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レジェンド羽生善治九段(51)堂々の受けで若手実力者・近藤誠也七段(25)に勝利 王将戦リーグ

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月5日。東京・将棋会館において第71期ALSOK杯王将戦・挑戦者決定リーグ戦▲近藤誠也七段(25歳)-△羽生善治九段(51歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は19時6分に終局。結果は94手で羽生九段の勝ちとなりました。

 リーグ成績は羽生九段1勝1敗、近藤七段0勝1敗となりました。

 次戦、羽生九段は10月13日に豊島将之竜王、近藤七段は14日に糸谷哲郎八段と対戦します。

羽生「一局一局大切に戦っていきたいと思います」

近藤「ちょっとなんとか立て直せるよう、がんばりたいです」

 羽生九段の今年度成績は5勝11敗(勝率0.313)。久々の勝利となりました。

 羽生九段の生涯通算成績は1486勝640敗2持(勝率0.6990)。前人未到の1500勝まで、あと14勝です。

羽生九段、危ない形でしのぐ

 近藤七段先手で、戦型は角換わり。近藤七段は堅さ重視の銀矢倉、羽生九段はバランス重視の右玉の布陣となりました。

羽生「昔に指したことがあったんですけど、久しぶりだったので。こちらは右玉でひたすら待機して」

 後手番であれば待機するのは権利で、手詰まりから千日手は歓迎です。先手番の近藤七段は歩を突き捨て、桂を跳ねて、積極的に仕掛けていきました。

羽生「危ないと思ってこちらも指してますけど。攻めがつながるかどうかが、ギリギリかなあ、と思ってました」

 歩得だけれど、まとめづらい将棋になってしまったか、という羽生九段。危険ながらも三段目に玉を上がり、近藤七段の飛車と対峙します。

 駒割は角桂と金の交換で羽生九段が駒得。一方で玉の安全度は大差です。近藤七段が攻めをつなげられるか、羽生九段は受けきれるか、ギリギリの攻防が続きました。

 76手目。羽生九段は得した桂を自陣に打って受けます。羽生玉は四段目と、さらに危険地帯に立たされています。

 そこで近藤七段に継続の手段があるかどうか。近藤七段は残り1時間2分のうち33分を割いて熟慮に沈みました。しかしぴったりとした順は難しかったようです。

 形勢は次第に羽生九段よしがはっきりしてきました。

羽生「(86手目)△8六歩でこちらも攻める手番が回ってきたので。そこはちょっと面白くなったかなと」

 94手目。羽生九段は近藤陣に角を打ち込みます。羽生九段の攻めが確実に続くのに対して、近藤七段は羽生玉に迫る手段がありません。近藤七段が投了を告げ、羽生九段の見事な勝利となりました。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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