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『モンスターハンター』実写映画化で山崎紘菜がハリウッドデビュー 「世界のトップと全場面が挑戦でした」

斉藤貴志芸能ライター/編集者
映画『モンスターハンター』でハリウッドデビューした山崎紘菜(撮影/松下茜)

日本発の大ヒットゲーム『モンスターハンター』がハリウッドで実写映画化された。『バイオハザード』シリーズと同じく、ポール・W・S・アンダーソン監督でミラ・ジョヴォヴィッチが主演。そして、ハンターたちと行動を共にする“受付嬢”の役で、山崎紘菜がハリウッドデビューを飾った。豪華出演者たちの中で存在感を放っている。一世一代のチャレンジに懸けた想いを聴いた。

ハリウッドは宇宙に行くような感覚でした

――山崎さんが「東宝シンデレラ」オーディションに入賞してから10年で、最近ドラマデビュー作の『高校入試』が再放送されてました。その頃の自分の出演作を目にすると、どう感じますか?

山崎 やっぱりくすぐったいですね(笑)。いつのときも変わらず、精いっぱいやらせていただいているつもりですが、初々しい昔の自分が頑張っている姿を見ると、ちょっと照れくさい気持ちになります。

――順調にキャリアを重ねて、映画『モンスターハンター』でハリウッドデビューとなりました。ハリウッド映画は自分でもよく観ていたんですか?

山崎 もちろん観ています。90年代の作品や、古き良きハリウッドを思わすミュージカル映画が好きです。あと、ミラとポールの『バイオハザード』も学生時代に観て、「めちゃくちゃ面白い!」と引き込まれました。そんなお2人とお仕事をさせていただけたことは、改めて信じられない思いでいっぱいです。

――自分がハリウッド映画に出演することは、いつ頃から夢に描いてました?

山崎 このお仕事をしていたら、誰しも憧れはあると思います。でも、私は明確な夢や目標としては捉えられませんでした。自分にとっては、宇宙に行くようなもの。可能性はあっても、特殊な才能を持った限られた人しか行くことが許されない場所だと思っていました。

――大学で英語を専攻したのは、海外での仕事を視野に入れていたからではなくて?

山崎 単純に英語という言語が好きだったのと、洋画や洋楽が好きで、字幕なしで映画を観ることができたらカッコイイなと思ったんです。大学はお仕事でなかなか通うことができず、結局2単位残して卒業できませんでした。それが悔しくて、本格的な英語の勉強を始めたので、こんな形で役に立つとは思いませんでした。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

オーディションではパッションを伝えて

――映画『モンスターハンター』の受付嬢役のオーディションは、日本人女優の中で稀有な存在感を持つということで、山崎さんに話が来たのでしょうか?

山崎 どういうご縁かは私にはわかりません。この作品のプロデューサーの方がたまたま日本にいらっしゃったとき、面接のチャンスをいただけて。「今度ポールの面接があるから受けてみる?」と、監督とビデオ通話をさせていただくことになりました。

――演技の動画を送ったりしたわけではなかったんですね。

山崎 そういうことではありませんでした。面接では自分のキャリアや演技について質問されるのかと身構えていたら、意外と気さくに話してくださったのが印象的です。緊張していて、ほとんど覚えていないのですが、「英語もまだまだ上手ではないけれど、この作品に対するパッションは誰よりもあります!」とお伝えしました。

――アンダーソン監督は起用理由を「ゲームに登場するハンドラー(受付嬢)そのものだった」とコメントしています。

山崎 そのお話は後日聞いて、すごくうれしかったです。監督はゲームにリスペクトがあって、「あの世界から飛び出してきたキャラクターに見えるように研究してきてほしい」と、事前におっしゃっていただきました。

映画『モンスターハンター』で山崎紘菜が演じた受付嬢 (c) Constantin Film Verleih GmbH
映画『モンスターハンター』で山崎紘菜が演じた受付嬢 (c) Constantin Film Verleih GmbH

受付嬢らしく見せたくて監督に提案もしました

――ゲームの『モンスターハンター』はもともとプレイしていたんですか?

山崎 私が学生の頃から大人気で、同級生たちがみんなで空き地に集まってプレイしていました。私はゲームが得意なほうではなかったので、横から覗いて楽しんでいて。この作品が決まってから、自分でプレイするようになりました。今回の映画のベースになっている『モンスターハンター:ワールド』をクリアして、今は続編の『(モンスターハンターワールド:)アイスボーン』をやっています。

――受付嬢役について「チャーミングさや個性的な動きを研究しました」とコメントされていましたが、具体的にはそれをどんなふうに出したんですか?

山崎 後半に雨のシーンがあって、みんな衣装が濡れるといけないから、あちこちにある水たまりをよけて歩いていたんです。そしたら、監督が「ハンターなんだから水たまりをよけないで、どんどん突き進んでくれ」という指示をされて。ただ、受付嬢はハンターではなく、モンスターに好奇心はあっても先陣を切って戦うわけではないので、「私だけ、よけてもいいですか?」と聞いたんです。監督は「もちろんいいよ」と言ってくださいました。そんなふうに、些細なことでも話し合うようにしていました。

――トレードマークの単眼鏡の扱い方にも気を配りました?

山崎 監督もこだわりがあって、台本でも単眼鏡を扱うシーンがたくさんありました。所作はゲームのメインストーリーの中での、受付嬢の姿を参考にしました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

私はイメージほどカッコ良くないので(笑)

――全体的に受付嬢は、日本の作品での山崎さんのクールな印象より、かわいらしく見えました。

山崎 身長が高いほうで(171cm)、顔つきもクールに見られがちなので、カッコイイ役をいただくことが多かったんです。なので、今回は自分にとって新しいチャレンジがたくさんありました。

――そこはハードルでもなかったですか?

山崎 自分の中の受付嬢のキャラクターと似ている部分を、膨らますイメージで取り組みました。まったく何もないところから作り上げた感覚ではありません。もともとのゲームの映像のクオリティがとても高いので、ヒントになるところが多くて本当に助けてもらいました。

――それで、チャーミングさも再現して。

山崎 チャーミングなところが私にあるかはわかりません(笑)。でも、たぶん皆さんのイメージほど、カッコ良くはないと思います(笑)。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

ミラが仲間として受け入れてくれたのがうれしくて

――ハリウッド作品ということで、現場で気おくれはありませんでした?

山崎 不安や緊張はすごくあって、最初は心細かったのですが、現場に行ったら、スタッフの方もキャストの方も本当に温かく迎えてくださって。英語を聞き落としたりするとサポートしてくれたり、声を掛けていただいていたので、気おくれよりも「期待に応えたい」という気持ちのほうが大きくなりました。

――ミラさんとも直接コミュニケーションを取ったんですか?

山崎 ミラは朝メイク室に入ると、必ずキャスト1人1人に「元気?」「今日のシーンは大丈夫?」と声を掛けてくれました。そうやってミラのほうからコミュニケーションを取ってくださったのが、とてもありがたかったです。

――『バイオハザード』とかスクリーンで観てきた大女優さんなわけですよね。

山崎 「本当に会えた!」という喜びはもちろんありましたし、ミラが自分を1人の仲間として受け入れてくれたことが、本当にうれしかったです。

――ハリウッドならではというか、日本の現場にないこともありました?

山崎 スケジュールにゆとりがある分、時間におおらかな面はありました。たとえば撮影中にクレープカーが来ると、みんな現場でクレープ片手に仕事をしたり。

――ケータリングが豪華という話も聞きます。

山崎 お弁当の文化がないので、常に温かいごはんが出て、シェフがその場で料理をしてくれたりもしました。逆に言えば、日本の冷めてもおいしいお弁当は、すごくクオリティが高いんだと改めて気づきました。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

ワイヤーアクションは持久力も瞬発力も必要でした

――受付嬢にはワイヤーアクションもありました。初めてでしたっけ?

山崎 初めてです。普段使わない筋肉を使うので、体幹がしっかりしてないと、まったく動けなくなりそうでした。1回ワイヤーに吊られたら、長時間吊られたまま待機する場合もあるので、持久力も瞬発力も求められました。

――体のどこかが痛くなったりも?

山崎 横向きに吊られるシーンがあって、その状態で体をまっすぐに保つのは、とてもハードでした。

――完成したシーンは迫力があって、楽しそうにも見えました。

山崎 トレーニングをしたり、ある程度の体力は付けて臨んだので、準備しておいて本当に良かったなと思いました。

――もともと身体能力は高いですよね?

山崎 ミラほどではないです(笑)。普通だと思います。

――“普通”ということはないのでは(笑)? 少し前に公開の『ブレイブ-群青戦記-』でもアクションシーンがありました。

山崎 人よりズバ抜けてすぐれてはいませんけど、体を動かすことは昔からずっと好きでした。アクション作品を観るのも好きなので、自分が関われることが本当に楽しくて。これからもチャンスがあったらできるように、体作りはしておきたいと思っています。

――ジムに通ったりしているんですか?

山崎 ワークアウトはずっとやっています。最近は柔軟性がほしいと思って、ヨガもやってインナーマッスルを鍛えています。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

何回やってもOKが出なかったシーンも

――『モンスターハンター』の撮影で、他に印象に残っていることはありますか?

山崎 下を向くシーンで単眼鏡がズリ落ちてきてNGになったり、激しいアクションをしていて、衣装の尖っているパーツが何かに当たって取れてしまったり、小道具での苦労がありました。それから、(ロケ地の)ケープタウンは夜になるとすごく冷え込みました。受付嬢は衣装をたくさん重ね着していますけど、ミラの衣装は露出が多いから寒そうで、「交換しよう」と言われました(笑)。

――演技的にそれほど悩むことはありませんでした?

山崎 すべてのシーン、すべてのカットが私にとって挑戦で、難しかったです。同じシーンを何回も繰り返しても、OKが出ないときもありました。予告にも使われている単眼鏡を上げるシーンも、なかなかOKが出なくて。悔しい思いは何度もしました。

甘えに気づいて自分を磨き続けようと

――あれこれありつつハリウッドで1本撮って、自信はつきました?

山崎 ハリウッドの大作に参加させていただいて、エンドロールに名前が載ったことは、自分の中で誇りにできます。これに甘んじないで、この作品で得たことを風化させずに頑張っていきたいです。

――どんな収穫がありましたか?

山崎 日本ではない環境に身を置いて、世界のトップクラスの方々のお芝居や仕事ぶりも情熱も、すべてが勉強になりました。今まで自分がいかに甘えていたか、気づかされたりもしました。

――ミラさんとか他のハリウッド俳優の演技やアクションを見ていて?

山崎 そうですね。ミラやトニー(・ジャー)と同じシーンの中で存在するのに、もっとふさわしい女優になりたいと思いました。これからも自分を磨き続けたいです。

――今後も国際派女優は目指していきますか?

山崎 国や言語でボーダーラインを引くのではなく、いろいろな方たちとお仕事ができればいいなと思います。

撮影/松下茜
撮影/松下茜

Profile

山崎紘菜(やまざき・ひろな)

1994年4月25日生まれ、千葉県出身。

2011年に第7回『東宝シンデレラ』オーディションで審査員特別賞。2012年に映画『僕等がいた』で女優デビュー。2019年に映画『スタートアップ・ガールズ』に主演。その他の主な出演作は、映画『神さまの言うとおり』、『海辺の映画館-キネマの玉手箱』、ドラマ『監獄学園-プリズンスクール-』、『MARS~ただ、君を愛してる~』、『平成物語~なんでもないけれど、かけがえのない瞬間~』など。ヒロインを演じた映画『ブレイブ-群青戦記-』が公開中。

映画『モンスターハンター』

3月26日公開

監督・脚本/ポール・W・S・アンダーソン

東宝=東和ピクチャーズ共同配給

公式HP https://monsterhunter-movie.jp/

(c) Constantin Film Verleih GmbH
(c) Constantin Film Verleih GmbH

芸能ライター/編集者

埼玉県朝霞市出身。オリコンで雑誌『weekly oricon』、『月刊De-view』編集部などを経てフリーライター&編集者に。女優、アイドル、声優のインタビューや評論をエンタメサイトや雑誌で執筆中。監修本に『アイドル冬の時代 今こそ振り返るその光と影』『女性声優アーティストディスクガイド』(シンコーミュージック刊)など。取材・執筆の『井上喜久子17才です「おいおい!」』、『勝平大百科 50キャラで見る僕の声優史』、『90歳現役声優 元気をつくる「声」の話』(イマジカインフォス刊)が発売中。

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