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今も続くSNS上の詐欺広告 勝間さん荻原さんの広告に誘われたらこうなった ウミガメ投稿からバレたこと

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:イメージマート)

メタ社が「著名人になりすました詐欺広告に対する取り組みについて」の声明を4月16日に出しましたが、それ以降、詐欺につながる広告は減っているのでしょうか?

いえいえ、連日のように有名人をかたる広告は出てきており、変わらずの状況です。

投資グループからいきなり削除される

詐欺広告の規制を訴える前澤友作氏ですが、彼の写真を使った広告は相変わらず出ています。前澤氏の場合、投資家である片山晃氏との対談の形での広告になっていました。

さっそくFacebook上に出てきた誘導広告にのってみると、片山氏を名乗る人物とLINEでつながるように促されます。そして友達になると「富倍増セミナー」という投資グループに誘われたので、参加してみました。

投稿などはせず、ただ見ているだけでしたが、あえなくこのグループマネージャーから削除されることになりました。

筆者撮影・修正 筆者がアクセスした投資グループ
筆者撮影・修正 筆者がアクセスした投資グループ

考えてみれば、それも当然かもしれません。私のLINEの投稿をみれば、有名人をかたる詐欺広告への注意喚起の記事を紹介していますので、詐欺グループにとって危ない人物であることがわかります。
実際に私が排除される前には「ほとんどはサクラかな?」という投稿もされており、広告から誘導されて参加したと思われる人たちが退会していっています。その原因が私にあると気づいたのかもしれません。もしまっとうな投資グループであれば、私を退会させる必要はありませんので、これから先に詐欺が待っていることは、ほぼ確定しているといえます。

勝間和代さんをかたる広告にアクセスしてみると

同時期に、勝間和代さんをかたる広告をみつけたので、こちらもLINEでつながりました。すぐに「はじめまして、勝間和代と申します。広告を見て、お問い合わせいただき、ありがとうございます。これからは投資に関する知識を深く理解し、実践的なスキルを身につけることをお手伝いいたします」などというメッセージが送られてきます。

偽の勝間さんからは「宮崎●●先生の情報グループにも、同じ初心者の方が多くいます。情報グループで学んだ後、今では安定した収益を実現しています。連絡先をクリックして、宮崎先生の公式LINEを追加してください」というので、投資グループBに参加してみました。

さらに偽の勝間さんからは「今後、情報グループでローソク足に関する教材を送る予定です。株の学習者にとって、この教材はとても役立ちます」とも続きます。ローソク足とは、株価の値動きを時系列の形で示すチャートのことですが、こうした言葉を用いて、さも本当の投資グループのように装っています。投資の初心者の方はこうした専門用語を駆使されて、詐欺サイトに誘導されていくことになります。

経済評論家の荻原博子さんをかたる詐欺広告にアクセスしてみると

その後、経済評論家の荻原博子さんをかたる詐欺広告も出てきたので、偽の荻原さんと友達になりました。ここでも同じく「私の先生である西澤先生と投資学習グループを立ち上げました。先生は毎日グループで優良株の情報や投資知識を共有しています」と投資グループD(仮称)に誘ってきます。そこで参加してみました。

しかし最初の投稿をスマホで見ていて「あれ?」と思いました。というのも、投資の話ではなく、なぜかウミガメの投稿写真から始まっていたからです。

Mickeyなる人物は「ダイビング中にウミガメ発見!大きくてかわいい」と投稿して、薫子モコは「ついていったら、竜宮城まで連れてってくれるかもよ」と答えます。
それに対してMickeyは「辻に『竜宮城』というキャバクラがあるけど後でいっていいかな?嫁に怒られそうやめよう ご飯を食べたらちゅらうみ水族館にいきます。次はジンベイザメ(原文のママ)をみてくる」と答えます。

しかし、このやりとりはどこかで見た覚えがありました。

筆者撮影・修正 筆者がアクセスした投資グループ
筆者撮影・修正 筆者がアクセスした投資グループ

偽の投資サイトに誘導するためのシナリオ発見!

数日前に偽の勝間さんから紹介された投資グループBの投稿に戻ってみました。すると18分ほど前に次のような投稿がありました。

ゆうしんなる人物が「ダイビング中にウミガメ発見!大きくてかわいい」とウミガメの写真を投稿しています。それに対してNanaは「ついていったら、竜宮城まで連れてってくれるかもよ」と返します。

ゆうしんは「辻に『竜宮城』というキャバクラがあるけど後でいっていいかな?嫁に怒られそうやめよう ご飯を食べたらちゅらうみ水族館にいきます。次はジンベイザメ(原文のママ)をみてくる」と答えており、同じ文面が載っています。書き込む人物名は違っていますが、投稿が同じです。

筆者撮影・修正 筆者がアクセスした投資グループ
筆者撮影・修正 筆者がアクセスした投資グループ

ここからわかるのは、投資詐欺サイトに誘導するためのシナリオが準備されているということです。これはオレオレ詐欺などを行う犯罪グループをみてもわかるように、末端の電話の架け子などに詐欺のシナリオを渡して、その通りに話をさせることで、お金を騙し取る効率をあげようとしており、これと同じ行動といえます。期せずして、ウミガメ発見の投稿から、詐欺グループのシナリオの一つを発見することになりました。

続く同じ投稿

さらに巧妙なのは、今の時勢に合わせた内容になっていることです。今、この記事を書いているのはGW中ですが、それに合わせた投稿が次々にグループに出てきます。投資グループBの宮崎先生は次のようなものを書きこんでいます。

「ここまで円安が進んだら、海外からの買い注文は多くなると思いますよ。後は、機関からの情報では、GW明けに急上昇する商社株がいつくかあるそうです」

もちろん、投資グループDの西澤先生もまったく同じ投稿をしています。

投資に詳しい詐欺グループ内にいてシナリオを書き、一斉にその内容を各グループで共有させて、組織的な形で数多くの人を騙そうとしています。金融知識のない人は専門用語が出てきて、今の時勢に合わせた投資関連の話をされることで、紹介された投資サイトが本物だと思わせられてしまいますので、注意が必要です。

三段階(ホップ、ステップ、ジャンプ)の信頼性を獲得する手口に注意

非対面でのやりとりでありながら、相手から信頼性を獲得する手法も巧みです。昨年から取材を進めてきて、三段階(ホップ、ステップ、ジャンプ)の形で信頼をさせて、お金を出させていることがよくわかります。

入口(ホップ)である一つ目の信頼は、大手のSNSのFacebookに出てきた広告だから、安心な情報と思わせてサイトにアクセスさせます。

二つ目の信頼性(ステップ)は有名人の写真を勝手に使い、メディアで見た著名な人が勧めているから大丈夫という思いを持たせて、投資グループに参加させようとします。これは、著名人など権威ある人の話だと信じてしまう、威光効果を使っているといってよいと思います。

三つ目の信頼性(ジャンプ)です。最終的に、本丸である偽の投資サイトに誘導するわけですが、そこが詐欺ではないと思わせるために、利用者に少額の投資させた後に、儲かった利益分を本人の銀行口座に戻します。これにより多額の投資をしてしまうことになります。

70代の高齢女性が約7億円もの被害に遭ったという報道がありましたが、なぜ騙されてしまうかといえば、この詐欺の手口が巧妙だからに他なりません。

それにしても、まったくSNS上の詐欺広告はなくなる気配がありません。このGW中にも被害が出てしまうのではないかと危惧していますので、手口をいち早く公開しました。今後の動きについても、改めてお知らせいたします。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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