Yahoo!ニュース

中国船4隻が今年初の尖閣領海侵入 中国海警局による毎月1回の“アリバイ作り”的ポーズの一時侵入か #専門家のまとめ

高橋浩祐米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員
2015年12月に尖閣諸島沖を航行する中国海警局の公船(提供:第11管区海上保安本部/ロイター/アフロ)

8日午前10時ごろから、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺の領海に中国海警局の船4隻が相次いで一時侵入した。中国公船が尖閣周辺で領海侵入したのは昨年12月6日以来で、今年初めて。昨年1年間を振り返れば、中国海警局の船が尖閣諸島周辺の領海外側にある接続水域で確認された日数は1年366日のうち355日に上り、3年連続で過去最多を更新した。また、昨年は中国公船による尖閣領海侵入(沿岸から約22キロ)の日数が42日に上り、過去2番目に多かった。毎月1回のペースで4隻がアリバイ作り的に尖閣領海に侵入している。

ココがポイント

8日午前、沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海警局の船4隻がことし初めて日本の領海に侵入しました。
出典:NHKニュース 2025/1/8(水)

尖閣周辺で中国当局の船が確認されるのは51日連続となる。
出典:産経新聞:産経ニュース

第11管区海上保安本部(那覇)によると、4隻とも機関砲のようなものを搭載。領海から出るよう巡視船が要求していた。
出典:共同通信 2025/1/8(水)

同本部によると、4隻は午前10時~同15分ごろ、南小島付近の領海に相次いで侵入した。
出典:時事通信 2025/1/8(水)

エキスパートの補足・見解

海上保安庁によると、中国海警局の船は1年365日のうち、ほぼ毎日尖閣諸島(中国名・釣魚島)周辺を航行している。かつては台風など悪天候時は航行を避けることがあったが、近年は船が大型化し、天候に左右されずに航行できるようになっている。また、尖閣沖に派遣される中国海警局の船は通常4隻の船団だが、昨年6月以降はその4隻全てに機関砲が搭載されるようになった。「力は正義なり」とも言える強引な手法で尖閣接近を常態化させ、尖閣の実効支配を徐々に狙う中国の「サラミ戦術」だと言える。

また、かつては中国公船が尖閣領海内に侵入するのは、そこで操業中の日本漁船に接近して追尾するなど、あたかも自国の領海内であるかのような法執行の動きだった。しかし、ここ1年間はたとえ日本漁船が領海で操業していなくても毎月1回のペースで4隻が領海に侵入するようになっている。

中国の習近平国家主席は内政的に海洋権益をアピールし、国内世論に対して領土ナショナリズムをうまく利用して中国共産党の権力維持を図っている。中国海警局はそれに忖度して主権維持の“アリバイ作り”的ポーズで定期的に尖閣諸島沖をかすめるように領海侵入を図っているとみられる。

米外交・安全保障専門オンライン誌「ディプロマット」東京特派員

英軍事週刊誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」前東京特派員。コリアタウンがある川崎市川崎区桜本の出身。令和元年度内閣府主催「世界青年の船」日本ナショナルリーダー。米ボルチモア市民栄誉賞受賞。ハフポスト日本版元編集長。元日経CNBCコメンテーター。1993年慶応大学経済学部卒、2004年米コロンビア大学大学院ジャーナリズムスクールとSIPA(国際公共政策大学院)を修了。朝日新聞やアジアタイムズ、ブルームバーグで記者を務める。NK NewsやNikkei Asia、Naval News、東洋経済、週刊文春、論座、英紙ガーディアン、シンガポール紙ストレーツ・タイムズ等に記事掲載。

高橋浩祐の最近の記事