためのお金を用意するために、親族などに嘘をついて借金したりするなど、様々な金策に走ることも考えられます。
筆者からは「合同結婚式が行われる前に、文化庁の解散命令の請求を出して頂くことで、信者が参加を思い留まり、参加強要の事態を生み出される人が一人でもでないようにして頂くこと」を求めました。