海上自衛隊イージス艦が8隻体制から12隻体制へ
12月16日、日本政府は「国家安全保障戦略」「国家防衛戦略」「防衛力整備計画」の安全保障関連三文書(安保三文書)を発表しました。今回から防衛計画の大綱(防衛大綱)が国家防衛戦略に、中期防衛力整備計画(中期防)が防衛力整備計画に名称が変更されています。
「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」|防衛省(2022年12月16日)
発表の前からマスコミ各紙に様々な情報がリークされて公式発表で再確認という形になりましたが、事前のマスコミの報道には無く現在も詳しい説明が無い案件が一つありました。
何時の間にか増えていたイージス艦2隻
なんとイージス護衛艦の定数が2隻増えていました。イージス・アショア代替艦の2隻とは別枠で、つまり合わせてイージス艦は合計4隻が追加される予定です。海上自衛隊のイージス艦は現行のDDG8隻体制から12隻体制になります。
※DDG・・・ミサイル護衛艦(誘導ミサイル駆逐艦)の略記号。ここでは広域防空艦を指す。現在の海上自衛隊のDDG定数は8隻で、全艦がイージス艦で構成されている。
海上自衛隊・主要装備(おおむね10年後)
- 護衛艦(うちイージス・システム搭載護衛艦)・・・54隻(10隻)
- イージス・システム搭載艦・・・2隻
- 哨戒艦・・・12隻
- 潜水艦・・・22隻
- 作戦用航空機・・・約170機
防衛力整備計画2022の別表3からはイージス艦は10年後に合計12隻になると読めます。「イージス・システム搭載護衛艦」と「イージス・システム搭載艦」は別種の存在という、非常に紛らわしい表記となっています。
- イージス・システム搭載護衛艦・・・護衛艦枠内のDDG
- イージス・システム搭載艦・・・護衛艦枠外のイージス・アショア代替艦
イージス・システム搭載艦についてはイージス・アショア代替艦と呼んだ方が誤解が少ないように思えます。
10年後の海上自衛隊のイージス艦12隻体制
こんごう型イージス・システム搭載護衛艦4隻
- DDG-173「こんごう」
- DDG-174「きりしま」
- DDG-175「みょうこう」
- DDG-176「ちょうかい」
※SPY-1Dレーダー
あたご型イージス・システム搭載護衛艦2隻
- DDG-177「あたご」
- DDG-178「あしがら」
※SPY-1Dレーダー
まや型イージス・システム搭載護衛艦2隻
- DDG-179「まや」
- DDG-180「はぐろ」
※SPY-1Dレーダー
イージス・システム搭載艦2隻 ※イージス・アショア代替
- ???(5年以内に建造を目指す)
- ???(5年以内に建造を目指す)
※SPY-7レーダー
イージス・システム搭載護衛艦2隻 ※DDG枠内の純増
- ???(おおむね10年後を予定)
- ???(おおむね10年後を予定)
※レーダーの種類は未確定
※「こんごう」は10年後の2032年ごろには艦齢約40年となり退役を考えないといけない時期になるので、純増分とはまた別に新造イージス護衛艦を建造して新旧を入れ替えていく。
陸上のイージスアショアは24時間365日連続で稼働できるので、整備と休養が必要で年間の半分未満しか海上に出られない艦船のイージス艦よりも、半分以下の少ない数で同等以上の警戒監視が可能とされていました。そのためイージスアショア2基を代替するにはイージス・システム搭載艦2隻では不足で4~6隻は必要と言われてはいましたが、実際に結果としてイージス艦4隻の追加が計画されることになりました。
あくまでイージス・アショア2基の代替は「イージス・システム搭載艦」2隻で、「イージス・システム搭載護衛艦」2隻は護衛艦のDDG定数の純増です。それでも結果的に合計でイージス艦4隻が増えることに変わりがありません。防衛費GDP2%増という、急に降って湧いたような事態に力押しで解決策が提示されています。
防空中枢艦(DDG)の増勢を明記
- DDG:広域防空用のミサイル護衛艦(駆逐艦)、防空中枢艦
- DDH:対潜ヘリコプター搭載護衛艦(駆逐艦)、対潜中枢艦
- DD:汎用の通常の護衛艦(駆逐艦)、基本構成艦
- FFM:機雷の敷設や掃討も行う多機能護衛艦(フリゲート)
古いDDを早期に退役させて、新しい小型で少人数で動かせるFFMを増勢し、浮いた人員でDDGを増やすと読めます。海上自衛隊の用語で「防空中枢艦」とはDDGを指しており、はっきりと防空中枢艦を増勢すると記述されています。
イージス・システム搭載艦(イージス・アショア代替艦)の建造とは別に、イージス・システム搭載護衛艦(DDGの枠内)を増やす、このような意味のことが書かれているのです。ただし詳しい説明がありません。